寄稿・インタビュー
オマーン・デイリー・オブザーバー紙(オマーン)安倍総理書面インタビュー
2014年1月9日付
(問) 日オマーン関係の現状について
(総理) 日本の総理大臣として約四半世紀ぶりにオマーンを訪問できることを嬉しく思います。私はかねてからオマーンを重視し,日本・オマーン協会の発足以来,名誉会長を務めており,今回の訪問を楽しみにしてきました。
オマーンは日本にとって重要なパートナーです。日本経済の安定成長に不可欠な石油やLNGの供給をオマーンに頼っています。また,オマーンは世界的な海上交通の要衝にあり,ホルムズ海峡を含む海上航路の安全の確保に向けた両国間の協力は,日本のエネルギー安全保障上,重要な課題となっています。
さらにオマーンは,中東地域の課題に対して,カブース国王の卓越した指導力の下,様々なイニシアティブをとっている国です。オマーンとの協力を深めることは,中東地域で積極的平和主義を実施する我が国の外交にとって重要です。今回の訪問を契機として,政治・安全保障分野での協力を,一層強化していく考えです。
オマーンには13社の日本企業が進出しており,今後,造水・発電事業といったインフラ産業や観光産業等の分野で,更に多くの日本企業の進出が望まれます。また,環境や保健・衛生,省エネ・再生可能エネルギー等の幅広い分野において,オマーンの人材に日本の有する技術や経験を伝達し,オマーンにおける国内産業に発展につながることを期待します。
人物交流や文化交流の促進は,両国の良好な関係の礎となります。現在,50名を超えるオマーン人留学生が日本で学んでいます。また,スルタン・カブース寄付講座が日本の最高学府である大学に設立されており,日本における中東地域研究の更なる発展に貢献しています。
今回の訪問では,こうした取組を通じて,政治・安全保障,経済,人的交流など幅広い分野でオマーンとの包括的パートナーシップを強めたいと考えています。
(問) 日本の中東沿岸地域に対する展望について
(総理) 中東地域には,中東和平問題,シリア情勢,イランの核問題等,域内諸国と国際社会が協力して取り組むべき多くの課題が存在しています。また「アラブの春」以降,大きな政治的変革の中にあります。中東地域の平和と安定は,国際社会の安定及び日本の安全保障に直結しています。日本は,国際協調主義に基づく積極的平和主義の基本理念の下,中東地域の平和と安定にこれまで以上に積極的に貢献していきます。
オマーンを含む湾岸諸国は,日本にとって最大の原油供給源であるだけでなく,変動する地域における安定勢力として,地域の平和と安定に重要な役割を果たしています。
特に政治・安全保障面での協力という観点からは,湾岸諸国との「協働」(タアーウン)をモットーに,中東沿岸地域の安定により一層の政治的役割を果たす決意です。
経済面では,エネルギー分野での協力関係を越えて,より重層的な経済関係を強化し,日本と中東沿岸地域の「共生と共栄」(タアイーシュ)を目指す考えです。幅広い分野で,日本の優れた技術や経験を湾岸諸国の国内産業の発展に大いに活用してほしいと考えています。
イスラム社会と我が国は「和と寛容」(タサームフ)を尊ぶ価値観を共有しています。私は,このような共通の価値観を重視しながら,日本と湾岸諸国との個々人や文化の交流促進によって,お互いの分野や社会に対し関心と理解が深まることを願います。
これまで,日本と中東沿岸地域の国々は,地理的には遠いものの,非常に緊密な関係を築いてきました。今後も,日本は中東諸国と共に誠実に歩み続けるという基本姿勢を堅持します。中東湾岸地域との包括的パートナーシップを更に強化して,共に地域の平和と安定に取り組んでいく考えです。