記者会見

吉田外務報道官会見記録

(令和2年10月7日(水曜日)15時51分 於:本省会見室)

冒頭発言

(1)日豪外相会談

【吉田外務報道官】冒頭、私の方から、本日行われました日豪外相会談と、日印外相会談について、既に報道資料等でお知らせはしていますけれども、改めてご紹介をさせていただきます。
 まず日豪外相会談ですが、本日午前11時過ぎから約60分間、茂木外務大臣は、今回第2回の日米豪印外相会合のため訪日されたマリズ・ペイン・オーストラリア連邦外務大臣との間で、昼食を挟みつつ会談を行われました。
 茂木外務大臣からは、特別な戦略的パートナーである日豪両国は更に協力を深化させるために、大きな潜在力があることを指摘いたしました。
 ペイン外務大臣からは、まずは日米豪印外相会合の成功に対して祝意を述べられたあと、インド太平洋地域の安全と安定のため、日豪両国の緊密な協力が重要になるということを指摘されました。併せて茂木外務大臣、本日、お誕生日ですが、誕生日の祝意も伝えられました。
 両外相の間におきまして、先月行われた、日豪の首脳電話会談のやり取りを踏まえ、今後の両国の安全保障・防衛、それから経済の分野での協力について、意見交換をされました。
 安全保障協力につきましては、これまでの協力の深化に加え、現代の新たな課題に対応できるよう、その裾野を広げる必要性について一致いたしました。これは経済安全保障上の分野を念頭に置いたやり取りと承知をしています。
 それから、経済の分野におきましては、往来の再開を含め、新型コロナウイルスの感染拡大防止策と両立する形で両国の関係を発展させる方途について議論を行いました。
 更に、太平洋島嶼国あるいはASEAN等における両国の協力、それからWTOやWHOなどの国際機関における協力、このポスト・コロナを見据えた両国の連携についてもやり取りを行いました。
 最後に、モリソン首相の訪日を双方にとって適切なタイミングで実現していくよう、準備を進めていくことで一致をしたところです。

(2)第13回日印外相間戦略対話

【吉田外務報道官】次に日印外相会談ですが、午後0時半頃から約75分間、同じく4か国会合で訪日中のジャイシャンカル・インド外務大臣との間で、外相間戦略対話を実施いたしました。今回は、その13回目を迎える日印の外相間戦略対話、これを対面で実施することになりました。
 茂木大臣よりは、インドとの関係につきまして、「日印特別戦略的グローバルパートナーシップ」、これを更なる高みに引き上げるために連携をしていくということを、指摘いたしました。
 ジャイシャンカル外務大臣からは、茂木大臣の誕生日について祝意を述べられたあと、今回の4か国会合、それから今回の戦略対話、ホスト国としての日本の調整に謝意表明がありました。
 両外相の間におきましては、政治安全保障、それから経済・経済協力等について二国間関係の議論を行いました。
 コロナ対策として、8月の終わりにインドに対する500億円の緊急支援借款を実施しましたが、その借款、それから医療機材供与を目的とする10億円の無償資金協力に関する交換公文の署名、これに言及しつつ、茂木大臣により、これらの支援がインドの保健・医療体制の強化に寄与することを期待するということを述べ、ジャイシャンカル外相から謝意の表明がありました。  またASEAN、それから南西アジアのインドの近隣国における、日印の第三国協力、これは医療、あるいはインフラの分野におきまして、こういった日印の協力を進めていくこと。更にはインドにおける高速鉄道事業を着実に進展させ、早期着工に向けて加速化させていくことの重要性についても、改めて確認をされました。
 地域情勢におきましては、「自由で開かれたインド太平洋」の実現のために、幅広い協力を行っていくこと、更にインドが提唱している「インド太平洋海洋イニシアティブ」、これは国連海洋法条約に基づく、海洋の国際法に基づいた海洋秩序というイニシアティブですが、こういったものとの連携を強化していくことについても確認を行いました。
 更には、北朝鮮情勢等について意見交換を行いまして、拉致問題等に対するそのインド側の協力を改めて確認をさせていただきました。
 最後に茂木大臣よりは、国連安全保障理事会非常任理事国選挙で、インドが当選されたことに祝意を表するとともに、G4等の安保理改革の早期実現についての協力について一致をしたというところです。
 冒頭、私の方からのご報告は以上です。

日豪外相会談(円滑化協定)

【朝日新聞 北見記者】日豪外相会談の中でですね、円滑化協定に関しての具体的な進展はなかったのでしょうか。

【吉田外務報道官】ご質問がありました円滑化協定、相互アクセス協定とも言われますけれども、やりとりはございました。早期妥結に向けて、協力をしていくということで一致があったと承知をしています。

日米豪印外相会合(アジア版NATO)

【朝日新聞 北見記者】今回の日米豪印に関連してですね、以前からそのポンペオ国務長官が、アジア版NATOの制度化されたものを志向されていると承知しています。日本政府として、外務省として、こういった制度化の可能性について改めてどのようにお考えになっているでしょうか。

【吉田外務報道官】今、ご指摘がありましたように、米国のポンペオ国務長官、地域的な安全保障の枠組みといったものに発展させていくことについての、ご発言があると承知しています。これは米国として、このインド太平洋地域における、米国の強いコミットメントを示すものというふうに思います。
 今回の日米豪印というのは、「自由で開かれたインド太平洋」という一つのビジョンについて、共通の理解を有する同志国として、会合を繰り返してきているものです。この中におきましては様々な、安全保障であるとか、あるいはその地域におけるその域内の協力ですとか、今回はコロナを見据えた協力についても、連携を確認したところです。
 日本としては今回の会合でも強調いたしましたように、まずこの会合をきちんと定期化していくこと。更には、「自由で開かれたインド太平洋」というそのビジョン、この「FOIP」の考え方を他の国、他の地域にも連携を広げていくこと、これを目指したいと、このように考えております。

【朝日新聞 安倍記者】今の質問に関連してなんですけども、ポンペオ国務長官はですね、一部メディアのインタビューに答える形で、今おっしゃいました日米豪印の4か国の枠組みを発展させて、インド太平洋に多国間の安全保障の枠組みをつくることが望ましいと、そういったお話をされているわけですけども、日本側としてそういった展望までは持っているのでしょうか。

【吉田外務報道官】ポンペオ国務長官が、そのような期待というか、考え方をご披露されているのは、先ほど申し上げましたように承知をしております。今回の日米豪印の会合、それからFOIPについての連携につきましては、これまで真剣に取り組んできているところですし、茂木外務大臣も、ASEANあるいはヨーロッパ、こういった国々との間で連携を確認してきているところですし、その中におきまして、安全保障のような問題についても、やり取りをしていくことについては視野に入っていると承知をしています。こういった取組をまずは地道にしっかりと広げていくこと、これが当面重要であると、このように考えております。

中国に関するポンペオ長官発言

【朝日新聞 安倍記者】昨日の4か国の外相会談の中でも、ポンペオさんもですね、新型コロナをめぐって、中国共産党の隠蔽で事態は悪化したなどと、非常に厳しい言い方をされていたのが印象的だったんですけども、改めてこの発言について、日本の立場というのはどういったものなのか、教えていただきたいのですが。

【吉田外務報道官】ポンペオ長官のご発言についてのコメントというのは、控えたいと思いますけれども、新型コロナウイルス、その感染の拡大というのは、国際社会が直面している喫緊の課題であります。こういったものに対処するために、今回のような4か国が緊密に連携して取り組んでいくこと。この中におきましては、ワクチンであるとか、そういったものの開発、あるいはそういったものへのアクセス、どうするのかといったことも一つの議論になっているかと思いますけれども、国際社会が、こういったものに一致して連携して取り組んでいくことが、現在、喫緊というか、当面我々が取り組んでいく、そういう課題であろうと認識しています。

菅総理のトランプ大統領へのツイッター・メッセージ

【共同通信 浅田記者】別件なんですが、先ほど自民党の外交部会がありまして、その中で自民の議員の方から、総理が先日トランプ大統領のコロナ感染に対して発出したツイッターのメッセージですか、その英語のレベルが低いっていう、そういう意見が出たそうで、その後の自民党側の説明では、外務省が一応作成をサポートしているという説明があったんですけど、作成の経緯とかをご存じであればよろしくお願いします。

【吉田外務報道官】自民党の部会でどういうご意見が出たのか、私、存じ上げておりませんけれども、そのツイッターの英訳に関して、外務省としてお手伝い、あるいは関与すべきことがあれば、しているとは思いますけれども、その経緯詳細については、私は承知しておりません。

【共同通信 浅田記者】関連で、このような意見が出たことを踏まえてですね、今後例えば、総理ですので、外国の方も見ていると思うんですけれど、メッセージの作成のサポートとかですね、そんなちょっと体制を強化するとかですね、そういうことっていうのも考えていくことにはなるんでしょうか。

【吉田外務報道官】今申し上げましたように、自民党でどういうご意見が出て、つまりどういうところが足りないのかということについては承知しておりませんので、どのように対処していくかということを、この段階で申し上げるのは控えたいと思います。

プーチン大統領への誕生日メッセージ

【NHK 渡辺記者】先ほど、茂木大臣の誕生日が今日だという話がございましたけども、ってことはロシアのプーチン大統領と誕生日が同じなので、同じなんですね。1952年で68歳で、今まで安倍総理大臣はこの誕生日のときにメッセージを送っていましたけれども、今の話とも関連しますけども、多分外務省もサポートしていると思いますけども、そうであればですね、菅総理大臣の方から何らかのそのアクション、プーチン大統領に対して、安倍総理がやっていたような誕生日のメッセージを送るということはやったのか、やっているのか、この辺がもし分かりましたら。日露関係の今後のバロメータというかですね、安倍路線の継承という意味で、どうなるのかって、一つのバロメータかなと思っておりますけれども。

【吉田外務報道官】まず、重要な情報提供、ありがとうございます。申し訳ありませんけれども、私、そういう担当部局の方でどういうふうなやり取り、相談しているかは承知しておりませんので、ご質問に対する回答は持ち合わせておりませんけれども、そのようなご質問があったということは、担当部局の方にも共有したいと思います。

日印外相会談(RCEP)

【朝日新聞 北見記者】お話を戻してしまって恐縮なんですが、日印外相会談でお伺いいたします。会談の中で、RCEPに関して言及はありましたでしょうか。改めて年内のですね、署名を目指している中で、インド、今年に入ってから交渉に参加していないわけですけれども、RCEPのインドの参加の可能性について日本政府としてもどういう立場であるのか教えてください。

【吉田外務報道官】まず日印の外相会談の中で、RCEPについてどうだったかというご質問ですけれども、RCEPについてのやり取りはなかったと承知しております。
 RCEP自身は、地域の多国間の自由貿易を推進する枠組みとして、日本もこれまで積極的に推進を図ってきておりまして、ご指摘のように、インドが参加することが非常に重要であるという認識ではあります。その協定の交渉につきましては、これまでも相当詰めた協議が行われてきておりますし、期限は必ずしも明らかにはしておりませんけれども、早期に交渉を妥結して枠組みを作っていくことが重要であるという認識には、変わりありません。現時点で今後の見通しについて、この場で申し上げられる材料については、今持ち合わせておりません。

日米豪印外相会合(共同声明)

【朝日新聞 安倍記者】昨日、茂木大臣ですね、日米豪印の外相会談後に非常に突っ込んだ議論を行うことができたであるとか、あとは「自由で開かれたインド太平洋」ビジョン実現に向けて、各国の外相からも賛同が得られたという発表が発言されておられますけども、意義深い議論だったと思うんですが、昨日、共同声明の発表がなかったっていうのは、あってもよかったと思うんですけど、それがなかったのはなぜなんでしょうか。

【吉田外務報道官】日米豪印の今回の会合につきましては、これが2回目ということで、今回、このビジョンの実現に向けて、より多くの国々に連携を広げていくこと、それからその協力の中身を更に具体化していくこと、こういったことについて中心に議論されたと承知をしております。その中で具体的な協力として質高インフラであるとか、海洋安全保障であるとか、サイバーとか、そういったところでの実践的な協力が必要だということについて一致があったというふうには承知しております。
 お尋ねがありました共同声明、これについては、4か国の中でのやり取りの結果として、今回作成をしないということになって、まずは外相同士で、対面で突っ込んだやり取りをするということで行われたと承知をしております。

日米豪印外相会合(中国の反応)

【朝日新聞 安倍記者】この日米豪印の外相会談について、中国側が反応していまして、中国の外務省の副報道局長がですね、いかなる多国間協力も開放的透明であるべきだと、第三国の利益を損ねるものであってはならないという、牽制ともとれるコメントを出していますけれども、これに対する日本側の立場というのはどういったことでしょうか。

【吉田外務報道官】まず、この日米豪印で議論された「自由で開かれたインド太平洋」を、その名のとおり開かれたビジョンということで、こういった内容についてご賛同いただける国は、いずれの国も排除するものではありません。またこのビジョンそのものは、何か特定の国を念頭に置いて行われているというものでもありません。海洋の自由であるとか、法に基づく支配であるとか、自由な海洋秩序、こういった国際社会が恐らくほとんどの国が賛同していただけるようなビジョンについて議論をしていて、これ自体はオープンに透明性を持ってやっていると認識しています。
 お尋ねになった特定の国云々ということではありませんけれども、こういった国も含めてご理解をいただけるように、今後も努めてまいりたいと、このように思います。

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