記者会見

吉田外務報道官会見記録

(令和2年11月11日(水曜日)15時46分 於:本省会見室)

在日米軍駐留経費

【朝日新聞 北見記者】今朝発表のありました、ホストネーションサポートの交渉に関してお伺いいたします。貼り出しを踏まえた上で、改めて今回の交渉の詳細について教えてください。並びに、トランプ政権、常々大幅な同盟国への負担増を求めてきていると思いますが、今回も同様の主張があったのでしょうか。併せてお願いします。

【吉田外務報道官】今朝、確か報道発表があったかと思いますけれども、在日米軍駐留経費負担特別協定、これは2021年3月末までの有効期限になっております。日米間で調整した結果、この時期が双方にとって都合が良いということで、9日及び10日、ワシントンにおきまして対面の正式交渉を行いました。
 これまでも明らかにされてきたと思いますけれども、ビデオなどを通じて、テレビ会議の形式で非公式のやり取りは行ってきております。その上で、今回は在日米軍駐留経費、これが日本同盟の中核をなしている在日米軍の円滑且つ効果的な活動を確保する上で重要な役割を果たしているということについて、改めて認識を一致させていただいたところです。
 さらに日米同盟の強固な結束を、一層強化していくことが重要だということも確認をいたしました。両方にとってWin-Winの結果が得られるような交渉になることを期待していることについても、確認ができたところです。
 お尋ねのありました米国のトランプ政権の姿勢について、いろいろボルトン元補佐官の本などで言及されているようなことを承知はしておりますけれども、在日米軍駐留経費は一層厳しさを増しているこの地域の安全保障環境であるとか、それから日本の厳しい財政状況、これを踏まえて、これまでの議論の積み上げの上に、適切なものになるようにしていくという形で、日本政府としては臨んでいきたいと考えます。
 実際どういうやり取りがあったかについては、まだ交渉が始まったばかりですので、現時点では、詳細についてのお答えは差し控えたいと思います。

【朝日新聞 北見記者】今回特別協定の交渉ですね、恐らく初めて米国側の政権移行期と重なる交渉になると思います。それと併せて、その政権移行期と重なったことによる交渉への影響は、どのようなものがあるとお考えでしょうか。あと、今後のスケジュール感等も分かったら教えてください。

【吉田外務報道官】今回確かに、大統領選挙の開票が行われたばかりのタイミングですので、政権移行期に重なっているというのはご指摘のとおりだと思いますけれども、そのことが影響を与えるのかないのか、それは交渉をやってみないと分からないことでありますので、またそういったものに対して、我々がどういう分析をしているかというのは、日本の交渉の在り方に影響を及ぼす虞れもなしとしませんので、現時点でそのことについて申し上げるのは適切ではないと思います。
 今後の見通しですが、今回正式交渉を対面でやりました。対面でやることによりまして、お互いの立場をよりよく理解する交渉ができるようになると思っております。現時点で具体的な日程であるとか、スケジュールとか、次回いつやるかとか、そういったことは決まっておりませんけれども、先ほど申し上げたように、3月末に特別協定の期限が到来するということであるとか、これは来年度の我が国の防衛予算にも関わる内容であることを踏まえて、できるだけ早く交渉が仕上がるように取り組んでいきたいと、このように思います。

ナゴルノ・カラバフおける軍事衝突の停戦合意

【NHK 渡辺記者】アゼルバイジャンとアルメニアの停戦のことでお伺いしたいんですけれども、昨日、ロシアのプーチン大統領が発表しまして、ナゴルノ・カラバフの係争地をめぐる紛争の停戦に合意したと、アゼルバイジャンとアルメニアがですね。ロシアの平和維持部隊も現地に入っていると思いますけれども、この状況についての日本政府としての立場、評価といったものは、今現時点でどうなっているのかというのをお願いします。

【吉田外務報道官】今、ご説明いただきましたけれども、繰り返しになるかもしれませんが、ロシア大統領府からロシア、アルメニア、及びアゼルバイジャンの3か国の首脳が、モスクワ時間の11月10日午前零時からのナゴルノ・カラバフ紛争地域における、あらゆる戦闘、軍事行動の完全な停止に関する声明に署名したということを発表されました。
 この中身につきましてはご案内のことも多いかと思いますけれども、ナゴルノ・カラバフの境界線、それからナゴルノ・カラバフとアルメニアを結ぶ回廊に沿って、ロシアの平和維持部隊が展開をすると、国内避難民はUNHCRの主導の下で、ナゴルノ・カラバフ及び周辺地域に帰還する、双方の捕虜、拘束者、遺体を交換するといったようなことが合意内容に入っていると承知しております。
 今回、こういった形で、軍事行動が停止するという合意が行われたことを、日本政府としては歓迎したいと思います。この合意が実際に全ての当事者によって履行されて、問題の平和的な解決につながっていくことを強く期待したいと思っております。引き続き、ナゴルノ・カラバフ情勢については、注視をしていきたいと考えております。

米国大統領選(日米関係)

【朝日新聞 安倍記者】米国の大統領選に関して、お伺いしたいんですけれども、トランプ大統領は未だに敗北を認めておらず、今後しばらく、米国の政権が混乱する可能性が指摘されています。先ほどもホストネーションサポートなどの話もありましたけれども、こうした米国内の混乱が長引くことによって,日米関係に支障が生じるということはないんでしょうか。また、日本側としてどういった対応をとるお考えなのか、教えてください。

【吉田外務報道官】米国の大統領選挙につきましては、引き続き開票が続いている州もありますけれども、それぞれの州の仕組みによって、最終確定には時間がかかるといった事情があるということも承知をしておりますけれども、日本政府としては、バイデン候補が選挙の勝利は確実にしたと、このような認識をしております。そういうことを受けまして、菅総理、茂木外務大臣から、両候補に対してお祝いのメッセージも発出したところです。
 バイデン陣営は新しい政権への移行に向けて、様々取組も始めておられると仄聞しておりますけれども、引き続きトランプ政権が米国の政権で1月の就任式までは継続するという事実に変わりはございません。
 日米同盟についてはこれまでも幾度となく、その重要性については双方で確認をしてきておりますし、そういったことを踏まえて、米軍の行動であるとか、米軍のプレゼンスであるとか、こういったことについても、いかなる事態にも即時的に対応できるように、双方の防衛当局で緊密に連携をしてきております。この状況には、現在の選挙の状態いかんに拘らず、緊密な連携には変わりはございません。したがいまして、我々といたしまして、いかなる事態にも日米が連携して、同盟に基づいて対応できると、このように確信をしております。

米国大統領選(対北朝鮮関係への影響)

【朝日新聞 安倍記者】もう一点なんですけれども、今のお話がありましたバイデン候補なんですが、北朝鮮をめぐっては、バイデン氏は前提条件のない首脳会談には反対の姿勢を示しており、トランプ大統領とは異なるアプローチをとろうとしています。菅総理もこれまで前提条件をつけない日朝首脳会談に意欲を示してこられましたけれども、拉致問題を抱える日本にとって、日米間で連携して対応してきたという経緯がありますが、米国の新しいバイデン政権になった場合に、アプローチが異なる可能性があるので、不都合が生じないかどうか、この点、ご認識を教えてください。

【吉田外務報道官】朝鮮半島情勢につきましては、我が国は従来から、日米、それから日米韓の緊密な連携を基に対応してきております。トランプ政権の下に行われました米朝首脳会談、一連の米朝プロセス、これは日本としては後押しをするという考えでおります。
 バイデン候補が新政権に就かれた後に、どのような朝鮮半島政策をとられるか、いくつかの発言はあるかもしれませんけれども、まだ具体的にチームも編成されておりませんし、どのような姿勢を示されるか、これは十分見極めていきたいと思いますけれども、先ほど申し上げたような、日米及び日米韓が緊密に連携して、加えて、北朝鮮に対しては、国連の安全保障理事会の決議というものがありますので、これに基づく完全な非核化、これまでのトランプ政権の下においてはCVIDと言われたものでありますけれども、こういったことを追求していくということで、新しい政権とも緊密に連携していきたいと思います。
 特に拉致問題につきましては、菅内閣においての最重要課題です。全ての拉致被害者の一日も早い帰国を実現するために、全力を尽くしていくという方針には、いささかの変更もございません。したがいまして米国との間では、政権が変わろうと緊密に連携をして、一層この考え方で連携を進めていきたいというふうに考えます。

米国大統領選(日米電話首脳会談)

【毎日新聞 青木記者】バイデン氏と総理との電話会談について、調整中だということではあると思うんですけれども、日本側から打診しているということでよろしいのかどうか、それと、もし実現した場合に、どのような話をしたいと考えているのか、それを聞かせてください。

【吉田外務報道官】日米の電話首脳会談につきまして、ぶら下がりで菅総理も、しかるべきタイミングで実施していくということをおっしゃっておりますし、現在、具体的に電話会談を行うべく、調整を行っているところです。じきに、どういう形でどういうタイミングでやるかというのは明らかになるかと思います。
 他方、電話首脳会談というのは、ほとんどの場合は、まだ首脳になっておられないので、電話首脳会談と言っていいのかどうか分かりませんけれども、こういった首脳レベルの電話会談といった場合には、特に米国のように、我が国の同盟国で共通の考え方の基盤を共有している相手との間におきましては、いずれの方から電話をかけたかというのは必ずしも明確ではなく、あるいはその都度明らかにはしてきておりません。これはお互いに、双方の意思によって、そういう調整を行っていくものだと認識をしております。
 実際に電話会談が行われた場合の内容については、具体的にどれぐらいの時間があるかということにもよりますので、現時点でこれこれといった具体的なトピックについて申し上げることはできませんけれども、当然のことながら、日米同盟についての基本的な考え方等について、やり取りがなされるだろうと考えます。

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