報道発表

モルドバに対する無償資金協力(貧困農民支援)について

平成18年3月3日
  1. わが国政府は、モルドバ共和国政府に対し、「貧困農民支援」として、2億2,000万円を限度とする額の無償資金協力を行うこととし、このための書簡の交換が、3月3日(金曜日)、キシニョフ市において、わが方馬渕睦夫駐モルドバ国大使(ウクライナにて兼轄)とアナトリエ ゴロデンコ 農業食品産業大臣(Mr. Anatolie GORODENCO,Minister of Agriculture and Food Industry of the Republic of Moldova)との間で行われた。
  2. モルドバは、1991年8月に旧ソ連から独立したが、市場経済化への移行の際の経済的混乱、度重なる洪水、旱魃などの被害や独立当初からのスラブ系およびウクライナ系住民の多い沿ドニエストル地域が分離独立を主張し武力衝突に至ったことなどにより経済状況は低迷している。また、1998年に起こったロシア経済危機の影響を受け、モルドバはさらに困難な財政状況におかれている。このため、2000年までGDP成長率は年平均で-10%であり、生活水準の低下と貧困層の増加が問題となった。このような中、モルドバ政府は、低迷した農業生産を向上させるため農業機材等の整備を目指しており、主要作物である小麦等の増産および生産安定のために必要な農業機械の調達につき、わが国政府に対し、無償資金協力を要請してきたものである。
  3. わが国は、2000年度にモルドバに対する貧困農民支援(旧食糧増産援助)を開始し、4年間で145台の乗用トラクター、76台のコンバインを供与した。モルドバで使用されている旧式のコンバインの収穫ロス率が30%であるのに対し、日本から供与されたコンバインのロス率は1%であり、作業能率も向上している。
     同国では、1992年までの10年間でわずか700台のトラクターが輸入されたに過ぎなかったが、日本からのこれらの支援を契機に、西側工業国製農機の効率性に刺激を受け、農機の購入意欲と食糧増産意欲が急速に高まった。この結果、2002年以降4,700台のトラクターが輸入され、それまで放置されていた農地が活用され、2000年以前の全農地の60%しか耕起できなかったが、現在では95%にまで向上した。
     担当省である農業食品産業省は、日本から供与されたトラクターを農民に販売し、前払い金25%を含め3年間で支払いを完了するリース販売方式を導入した。また実施機関による年2回の訪問サービス、販売後回収された見返り資金によるスペアパーツやトラクターの追加調達に対しても、購入希望者は殺到している。欧州連合(EU)、米国国際援助庁(USAID)、英国国際援助庁(DFID)等の現地援助関係者の間でも、モルドバで最も上手く行っている事業の1つであり、自由経済浸透のプロセスで、クレジットの文化を定着に貢献したと指摘されている。

(参考)
 モルドバは中・東欧に位置し、ウクライナおよびルーマニアと国境を接し、人口は約420万人、一人あたりGNI(国民所得)は中・東欧諸国で最も低い約710ドル(2004年)の国である。

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