報道発表
「核兵器不拡散条約(NPT)に関する日米共同声明」の発出
令和4年1月21日
1月21日、日本外務省及び米国国務省は、「核兵器不拡散条約(NPT)に関する日米共同声明」を発出しました。
新型コロナウイルス感染症の影響で第10回NPT運用検討会議の4度目の延期が決定された中、日米で、国際的な核軍縮・不拡散体制の礎石であるNPTへのコミットメントを再確認する共同声明を発出することにより、同会議の早期開催を含め、「核兵器のない世界」に向けて前進するための機運が維持され、高まることが期待されます。
(全文)
- 世界の記憶に永遠に刻み込まれている広島及び長崎への原爆投下は、76年間に及ぶ核兵器の不使用の記録が維持されなければならないということを明確に思い起こさせる。日本と米国は、発効以来51年にわたって核軍縮・不拡散の礎石で在り続けてきた核兵器不拡散条約(NPT)に対するコミットメントを完全に再確認する。NPTは、これまでの核兵器の大幅な削減を可能とし、また、将来的な核軍縮の不可欠な基礎となる。NPTは、原子力、原子力科学及び原子力技術の平和的利用(以下「平和的利用」という。)の恩恵を共有するための協力を促進してきた。全世界はNPTから恩恵を享受してきた。
- 我々の2015年の共同声明を想起し、日本と米国は、NPTが核兵器の拡散防止及び核兵器の全面的廃絶の達成のために不可欠なものであると認識している。その目的のために、両国は、全てのNPT締約国に対し、第10回NPT運用検討会議において、3つの柱のそれぞれを強化する意義ある成果を出すことに貢献するよう要請する。それに際し、我々は、NPT締約国に対し、日本が2017年に立ち上げた「核軍縮の実質的な進展のための賢人会議」の議長レポートを振り返り、「議論における礼節」の強調を基礎とすることを求める。
- 日本と米国は、第6条を含むNPT上の全締約国の義務を再確認する。我々は、1995年、2000年及び2010年のNPT運用検討会議の最終文書に含まれるコミットメントの履行の重要性を認識している。日本と米国は、今日、世界が直面する危険を現実的に捉えている。厳しい国際的な安全保障環境の下、核兵器の使用の壊滅的で非人道的な結末を認識し、持続的で、実践的で、積極的で、進歩的な不拡散及び軍備管理プロセスを支持することは、これまで以上に喫緊の課題である。二国間交渉に加えて、必要な取組には、核兵器用核分裂性物質生産禁止条約に関する交渉を即時に開始すること及び包括的核実験禁止条約を発効させることが含まれる。当面、全ての関係国は、核爆発実験に関するモラトリアム及び核兵器その他の核爆発装置に使用するための核分裂性物質の生産に関するモラトリアムを宣言し、又は維持すべきである。全ての核兵器国は、軍備管理対話に積極的かつ誠実に取り組む責任を有し、また、ドクトリン、兵器及び核軍縮に係る取組に関する定期的な報告書の提出を通して透明性を向上させることが奨励されている。40年にわたる世界の核兵器の減少の流れを維持しなければならず、逆行させてはならない。
- 日本は、核戦争に勝者はなく、また、核戦争は決して戦われてはならないとの5核兵器国全ての首脳による初めての宣言及び「核の使用は広範囲に影響を及ぼす」との認識を歓迎する。日本と米国は、オバマ元大統領による広島訪問を想起し、政治指導者及び若者等に対し、理解の向上・維持のために広島及び長崎を訪問するよう要請する。
- 米国は、国連総会で採択された日本の決議「核兵器のない世界に向けた共同行動の指針と未来志向の対話」を歓迎し、米国が本決議を共同提案したことを嬉しく思う。米国は、世界的な不拡散体制の構築における日本の長きにわたるリーダーシップに深く感謝し、軍縮・不拡散イニシアティブ(NPDI)、ストックホルム・イニシアティブ(SI)、核軍縮の実質的な進展のための賢人会議及び核軍縮の実質的な進展のための1.5トラック会合において現在日本が果たしている役割を歓迎する。
- 日本は、核軍縮のための環境創出(CEND)イニシアティブ及び核軍縮検証のための国際パートナーシップ(IPNDV)のための米国のリーダーシップを称賛する。日本は、核兵器に関する透明性のために核兵器国の中で米国が果たしているリーダーシップも称賛する。日本は、新戦略兵器削減条約(新START)の延長を歓迎し、米国とロシアとの間の戦略的安定性対話の進展を期待する。日本と米国は、その他の国及びより広範な兵器システムを含む将来的な軍備管理措置の必要性を強調する。これに関し、中華人民共和国による核能力の増強に留意し、日本と米国は、中華人民共和国に対し、核リスクを低減し、透明性を高め、核軍縮を進展させるアレンジメントに貢献するよう要請する。
- 「核兵器のない世界」を追求するための不可欠な基礎として、日本と米国は、NPTに基づく保障措置の事実上の標準としての国際原子力機関(IAEA)の包括的保障措置協定及び追加議定書の普遍化を含め、核不拡散のための国際的な体制の強化にコミットしている。我々は、IAEAの権限、客観性、専門性及び独立性を強く支持する。日本と米国は、国際輸出管理レジームの維持及び強化の重要性について一致している。原子力技術のいかなる輸出も、最も高い不拡散の基準を満たさなければならない。
- 我々は、関連する国連安全保障理事会決議に従った、北朝鮮の全ての核兵器、その他の大量破壊兵器及びあらゆる射程の弾道ミサイル並びにその関連計画及び施設の完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な廃棄に強くコミットする。我々は、北朝鮮に対し、全ての関連する国連安全保障理事会決議を遵守し、NPT及びIAEA保障措置に早期に復帰し、完全に遵守するよう求める。我々は、国際社会全体に対し、これらの関連する国連安全保障理事会決議を完全に履行するよう要請する。我々は、包括的共同作業計画(JCPOA)及びJCPOA上のコミットメントの遵守への相互復帰を目的としてウィーンで行われている協議を支持する。我々は、イランに対し、核活動の拡大を停止するよう求める。我々は、また、イランに対し、未申告の可能性のある核物質及び核活動に関するIAEAの疑問点を明確にし、解決することを含め、完全かつ即時にIAEAと協力することを求める。
- NPTの51年の歴史は、平和的利用を通じた人類の前進に貢献してきた。原子力技術は、気候変動に対処し、国連の持続可能な開発目標を達成するための解決策を提供する。原子力科学は、がん治療及び感染症対策を含む医療の改善、食料と水の確保及び海洋の浄化に貢献する。日本と米国は、不拡散義務を完全に遵守する国による平和的な原子力応用へのアクセスについて明確な支持を再度表明する。我々は、技術協力基金への財政支援、平和的利用イニシアティブへの継続的で自発的な貢献及び他のIAEAの平和的利用活動への専門知識及び資源の提供を含め、平和的利用の恩恵を促進するIAEAに対する我々の支持を再確認する。
(参考)
- 核兵器不拡散条約(NPT)に関する日米共同声明(仮訳(PDF)
/英文(PDF)
)
- 「核兵器に関する日米共同声明」の発出(意義及び共同声明の主な内容)(PDF)