備蓄弾頭維持管理計画(SSMP)-核抑止力維持と核軍縮推進の狭間で-
福井 康人
研究ノート: 一般財政支援-タンザニア:導入10 年目の検証
中村 泰徳
レアメタル/レアアースの戦略性と安全保障(資源の偏在性と確保政策の観点から)
八田 善明
山田 洋一郎
川崎 晴朗
危機遺産「エルサレム旧市街とその城壁群」の保全に向けたユネスコの役割
見原 礼子
神山 友宏
備蓄弾頭維持管理計画(SSMP)-核抑止力維持と核軍縮推進の狭間で-(PDF)
福井 康人
2010年は,4月に核セキュリティ・サミットが,5月に第8回核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議が,9月には10年以上にわたり兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)の交渉開始が出来ない停滞状況を打開すべく軍縮会議(CD)活性化のためのハイレベル会合が開催されるなど,核軍縮・不拡散分野で注目された重要な会議が相次いで開催された。更に,米国による第3次核態勢見直し発表及び4年振りの未臨界実験実施,並びに核兵器の安全性・信頼性維持を含む仏英協力に係る合意等主要核兵器国の核政策の下での新たな動きが看取された興味深い一年でもあった。備蓄弾頭維持管理計画(SSMP)の下で実施されている未臨界実験等の扱いについては,核抑止力維持という安全保障上の要請と核実験を禁止するCTBTを中心とする核軍縮推進という相反する政策要素を巡り,CTBT交渉のころから活発に議論がなされてきた。本稿においては,本件と密接な関係にある新START条約により米露の核削減が進む中で,米国のSSMPの現状を概観するとともに,他の核兵器国等の類似事例にも触れつつ,今日におけるその意義につき考察を試みる。
研究ノート:
一般財政支援-タンザニア:導入10 年目の検証(PDF)
中村 泰徳
昨今,タンザニアでは一般財政支援から撤退するドナーや減額するドナー,またそれらを示唆するドナーが見られる。本論は,それらの動きが一般財政支援の失敗を意味するか否かを確認するために,有効性と開発インパクトという観点から同支援を検証する。検証結果として,一般財政支援はある程度の成果を残したが未だ課題があるという評価であり,成果を継続し,残された課題に取り組むためにも,今後も中期的に続けるべきと結論する。また,一般財政支援の評価が“低い”原因を4点にまとめ,その原因から考える今後の評価方法として,政府のオーナーシップを尊重したパフォーマンス評価枠組みによる単年度評価,ガバナンス強化及び援助効果における有効性に関する複数年評価,そして政府支出が変化に結びつきやすい開発指標における開発インパクトの評価を組み合わせて実施することを提言する。
レアメタル/レアアースの戦略性と安全保障(資源の偏在性と確保政策の観点から)(PDF)
八田 善明
資源は、歴史的に見ても明らかであるとおり、経済、産業上あるいは安全保障上極めて重要な要素であるが、近年、供給面で制約があること、少量であっても多大な性能・効果が得られることから、レアアースを含むレアメタル(希少金属)が注目されている。特にそれらは民生用途だけでなく、軍事面においても重要な役割を担っており、安全保障を支える基盤としての観点からも、その安定供給の確保が重要であると思われる。本稿においては、レアメタル/レアアースについて、同戦略性を概観しつつ、安定確保に向けて必要と考えられる諸要素を、これまでの供給国の例や需要国の動き等を通じ、併せて、民生用途のトレンドと軍需面での方向性等を加味しながら纏め、提示することを目的としている。
山田 洋一郎
今後、自衛隊が他の先進国並みに国際平和活動に従事することを可能とするために、国際平和協力に関する一般法を制定する際には、国際平和協力に豊富な経験のある国々の事例を参考にし、国際平和活動の実施の過程でいかなる実際的及び法的問題に遭遇するのか、それを解決するためにいかなる措置がとられているかを見る必要がある。そのような国として、我が国と似た安全保障上の利益と価値観を有し、アジア太平洋の国際平和協力において指導的な役割を果たしてきた豪州の経験が参考となる。本稿においては、豪州の司法長官が議会に提出した法的見解を紹介した上で、国連PKOや多国籍軍の派遣に際して手当てすべき重要な国際法的課題のうち、外国領域への軍隊派遣が正当化される法的根拠、地位協定、武器使用規定、指揮命令、国際人道法との関係、被「拘留」者の扱いにつき論じる。
川崎 晴朗
ポルトガルは、マカオ総督が駐日公使を兼ねていた。ベルギーについては、在清国公使が維新後、日本を兼摂した。また、オランダ公使はスウェーデン・ノルウェー公使を兼ね、さらに、おそらくad hocベースでデンマーク外交代表の役割を果たした。一方、ロシア及びスイスはそれぞれ在函館領事及び在横浜副領事が事実上外交使節の性格をもっていたと見られる。本稿がカバーする1886年末までに、オーストリア・ハンガリー、スペイン、ハワイ、ペルー及び清国の5ヵ国が日本に外交使節またはその性格をもつ領事官を派遣した。
危機遺産「エルサレム旧市街とその城壁群」の保全に向けたユネスコの役割(PDF)
見原 礼子
ユネスコにおいて1972年に採択された世界遺産条約は、武力紛争や自然災害等により重大かつ特別な危険にさらされている世界遺産物件を、危機遺産一覧表に記載し公表している。その危機遺産一覧表に最も長期間記載されている物件が、「エルサレム旧市街とその城壁群」である。本稿では、同物件の世界遺産一覧表及び危機遺産一覧表への記載過程、及びユネスコにおけるその後の対応ぶりを概観する。それにより、本件が国際社会の政治的な立場の違いに左右されながらも、世界遺産及び危機遺産として認識されたことで、保全活動にどのような影響がもたらされたかを検討すると共に、本物件それ自体が世界遺産条約の運用の歴史に与えた影響についても明らかにすることを目的とする。
神山 友宏
歴史的に経営者側あるいは資本の論理を重視する政策が選好されてきた香港で、何ゆえに最低賃金法が導入されようとしているのかを説明する。アジア通貨危機後の景気低迷を受け、低所得者層が拡大し、草の根から最低賃金法に関する議論が始まる。香港政府が実際に動き出すのは、そうした議論を受けてというよりも、中央政府からの社会問題を重視すべきとの「指示」がきっかけだったことを示す。加えて経済が回復軌道に乗ったにもかかわらず低所得者層の問題が改善しなかったために、香港政府は何らかの対策をとらざるを得なかった。低所得者対策のひとつとして最低賃金法が選ばれたのは、均衡財政が高い優先度をもつ香港では政府の財政負担のない政策が好まれたからであることを示す。
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