(1)緊急無償援助の具体的拠出:9日に発表した1,000万ドルを上限とする緊急支援の具体的な拠出先を決定した(世界食糧計画(WFP)を通じ約253万ドル、国連児童基金(UNICEF)を通じ約273万ドル、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR))を通じ約173万ドルの計約700万ドル。残りの約300万ドルをシェルター・建設資材等の購入に供与。)。
(2)医療チームの調査団の派遣:現在喫緊の課題として、緊急援助隊医療チームの早期入国が強く望まれる。日本の医療チーム調査団は本25日に入国する。
(3)ヤンゴン港の沈没船引き上げに関する調査:調査チームを本25日から派遣する等、復旧支援に協力していく。
(4)防災・復興支援:中長期的に防災、復興が特に肝要であり、近く復旧・復興のための調査チームを派遣する。ミャンマー政府に対し必要な準備を求める。
(参考1) 5月2日から翌3日にかけて、ミャンマーを直撃した大型サイクロンにより、同国南部を中心に甚大な人的・物的被害が発生した。最新のミャンマー国営放送の報道によれば、犠牲者数は7万7千人以上、行方不明者数は5万人以上とされている。
(参考2) 本件会合には、53カ国の代表、関係国際機関・団体の代表、バン国連事務総長及びテイン・セイン・ミャンマー首相等が出席した。
(参考3) 宇野政務官スピーチ全文
(冒頭挨拶)
最初に、5月2-3日にミャンマーを襲ったサイクロンで13万人を超える死者・行方不明者が発生し、多くのミャンマー国民が被災されたことに対し、日本政府を代表し、衷心からお悔やみ、お見舞いの言葉を申し上げる。
日本も台風や地震といった天災の多い国であり、今次サイクロン被害によるミャンマー国民の苦しみは日本国民にも広く共有されている。
今次会合開催を決定したASEAN及び国連の関係者、並びにサイクロンで甚大な被害が出ているにもかかわらず、今次会合をホストされたミャンマー政府のご努力に、敬意を表したい。今次災害は未曾有のものであり、国際社会が一体となってミャンマー支援策を考える必要があり、本件会合は大きな意義を持つ。
特にASEANについては、緊急事態の中、先般シンガポールにて特別外相会合を招集し、今次会合を主催されたことを高く評価したい。
(我が国のこれまでの援助)
我が国は、サイクロン被害発生後、直ちにテント、発電機等の緊急援助物資供与を決定し、第1陣は7日にヤンゴンに到着した。これは最も迅速に運び込まれた援助物資の一つであると承知している。
その後、これまでのところ、3回にわたる緊急援助物資の供与、1000万ドルを上限とする緊急支援及びNGOを通じた支援を合わせた、総額約1170万ドルの援助を決定した。供与された援助物資が被災民の方々に滞りなく届き、有効に活用されることについても我が国は関心を有している。
日本政府による支援にとどまらず、民間、NGO、国会議員の有志に至るまで、日本では支援の輪が広がっていることも付言しておきたい。
(我が国政府の意図表明)
本日、この場をお借りして、我が国政府の支援意図として以下の4点について表明したい。
(1:緊急無償援助の具体的拠出)
第1点目は、緊急支援についてである。9日、我が国政府は、当面の措置として1000万ドルを上限とする緊急支援を決定したが、国連が発出したフラッシュ・アピールに基づき、今般、WFPのエーヤワディー管区における米配給プロジェクトに約250万ドル、ユニセフの井戸修復及び新設、簡易トイレ整備並びに医薬品等配布プロジェクトに約270万ドル並びにUNHCRの緊急生活用品及び住居建築用資材(竹)の配給プロジェクトに約170万ドル、合計で約690万ドル分の拠出先を決定した。今後、残りの額(約310万ドル)を活用して、ミャンマー政府から強い要望があるシェルター建設資材等を配布する緊急生活用品配布プロジェクトのために供与したい。
(2:援助要員の受入れ)
第2点目は、援助要員の受入れについてである。23日にミャンマー政府が国際社会からの援助要員受入れを決定したことを歓迎し、これを評価する。
現時点では、特に、医療チームのミャンマーへの早期入国が強く望まれる。我が国としてはミャンマー政府の要請を受け、医療チームの調査団を派遣することを決定し、同調査団は本25日ミャンマーに入る予定である。同調査団は明日より被災状況を視察するとともに、ミャンマー政府と調整を行う予定である。雨期が始まっている中、感染症など被害が拡大することを心から懸念している。2005年9月にハリケーン「カトリーナ」が米国南部に上陸して被害をもたらした際、被害発生から2週間の間に感染症で5名が亡くなったとの報告もある。医療・衛生面での被害拡大を最小限にするために、早急に広く国際社会からの医療チームを含む援助要員がミャンマーに入ることを強く期待。
(3:ヤンゴン港の沈没船に係わる調査)
第3点目は、具体的な復旧支援の一例である。現在ヤンゴン港ではサイクロンにより、大小様々の船舶が沈没し、また桟橋も破壊され、港の一部が使えない状態になっていると承知している。こうした状況の中、ミャンマー政府から我が国に対し、沈没船の引上げに関する支援要請があったことを踏まえ、我が国政府は調査チームを派遣することを決定し、本25日、同調査チームはミャンマーに入国する予定である。調査チームの提言を踏まえ、今後の支援のあり方を総合的に検討していくこととなるが、ヤンゴン港が早期に復旧し、援助物資の被災地への流通がより容易となり、被災民に資することを強く望んでいる。
(4:防災・復興)
第4点目は、今後の復旧・復興についてである。今後もしばらくは、緊急支援が続くが、中長期的にはシェルター建設等の防災及び復旧・復興を考えていく必要があることを指摘したい。今次会合でも被災地の復興は重要なテーマであると考える。今次サイクロン災害により、耕地面積の10%が喪失したとの報告もあり、例えば、耕地の復旧は重要な要素になろう。
現状では、人道的な観点から、どのような防災対策、復興支援が我が国として可能か検討する用意がある。そうした考えから我が国としては近く復旧・復興のための調査チームをミャンマーに派遣したいと考えている。この観点から、早急に我が国を含む国際社会からの援助要員がミャンマーに入れるよう、ミャンマー側が必要な準備を進めることを強く求めたい。
(締め括り)
冒頭申し上げたとおり、日本も自然災害が多発する国であり、日本国民は今次サイクロン被害によるミャンマー国民の苦しみを十分に分かち合っている。我が国としては、採りうるあらゆる手段を活用し、ミャンマーの被災民を救済したいと考えており、本日この会合に出席されている関係諸国及び国際機関、ひいては内外のNGOと力を合わせて、ミャンマー国民が今次災害から早期に立ち直ることができるよう協力を惜しまない所存である。