
モロッコの「第二次地方村落妊産婦ケア改善計画」に対する無償資金協力について
平成18年8月10日
- 我が国政府は、モロッコに対し、「第二次地方村落妊産婦ケア改善計画」(Le projet d' amélioration des soins de santé maternelle en milieu rural(Phase II) )の実施に資することを目的として、総額9億7,200万円を限度とする額の無償資金協力を行うこととし、このための書簡の交換が8月10日(木曜日)(現地時間8月9日(水曜日))、モロッコのラバトにおいて、我が方金田勝年外務副大臣と先方ラシッド・タルビ・エル・アラミ首相府経済総務担当特命大臣(Rachid Talbi EL ALAMI, Ministre Délégué auprès du Premier Ministre, Charge des Affaires Economiques et Générales)との間で行われた。
- モロッコの保健指標は周辺諸国の中でも低位にあり、2003年の乳児死亡率は40(対出生1000件、チュニジアは19)、妊産婦死亡率は227(対出生10万件、チュニジアは120)となっている。更に、同国の中でも都市部と村落部では格差が大きく、都市部の妊産婦死亡率187(対出生10万件)に対し、村落部267(同)、施設分娩率は都市部では7割を超えている一方で、村落部は38%(2005年)に留まるなど、特に母子保健分野の改善が急務となっている。
同国政府は、このような状況を改善するために「保健医療政策2005年~2007年」(2005年策定)の中で母子保健分野の改善目標を設定し、2007年までに乳児死亡率を30(対出生1000件)、妊産婦死亡率を200(対出生10万件)まで改善するとしている。また、同国保健省では「リスクなき出産」プログラムを策定し、その中で1)産科施設の整備、2)出産を扱うスタッフの能力改善、3)レファラル体制の強化、を重点課題としている。
このような状況のもと、モロッコ政府は依然として妊産婦ケア体制が十分に整備されていないガルブ・シュラルダ・ベニフセン州及びシャウイア・ウアルディガ州を対象として、妊産婦のレファラル体制を改善することを目的とする「第二次地方村落妊産婦ケア改善計画」を策定し、産科関連施設の整備、関連医療機材等の調達、機材の使用・維持管理に関する技術指導を実施するために必要な資金につきわが国政府に無償資金協力を要請してきたものである。この計画の実施により、対象施設の産科ケア活動が活発になることで、妊産婦のケア体制の強化(普通分娩件数:現在年間約28,000件、実施後年間約33,500件、複雑分娩件数:現在約6,700件、実施後年間約10,000件、帝王切開件数:現在約2,100件、実施後約3,000件等)や、これまで首都圏の大学病院まで最大190キロメートルを救急搬送するか、あるいはリスクの多い分娩を強いられていた対象地域の出産適齢期の女性(約97万人)が、州内の産科関連施設で適切な処置を受けられるようになるなど、モロッコ政府が取り組む保健医療政策の改善目標の実現に貢献することが期待される。
- なお、本支援は、2005年4月に開催されたアジア・アフリカ首脳会議において小泉純一郎総理大臣が表明したアフリカ支援の一環として実施されるものである。
(参考)
モロッコは北アフリカに位置し、総人口が3,058万人(2004年:世銀)で、一人当たりGNI(国民総所得)は1,520米ドル(2004年:世銀)である。