日本は、イスラエルと共存共栄するパレスチナ国家の建設のため、93年以降、人道、改革、信頼醸成、経済の自立化支援に取り組んできた。
今般、小泉総理が表明した対パレスチナ支援に関するイニシアティブの概要は以下のとおり。
(1)日本は、対話を通じた和平実現の方針を堅持するアッバース・パレスチナ自治政府大統領を強く支持している。この観点から、大統領府の機能強化のため、今回決定した約160万ドルの追加支援を含め、計約310万ドルの支援を実施する。
(2)日本は、パレスチナ人の生活状況の悪化を強く懸念しており、人道支援を継続してきた。今回、医療・衛生状況の改善及び雇用創出のため、約2500万ドルの支援を実施することを決定した。この結果、約34万労働日の雇用が創出される(今後4ヶ月間、1日最大約2000人の雇用創出)。
(3)これらの支援のほか、日本は、共存共栄の実現に向けて、人々に希望を与えるような中長期的な取組も重要と考えている。具体的には以下の通り。
(イ)ヨルダン渓谷において、域内協力を通じ繁栄する地域を創る「平和と繁栄の回廊」構想を提案。本構想の具体化のため、適切な時期に、日本・イスラエル・パレスチナ・ヨルダン4者で協議の枠組みを立ち上げることで合意した。
(ロ)ジェリコを中心とした地域で、母子保健の向上、地方行政能力の向上、廃棄物管理の改善など、地域の発展を重視した支援を行う。
(ハ)ヨルダン渓谷の開発と水資源確保のため、紅海・死海間の運河建設が重要。世銀が行う建設調査に対し、200万ドルの支援を行う。
(1)第1期(148万ドル):建物建設(4階建て、総床面積2000平方メートル)、法律・行政の専門家などの大統領補佐スタッフの雇用。2005年9月に支援決定、現在実施中。
(2)第2期(162万ドル):建物の内装整備、人事や財政等の専門家雇用、援助調整・管理ユニット設立のための専門家雇用、大統領府職員への技術協力等。
(1)UNDP経由の計3事業(総額1580万ドル)
(イ)「ガザ地区での緊急水供給及び水道整備事業」(542万ドル)
ガザ地区ラファハ市における2つの新規井戸掘削、ガザ地区北部における既存の井戸群の補修・再掘削、及び両地区での水道網及びタンク設備の補修や建設により、24万人が安全な水を利用できるようになり、また1日1人あたり消費量も85リットルから最大120リットルまで改善される。
加えて約5万労働日(12ヶ月、1日当たり約163人)の雇用が創出される。
(ロ)「西岸地区での衛生状況改善のためのゴミ処理機材整備計画」(552万ドル)
西岸地区の地方自治体に対し、ゴミ収集車等の機材を供与し、廃棄物処理サービスの向上を通じて、未回収の廃棄物滞留による悪化した衛生状況を改善させることを目的とする。
現在、我が国が西岸地区で実施中の技術協力プロジェクト「ジェリコ及びヨルダン渓谷における廃棄物管理能力向上プロジェクト」と連携することにより相乗効果が期待される。
(ハ)「ガザ地区での衛生状況改善を通じた緊急雇用創出」(486万ドル)
ガザ地区において300kmに渡る街路の清掃活動を実施し、未回収の廃棄物滞留による悪化した衛生状況を改善させることにより、20万労働日(6ヶ月、1日当たり約1282人)の雇用が創出される。
(2)UNRWA経由の計2事業(総額545万ドル)
(イ)「ガザ・西岸地区での緊急医療計画」(351万ドル)
ガザ地区及び西岸地区において、UNRWAが運営する診療所及び移動診療所に対する医薬品・医療機材等の供与、診療所の補修や改修を実施し、ガザ地区の医療サービスを向上させる。約2万労働日(12ヶ月、1日当たり約66人)の雇用が創出される。
(ロ)「西岸地区での公衆衛生状況改善・雇用創出計画」(194万ドル)
西岸の難民キャンプ内下水路や貯水タンク、衛生施設の補修を実施することで、衛生状況の改善を図ると共に雇用を創出する事業。約7万労働日(4ヶ月、1日当たり約652人)の雇用が創出される。
(3)UNICEF経由の1事業(337万ドル)
「小児感染症予防及び栄養状況改善並びに新生児の院内感染予防計画」(337万ドル)
パレスチナ自治区で活動するUNICEFに対し、ワクチン及び関連医療器具等を供与する。
本事業には、母子保健手帳の印刷、配布も含まれており、現在、ジェリコ及びラマッラを中心に実施中の我が国技術協力プロジェクト「母子保健に焦点を当てたリプロダクティブ・ヘルス向上プロジェクト」と緊密に連携。
(4)草の根・人間の安全保障無償資金協力による1事業(9万ドル)
「孤立した地域における巡回診療活動計画」(9万ドル)
分離壁等により孤立した西岸地区内僻地において、巡回診療サービスを実施しているパレスチナNGOに対し、抗生物質、鎮痛剤、血圧計、酸素ボンベなどの医薬品及び医療器具を供与する。