
麻生外務大臣と蒲谷横須賀市長の会談
平成18年6月12日
6月12日、麻生外務大臣は、横須賀市を訪問し、蒲谷横須賀市長と会談を行ったところ、概要以下のとおり。
1.麻生外務大臣より以下のとおり述べた。
- 5月8日に貴市長より頂いた安全性に関する質問書及び6月2日に頂いた相互支援協定等に関する要請書については、政府としての回答を書簡の形で本日お届けしたところである。
- その書簡にあるとおり、米原子力軍艦の安全性は確保されていると確信しているということを、政府を代表して、改めてお伝えする。ご質問に対する回答は、このような政府の立場について、可能な限り、市民の方々に御理解頂けるよう、政府として用意したものである。今後とも、政府として、市民の方々に御理解を深めて頂くよう、米国とも協力して、努めていきたい。
- 米原子力軍艦の過去に「事故」があったのではないかという点については、個別のケースも含めて、繰り返し国会等で説明しているとおりである。米原子力軍艦の50年の運航の歴史を通じて、人体や海洋生物に悪影響を及ぼすような放射能の放出の事例は皆無であり、日本でも原子炉に係る事故は一度も発生していない。
- 100%安全ということは世の中に存在しないかも知れないが、100%に近づける徹底した努力の結果、米原子力空母の安全性はほぼ100%であると言って差し支えないと考えている。それでもなお、政府としても、万が一の事故の場合の適切な備えが不可欠であると考えている。そのような観点より、相互支援協定や訓練参加に関する貴市長の要請は米側に速やかに伝達し、協力を求めた。これを受けて、今般、米側より、ご要請のあった災害時の相互支援協定の締結に向けた協議を再開させたい、また、原子力防災訓練のシナリオについても貴市も交えた形で協議を始めたいとの意向が正式に伝達された。政府としては、米側の提案を受け、今後の取り組みにつき貴市とよく相談していきたいと考えている。更に、貴市のご要請も踏まえ、日本政府として実施している米原子力軍艦の寄港時のモニタリング体制の整備と充実など、国民の安全のためにあらゆる事態に備えるための取り組みを継続していく考えである。
- 今般の空母交替を通じて米海軍の能力を維持することは、我が国及び極東の平和と安全に寄与するものである。一方、通常型空母が後継艦となる可能性は100%無い。そもそも、空母JFKは空母としての肝心な機能が失われるほど損傷が激しく、我が国及び極東の平和と安全を守る前方展開空母の役割を果たせる通常型空母はもはやこの世界から存在しなくなる。そのような中で、6月5日、米側より、日本政府に対して、2008年の空母の交替に向けて、横須賀港に原子力推進型空母が入港するために必要な水深を確保するための浚渫の工事を日米地位協定に基づいて実施してほしいとの要請がなされた。この要請について、関係省庁間で検討を行った結果、日米安保体制、ひいては、我が国自身の安全保障にとっての重要性も踏まえ、日本政府としてこれを実施する考えであり、そのため、時間的な制約に鑑み、6月15日の日米合同委員会で米国と基本合意する方向で米側との間で調整を行っているところである。本件浚渫工事の実施及び事前の測量・調査にあたっては、港湾法の下の協議を含め、貴市の御協力を御願いしたいと考えている。我が国の安全保障を担う空母の前方展開に穴を空けないためにも宜しくお願い致したい。
- 第7艦隊の中核として前方展開する空母の地元であり、海軍基地の地元である貴市には、日頃より日米安保体制に多大な御支援と御協力を頂いていると認識している。そのような認識の下、政府として、在日米海軍の地元において、幅広い課題について、貴市とよく相談し、積極的に協力して取り組ませて頂きたいと考えている。
2.これに対し、蒲谷市長より以下のとおり述べた。
- 安全性に関する政府の立場は理解した。当方よりの質問に対する回答はこれから読ませて頂きたいが、政府として市民に分かり易く説明する努力をして頂いたことは評価する。政府においては、引き続き、市民の不安を払拭する真摯な努力を行われることを期待する。
- また、防災のための相互支援協定、また、市の原子力防災訓練への米海軍の参加について米側より協議の意向が伝えられたことは前向きに受けて止めており、対応につき政府と協議していきたい。また、モニタリング体制の強化等についても、当方の要請を受けて前向きに検討頂いていることは評価しており、是非とも具体的な形で体制強化を実現して頂きたい。
- 貴大臣よりもご説明のあった施設整備の準備については、早急な開始が必要であることは理解した。市として、如何なる対応を行うかについては、本日の貴大臣から伝えられた政府のメッセージも踏まえ、検討し、速やかに結論を出したい。