(1)「ティグライ州地方給水計画(詳細設計)」(供与限度額:2,600万円) (The Project for Rural Water Supply in Tigray Region)
(2)「オロミア州小学校建設計画」(供与額:10億4,100万円) (The Project for Construction of Primary Schools in Oromia Region)
(3)「貧困農民支援」(供与額:4億5,000万円)
2.各計画の概要は次の通りである。
(1)ティグライ州地方給水計画
(a)概要
エチオピア水資源・鉱山エネルギー省が、同国東部のティグライ州において、手押しポンプ付き深井戸85箇所、高架型の配水施設付井戸10箇所の給水施設を建設する計画の詳細設計を行うための資金を供与する。
(b)計画の必要性
エチオピアの給水率は35%と、サハラ砂漠以南諸国の平均54%と比較しても低い水準にある。エチオピア政府は、貧困削減と衛生の確保のためにも、生活の基本である水資源の開発を優先目標に掲げている。
ティグライ州では、地域内の河川のほとんどが6月から9月の雨期のみに流れる「季節河川」であり、平均給水率はエチオピア平均より更に低い33%である。婦人や子供が多大な水汲み労働を強いられており、衛生上も問題が多い。エチオピア政府は、安全な水の確保のために深井戸掘削を進めているが、厳しい財政状況から自助努力のみでは実施が困難な状況にある。このため、ティグライ州でも特に地質上地下水開発が技術的に難しい地域を対象とする事業について、我が国に対し無償資金協力を要請してきたものである。
(c)計画の効果
今回設計を行う計画の実施により、現在は良質な水源の深井戸が存在しない地域で、深井戸、公共水栓が計109箇所新設され、給水人口が7万人増加し、ティグライ州の給水率は約33%から約38%に改善される。既存の河川水等に起因する皮膚炎や下痢等の被害が軽減し、また主に女性、子供が担う水汲み労働が減少する。
(2)オロミア州小学校建設計画
(a)概要
エチオピア政府教育省が、同国中央部のオロミア州において、小学校約50校、350教室を増設し、適切な維持管理を行うための資金を供与する。
(b)本計画の必要性
エチオピアは、一人当たり国民所得(GNI)が約160ドルと世界でも最も低い水準にあるが、同国政府は貧困削減問題の解決のため、教育の果たす役割を重視している。同政府は、教員養成、通学への啓蒙などを内容として策定した「教育部門開発計画」を実施した結果、小学校の就学率は1997年の約35%から2005年には約80%へと大幅に改善した。しかし、就学率の増加に教育環境の整備が追いつかず、小学校等の学校や教室の不足が深刻で、一教室の平均児童数が140名と極端に多く、二部制授業の実施や児童の遠距離通学を余儀なくされている。
オロミア州は人口2,700万人を擁するエチオピア最大の州であるが、教室不足が深刻であり、地方自治体や地元住民による学校建設も行われているものの、財政状況が厳しいため、我が国に対し学校建設のための無償資金協力を要請してきたものである。
(c)本計画の効果
本計画の実施により、オロミア州の小学校で受入れ可能となる児童数が約1万7,000名増加し、破損が著しい既存校舎の建て替え等により、学習環境が安全、衛生面で改善する。特に小学校9校の新設と、27校での中学年校舎増設により、遠距離通学が解消される。また、男女別のトイレを各学校に整備し、児童の衛生環境が向上する。
(3)貧困農民支援
(a)概要
今回の貧困農民支援は、貧困状況に置かれたエチオピアの農民に対する支援と、同国政府の食糧増産に向けた自助努力の支援を目的として、大麦、小麦、トウモロコシ等の栽培に必要な肥料を供与するものである。
(b)本計画の必要性
エチオピアでは、国民の多くが農業及び牧畜業に従事しているが、森林伐採による砂漠化や天水依存型の伝統的農法等のため農業生産は不安定であり、更に近年は干ばつも繰り返されている。このため小麦、大麦等の主要作物の生産量も不十分で、現在食糧を国外からの輸入又は国際社会からの食糧援助に依存しており、食糧増産と安定供給体制の確立が急務となっている。エチオピア政府も農業、食料安全保障を重点課題として食糧増産に取り組んでいるが、砂漠化が深刻な同国にとって、食糧の増産には単位当たりの収量を向上させることが不可欠であり、肥料の必要性は大きい。本件は、同国の厳しい財政状況から、今般我が国に対し無償資金協力が要請されたものである。
(参考) エチオピア連邦民主共和国はアフリカ東部に位置し、日本の約3倍の面積(109.7万km2)を有し、人口は約7,240万人、一人当たりGNI(国民所得)は約160米ドルである。