報道発表

ベトナムの「国立衛生疫学研究所高度安全性実験室整備計画」に対する無償資金協力について

平成18年9月28日
  1. 我が国政府は、ベトナム社会主義共和国政府に対し、「国立衛生疫学研究所高度安全性実験室整備計画」(the project for Improvement of Safety Laboratory for National Institute of Hygiene and Epidemiology)の実施に資することを目的として、総額8億9,100万円を限度とする額の無償資金協力を行うこととし、このための書簡の交換が9月28日(木曜日)、ハノイ市において、我が方服部則夫駐ベトナム国大使と先方チャン・ティー・チュン・チエン保健大臣(Ms. Tran Thi Trung Chien, Minister of Health)との間で行われた。
  2. ベトナムでは2003年10月以降、鳥インフルエンザによるヒトへの罹患件数が93名(うち死亡者42名)と世界で最も多くの被害を出しており、今後も感染拡大が懸念されている。
     他方、同国において鳥インフルエンザ等の高危険度病原体(バイオセーフティレベル3:BSL-3以上)を取り扱っている国立衛生疫学研究所はBSL-3実験室を有していないため、世界保健機構(WHO)の勧告にもかかわらず、既存のBSL-2実験室を使用しており、検体受入能力の面で問題を抱えている状況にある。このため同国においては、安全・適切かつ迅速に大量の検体検査を行うための実験室の整備、バイオセーフティ規則の整備・運用及び、高危険度病原体の取扱技術の改善等によって適切な鳥インフルエンザ対策を行うことが重要な課題となっていた。
     このような状況のもと、今年3月にJICAを通じて技術協力が実施され、BSL-3実験室の維持管理技術の移転、バイオセーフティ規則の整備・運用及び、鳥インフルエンザをはじめとする高危険度病原体の取扱技術に係る助言・指導が行われている。本件は、この技術協力と連携し、国際基準に則った安全かつ迅速な大量の検体検査を行うためのBSL-3実験室を整備することを目的として、ベトナム政府より我が国に対して無償資金協力を要請してきたものである。
  3. この計画の実施により、国立衛生疫学研究所にBSL-3実験室4室及び関連施設が設置されるとともに、実験機材(安全キャビネット、高圧蒸気滅菌器、ウイルス培養器等)が整備されることになる。これにより、鳥インフルエンザの安全・適切かつ迅速な検査分析が可能となり検査数の増加が見込まれるとともに、本来BSL-3実験室でなければ適切に取り扱うことができなかった他の病原体(SARS、コロナウィルス、HIV等)についても取り扱えることから、同研究所の機能が大幅に拡充することとなる。また、本件協力により整備されるBSL-3実験室はベトナム国内ではじめて導入されるものであり、現在実施中の技術協力によりバイオセーフティ規則の整備と運用のためのマニュアルが作成されることから、今後のベトナム国内におけるBSL-3実験室を整備する際のモデルとなることが期待される。

(参考)
 ベトナム社会主義共和国は、東南アジアに位置し、国土面積は33.2万平方キロ、総人口約8,420万人(2005年)、1人あたりGDPが約550ドル(2004年)の低所得国(世銀ランク)である。

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