記者会見

大鷹外務報道官会見記録

(令和2年6月4日(木曜日)16時34分 於:本省会見室)

全米におけるデモの激化

【共同通信 小野塚記者】米国の一連の事件に関してのお伺いなんですけれども,米国で黒人男性のジョージ・フロイドさんが白人警官の暴行を受けて死亡した事件についてお伺いします。この事件についてですね,外報官として,人種差別を背景としたヘイトクライムだというふうに認識されていますでしょうか。ご自身の受け止めをまずお願いします。

【大鷹外務報道官】この事件は非常に痛ましい事件でして,今,米国の当局がいろいろ必要な調査を行っているところだと承知しておりますし,全米各地でいろいろ抗議デモが行われていることについても,注目しております。
 こういった事件について,個人的な見解を述べるのはあまり適当ではないと,私自身は思っているのですけれども,まず一般論として申し上げると,抗議デモ,そういったものは民主主義の強み,つまり誰もが表現の自由を有しているということであって,平和的な抗議行動そのものは,民主主義国家において保障された権利ではないかと思っているところです。ただし,破壊行為を行って,他者にいろいろな意味で危害や損害を及ぼす,そういった行為だとすると,それはこれとは異なるものなのかなと思っています。
 米国で続いている抗議行動については,今までのところ邦人への被害,直接的な被害は確認されていないですが,ご案内のとおり一部の企業や店舗に被害が出ているということはあるようです。日本企業がその標的となっているというわけではありませんけれども,引き続き我々としても,緊張感を持って情報収集・発信に努め,邦人,日本企業の安全確保に万全を期していきたいという立場は,今後とも変わりございません。
 いずれにしましても,いろいろな意味で注目される状況,事件ですので,これについては私どもとしても,注目しているということは申し上げたいと思います。

【共同通信 小野塚記者】今後,この事件に対して日本政府として,人種差別は許さないといった内容ですとか,声明やコメントを出すというお考えはありますでしょうか。

【大鷹外務報道官】今,冒頭に申し上げましたように,これは非常に痛ましい事件でありますので,その一方で米国当局が今いろいろ調べています。そういった状況だということだけ申し上げておきます。

【共同通信 斎藤記者】今の点で1点だけちょっと確認ですが,今の段階では,外務省としてはですね,日本政府としては,ジョージ・フロイドさんのあの事件について,いわゆる差別意識に根ざしたヘイトクライムかどうか,この点については,今の段階では明確な,そうであるとか,そうでないとか,そういう態度表明を現時点ではしていないと,こういう認識でよろしいでしょうか。

【大鷹外務報道官】お答えに直接なるかどうかですけれども,今,申し上げたように,この事件そのものは痛ましい事件であって,私どもとしては,今,米国当局が調査中だと思うのですけれども,日本としても今後の動向等について,注目はしているということだと思います。

旧朝鮮半島出身労働者問題(被告日本企業の差押資産の現金化に向けた動向)

【韓国SBS放送 兪記者】日本資産の差押えの関係ですが,徴用工の問題を巡ってですね,報道がありましたが,韓国の裁判所側からですね,裁判所が差押資産の売却関連書類を用いた公示送達手続を始めたという報道があったんですが,報道によりますと,昔,去年ですね,韓国の裁判所がですね,差押資産関連書類を外務省に送った,あとそれが返送されて戻ってきた,韓国の裁判所がまたそれを外務省に送ったんですが,その後は何の返事もなくて,そのまま外務省の方に保管されていると見られるというのですが,それは事実かどうかの確認をお願いいたします。

【大鷹外務報道官】韓国の国内裁判所の手続に対する政府の対応,その一つひとつについては,明らかにすることは差し控えたいと思っておりますけれども,ご指摘の報道は,必ずしも事実でない面があるというふうに聞いておりますが,旧朝鮮半島出身労働者問題に係る韓国大法院判決及び関連する司法手続は,明確な国際法違反であって,今回のような報道が出る度にいちいちコメントすることは差し控えているというのは,ご案内のとおり日本の立場です。
 いずれにせよ,現金化は深刻な状況を招くので,避けなければならないことは,例えば今週行われた日韓外相の電話会談を含めて,日本側から繰り返し強く指摘しているところですし,今後とも韓国側に早期に解決を示すよう強く求めていく所存です。

全米におけるデモの激化

【共同通信 斎藤記者】ちょっと質問が前後して申し訳ないんですが,もう一度さっきの米国の問題に話を戻したいんですが,日本政府は,例の香港の問題については,国家安全法制の問題ですね,これについては孔鉉佑(こう・げんゆう)大使を呼んで,秋葉さんが懸念・憂慮を示すという一つのプロセスを踏んだと思うんですが,それに対して今のところアメリカに対しては,今お話ありましたけど,今のところ少なくとも声明や談話は出ていないと。
 端から見るとですね,香港の問題もこれ人権問題,でもここは国際人権規約の精神に基づいて,いわゆる内政干渉の問題ということを超えてですね,国際的な大きな人道問題だということで,日本政府は態度を示したと。
 米国については今のところは態度を示していないと,若干ちょっと対応に差があるようですが,ここは何かもし説明が可能であれば,こういう理由だというところでですね,ちょっと建て付け,理屈のところを説明していただければ助かります。

【大鷹外務報道官】今,二つの話,香港と米国で起きていること,この二つを並べていろいろおっしゃったのですが,そもそもこの二つというのは,また別個の問題であって,それについていろいろ比較する云々ということ自体,どうなのかなという気がします。
 香港については,従前からいろいろ申し上げているところですけれども,まず,全人代におきまして,香港に関する決議が国際社会や香港市民が強く懸念する中で行われたこと,そして現在の香港の情勢を深く憂慮しているというのは,日本として繰り返し申し上げてきたところです。
 香港は日本にとって,緊密な経済関係ですとか,人的交流を有する極めて重要なパートナーであって,「一国二制度」の下に,自由で開かれた体制が維持されて,民主的に発展していくことが重要であるというのが,日本の一貫した立場であります。中国側にはこうした日本の考え方を明確に伝えてきておりますし,また中国以外にも,例えば旧宗主国である英国,先般ラーブ外務大臣と電話会談が行われましたけれども,その場でも深い懸念を共有して,G7の枠組等で緊密に連携して,我々の懸念を中国側に伝えることの重要性,その点で一致したということがございます。いずれにしましても,関係国と連携して,香港の問題については国際社会一体となって,中国に働きかけていくという立場であると思います。
 いずれにせよ,今おっしゃったその問題というのは,比較すべき問題ではないのではないかなと思っております。

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