記者会見

吉田外務報道官会見記録

(令和2年11月18日(水曜日)16時05分 於:本省会見室)

自由で開かれたインド太平洋

【朝日新聞 北見記者】「自由で開かれたインド太平洋」に関してお伺いいたします。
先日、総理が、ASEANプラス3終了後のぶら下がりで、「平和で繁栄したインド太平洋」とおっしゃったことが、識者を中心に議論を呼んでいます。
 すでに官房長官会見でもお答えになっていると思うんですが、改めてこの「自由で開かれたインド太平洋」という日本外交の指針に変化はないのでしょうか。改めて、この「自由で開かれたインド太平洋」は、今、日本としては戦略と位置づけていらっしゃるのか、もしくは構想・ビジョン、あるいはまた別のものとして位置づけていらっしゃるのか、その位置づけも教えてください。

【吉田外務報道官】「自由で開かれたインド太平洋」についてのお尋ねですけれども、米国やオーストラリア、インド、この前QUADを実施した国、それからASEAN、更には欧州とか、そういった考え方を共有する国々と連携をしながら、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた取組を戦略的に推進していくという考え方を政府としてとっておりまして、この考え方については何らの変更はございません。
 今ご指摘ありました菅総理のご発言ですけれども、そうした「自由で開かれたインド太平洋」を実現するということを通じまして、地域の平和と繁栄に向けた取組を主導していくという、日本政府の一貫した立場、これに基づいてご発言なさったものと、このように認識しております。
 それが戦略なのか構想なのか、こういったお尋ね、以前にも同様のご質問をいただいたかもしれませんけれども、それはそれを言及するコンテクスト等によって、戦略と言ってみることもあるし、構想と言うこともありますし、先ほどの外務委員会で、茂木大臣に対して、山尾志桜里先生から同様のご質問があったかと思いますけれども、そこで大臣は、実現という述語で受ける場合には、自由で開かれたインド太平洋「構想」と言って、構想をつけて発言をしたりしていますというようなこともおっしゃっていました。
 したがいまして、その使用されるコンテクストとか文脈によって、表現が異なることはありますけれども、その意味する内容、それから日本政府が目指している立場、これには変わりはないと、このように理解しております。

【朝日新聞 北見記者】その「自由で開かれたインド太平洋」をめぐっては、トランプ政権の下で米国もその外交方針として採用したという事情があったと思います。
 一方、バイデンさんが今までインド太平洋地域に言及する際に、FOIPとは言わずに「平和で繁栄したインド太平洋」と言うことが多いという指摘があると思いますが、仮定の話になってしまうんですけれども、これ、次期政権においてもFOIP、まずそもそもFOIPが受け継がれるというふうに日本政府として見ていらっしゃるんでしょうか。そして受け継がれなかった場合に、日本政府として、そのFOIPの旗はどのようにされるおつもりでしょうか。

【吉田外務報道官】バイデン新政権につきましては、まだ発足しておりませんので、新しい米国の政権がどのような外交方針を示すのかということについては、予断することは現時点では困難かと思います。先般、菅総理大臣がバイデン次期大統領と電話会談をされましたけれども、この場におきましても、菅総理の方から「自由で開かれたインド太平洋」を推進するとの立場をご説明をされました。これに対して、バイデン次期大統領からも、インド太平洋について、日本との間で協力をしていくという立場が示されたと思います。
 どのような表現をされているかということはあるかもしれませんけれども、この地域において、日米が同盟を基礎として、「自由で開かれたインド太平洋」の構成要素である航行の自由であるとか、法の支配であるとか、経済的繁栄、民主主義、人権等々、こういったその基本的価値を追求していく姿勢については、新しい政権においても受け継がれるというふうに認識しております。
 具体的にその進め方であるとか、日米間でどのような形で協力していくか、こういったことについては、新政権が発足してすり合わせをしていくべきもの、このように考えます。

在日米軍駐留経費交渉

【NHK 渡辺記者】日米関係でちょっとお伺いしたいんですけれども、まだ新しい政権、大統領の就任式は先ですけれども、現時点での日米の懸案であります「ホストネーションサポート」、駐留経費の件の交渉というのは、どういう段階にあるのかと、今後のどういったタイミングでまた次が行われるのかとか、見通しも含めて現時点で分かっていることをお願いします。

【吉田外務報道官】在日米軍駐留経費負担に関する特別協定につきましては、2021年3月末に有効期限を迎えるということで、今月11月9日と10日、ワシントンにおきまして第1回目の正式交渉を行いました。ご案内と思いますけれども、それに先立ちましては、ビデオ会議を通して、両国の当局間で非公式な協議も行われてきております。
 今回は初めての正式交渉ということですので、同盟の中核をなす在日米軍、その円滑で効果的な活動を確保することが重要であるといったことですとか、日米同盟の強固な結束を一層強めていくこと、こういったことについて、今回の交渉を通じて双方が裨益するような、そういった結果が得られることが重要であるというような、基本的な認識を共有したところです。
 まだ交渉は一回行ったばかりですので、今後の具体的な交渉の段取りであるとか目途、こういったことについては、現時点でご説明できるような材料はありませんけれども、先ほど申し上げたように3月末が有効期限であること、それから、これは我が国においては、政府予算のプロセスにも関連していることを念頭に、そういった中でスケジュール感をもって交渉を加速していきたいと、このような段階であると承知しております。

日朝関係(東京オリンピック・パラリンピック)

【NHK 渡辺記者】別件なのですが、前の長官会見とかでも出ているんですけれども、先日、日本を訪問しました韓国の韓日議員連盟の金振灼(キム・ジンピョ)会長が韓国のメディアに対して日本政府の関係者のほうから、東京オリンピックの際には、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の意思があれば、招待する準備があるというような趣旨の発言があったということを紹介しているんですけれども、この他にも、ちょっと東京五輪をめぐって北朝鮮の金正恩委員長の関係で、東京五輪を何かのきっかけにしようという、いろいろ発言があるんですけれども、何かしら五輪というのを一つの契機にして、朝鮮半島の緊張緩和に向けて、何か日本として考えているのか、その辺の今の状況というのはどうなんでしょうか。

【吉田外務報道官】お尋ねの韓日議連の金振灼会長が、韓国のメディアのインタビューで、今お話のあったようなやり取りをしたという報道には接しております。
 この件につきましては、これに先立って今月の5日の参議院予算委員会でやり取りがあったと承知しておりますけれども、委員の方から、東京オリンピックに金正恩委員長を呼ぶつもりはあるのかというお尋ねがあって、オリンピック担当の橋本国務大臣から、あくまでもIOC、主催者が招待するかどうかということで、政府としてどうこうということではないという説明をされました。
 これに対して、質問された委員の方からは重ねて、もし来られたら会談されるかと尋ねられて、菅総理は「仮定の質問にお答えすることは差し控えます」と、「が、いい機会だとは思う」と、こういうふうにお答えになったと承知しております。
 韓日議連の会長が来られて、いろいろな方にお目にかかっていると思いますけれども、今のご紹介したやり取りを踏まえれば、オリンピックに外国要人を招待するのはIOCがお決めになることであって、日本のほうから、政府の立場として、そのようなやり取りをされるということは、にわかには想定し難いとは考えます。
 他方、そういった機会がもしあるのであればどうかということについては、先ほど総理が委員会でお答えになったということだろうと思います。これを越えまして、何か具体的に動きがあるかどうかと、そんな段階には依然としてないのではないかとは思いますけれども、こういったご期待が韓国側の方にあるということだろうと承知しております。

【NHK 渡辺記者】そうしますと、むしろ韓国側がそういう何か発信をし始めているというか、平昌オリンピックのときも金与正(キム・ヨジョン)氏、妹が出てきて、そこをきっかけにして、いろいろ米朝の、トランプ大統領とか、プロセスが結構動いた、表上は動いたと思うんです。そういったこともあって、何かそういうオリンピックをそうした機会として活用しようっていうのが、結構、韓国側から一方的に出てきているという感じなんでしょうか。

【吉田外務報道官】お尋ねのあった韓国の要人の方が、来訪されて、ご帰国後、そういうご発言をされているということで、いかなるやり取りをされたかというのは、そのご本人でないと分からないことですので、韓国側の方において、そういった期待感があるなということが伝わってくるということを申し上げた次第であります。
 他方におきまして、日朝関係については、かねてから政府は前提を置かずに拉致・核・ミサイルの問題を解決して、国交正常化をするという日本政府の立場に基づいて、前提条件を置かずに金正恩委員長と会談をする用意があるということを、繰り返し政府要路からも表明していることですので、いかなる機会があっても、もしそういうことがあれば、その機会を追求していくということだろうと思います。
 いずれにしましても、オリンピックを機会としてどうこうというやり取り、あるいはそういったご発言は、韓国側の方から出されていると承知しておりますし、先ほど申し上げたように、政府としてどうかということであるとすれば、ご招待するのは政府ではないので、そういった政府としてご招待するというようなことを、政府の立場の人間が申し上げるということはないだろうということを申し上げたと、こういう次第です。

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