記者会見

吉田外務報道官会見記録

(令和3年3月24日(水曜日)15時48分 於:本省会見室)

次期米国インド太平洋軍司令官発言(台湾)

【朝日新聞 安倍記者】台湾に関連したお伺いをしたいんですが、米国のインド太平洋軍のデービッドソン司令官の議会証言がありまして、「台湾への脅威は今後6年以内に明白に」、というような発言があります。こうした発言についてどのように日本政府としては捉えているんでしょうか。そしてまた、こうした危機意識というのは、米国側と共有しているものなんでしょうか。

【吉田外務報道官】お訊ねがありましたのは、米国インド太平洋軍司令官に指名されるジョン・アキリーノ太平洋艦隊司令官のご発言ではないかと承知します。
 公聴会での発言の一部始終については、承知をしておりませんので、詳細についてお答えすることはできませんけれども、そういうご発言があったということは聞き及んでいます。日本政府としては、台湾の問題、台湾を巡る状況、情勢につきましては、これまでも繰り返し申し上げておりますけれども、当事者間の直接の対話によって平和的に解決されることを期待するというのが、終始一貫した立場です。そういったことを踏まえて、現在の台湾を取り巻く状況を含め、先週行われました日米「2+2」で、意見交換、情報交換をいたしました。
 その結果として、日米で台湾海峡の平和と安定の重要性、こういったことについて認識の一致を見て、共同発表にも盛り込ませていただいたということです。
 従いまして、両岸関係については、日米間においては、基本的な認識は共通しているということですが、個々の発言についてどうかということについては、それとは別ということで、控えさせていただきたいと、このように思います。

【共同通信 浅田記者】関連して、このアキリーノ司令官の発言の関連で、その公聴会の中で、安全保障分野で日本の能力向上を求めると、そういう発言もあったということです。
 今後、日本と協調していく、中国対応で日本と協力していくバイデン政権の姿勢を示したものといえますけれども、この発言をどのように受け止めているかということと、今後、安全保障分野で米国と協議する場面があると思いますが、こうした米国の期待に対してどのように応えていくお考えがあるか、よろしくお願いします。

【吉田外務報道官】1問目と関連して、同じ次期インド太平洋軍司令官候補のアキリーノ司令官の公聴会でのご発言ということで、全体の文脈というか、詳細の発言については承知しておりませんので、立ち入ってコメントすることは控えますけれども、その公聴会の中で、日本政府について自衛隊と共にミサイル防衛力であるとか、制空能力、それからISRの向上に投資し続ける必要があると、そして日本の能力を向上させる中で、共同訓練を実行し、共同で活用する必要があるといったようなご発言をされた、その部分のことをおっしゃっているのかなと思いますけれども。
 その上で申し上げますと、現下の厳しいこの地域を取り巻く安全保障環境におきまして、日本が自らの防衛をより強固なものとするということ、そして、日米同盟を更に強化するために能力を向上させるということ、これが現下の重要な課題であると認識をしています。
 先ほども申し上げましたけれども、先週行われました日米の「2+2」におきましても、そういった認識に立って、日米の共同訓練の実施であるとか、宇宙・サイバーといった新しい領域を含むクロス・ドメインの協力の深化、それから拡大抑止の強化、こういったことに取り組んでいくということを確認しています。
 バイデン政権との間で、今言ったような共通認識に基づいて、日米同盟の抑止力・対処力の一層の強化、こういったことについて、米国との間で協議・連携を加速していく、こういった状況にあろうかと思います。
 今後、今回の日米「2+2」の確認事項、議論を踏まえて、更に双方の当局間で、そういったものに具体的に検討を加えていく作業を進めていくことになろうかと思います。

日米「2+2」(中国の反発)

【産経新聞 田村記者】今もお話のあった「2+2」の共同発表ですけれども、これを受けてですね、先日17日に中国外務省の趙報道官が、日本に対し、米国の戦略的属国になっていると、日中関係を破壊したなどと、強く非難しました。これに対してですね、改めてその受け止めと、日本政府としてどう対応してきているのかについて伺います。

【吉田外務報道官】ご質問にありましたように「2+2」の後で、3月17日だったかと思いますけれども、中国外交部の定例記者会見におきまして、中国外交部の報道官、今ご質問にあったような発言をされたかと承知していますが、彼が使った言葉を含めて、こういった発言内容については、全く受け入れられるものではないということを明確にしておきたいと思います。
 日本の考え方は、今般の日米「2+2」の共同発表を含めて、あらゆる機会に国際社会に発信しておりますけれども、中国に対しては、このようなことは受け入れられないということであるとともに、日本側の基本的な認識については、外交ルートを通じて反論を行ってきております。
 その上で申し上げますと、日米同盟というのは、日本外交の安全保障の基軸でありますけれども、同時に、それを越えてインド太平洋地域の平和、安定、それから繁栄の礎であると、このことは共同声明にきちんと書いてあると思います。今やインド太平洋地域というのは世界の中においても、最も重要な地域になっているということだろうと思います。
 そういった認識に基づいて、今回の日米の「2+2」においては、ルールに基づく国際秩序、これを推進していくということで一致をしておりますし、米国のみならず、同じような考え方を共有してくれる同志国との間でも連携をしていくということも確認をしております。
 このように、日米に留まらない文脈での広がりを持ったものです。従いまして、お訊ねにあったような、中国側の発言ということは的を射ていないということはご認識いただけるかと思います。
 他方、中国というのは世界第2位の経済大国、我が国は世界第3位の経済大国であり、共に、今申し上げたような重要な空間であるインド太平洋地域にあるわけであります。従って、こういった地域が抱える課題に、共に取り組んでいく責務を、本来、共有している国だと思います。
 日中両国が国際社会のルールに則って、その責任を果たして、国際社会の期待に応えていくことが重要だろうと思います。その上で、日本と中国との間には、東シナ海の情勢を含めて様々な懸案があります。国際社会が懸念する、中国の状況というものもあります。こういったことに対する日本側の考え方というのは、ハイレベルの機会等々含めて、主張すべきはしっかりと主張して懸案を一つひとつ解決していく、そして中国側の具体的な行動を強く求めていくという考え方をしております。
 ご質問いただいたことに対して、この機会に、その点を改めて明らかにしておきたいとこのように考えます。

【朝日新聞 安倍記者】今の「属国」という言い方についてですね、報道官がおっしゃったように、全く受けられるものではないというのは、当然の立場と思いますけども、相手の公式なスポークスマンにある立場の人が、こういう、日本を「属国」なんていう極端な言い方をするというので、日本の立場は分かりますけども、ちょっと極端な言い方で失礼だということで、抗議とか、そういったことはされたりしないものなんですか。

【吉田外務報道官】今、日本側の考え方については、縷々、申し上げましたので、その点については繰り返しません。中国外交部の報道官の発言は、どういう心象風景でおっしゃったのか、ちょっと想像することはなかなかできませんけれども、私が同じような職分にある者として、自分だったらそういう言い方は公共の面前ではしないと思います。
 その上で、こういった発言については、全く受け入れられないということ、それから「2+2」での日本の考え方、更には中国に対して、こういった発言も含めた我々の考え方については、外交ルートを通じて反論をしております。具体的に、どういう言い方をしたかとか、そういったことは申し上げませんけれども、中国政府の方は、そういった反論については十分ご認識いただいていると、このように期待したいと思います。

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