記者会見
大鷹外務報道官会見記録
(令和2年1月8日(水曜日)16時30分 於:本省会見室)
冒頭発言
2020年JPO派遣候補者選考試験の実施について
【大鷹外務報道官】ジュニア・プロフェッショナル・オフィサーという制度があります。いわゆるJPOというものです。国連等の国際機関に日本人の職員の人を派遣する一つの制度です。それについて,本日,2020年の,今年のJPOとして派遣を希望される方の事前登録の受付が開始されるということです。実際の応募書類の受付は2月1日からですが,それに先だってウェブ上の事前登録が可能になります。
このJPOは,かなり日本政府がいろいろな方策を通じて,国際公務員になることを希望される日本人の方々に対して,サポートを提供するもので,ある意味でこれなくして日本人の国際機関での活躍は難しいというところまで来ていると,私どもは考えています。
これを今後ともしっかりやっていくつもりですので,日本の国民の若い皆さんに,ぜひともこの制度を活用していただきたいということで,今日は紹介させていただきます。
中東情勢(邦人保護)
【毎日新聞 田所記者】イランと米国の関係で,官房長官会見で邦人保護に全力というお話がありましたけれども,外務省として今後何か対策などあれば紹介してください。
【大鷹外務報道官】もちろん総理のご指示の中に,邦人保護に万全を尽くすということが今回も入っています。外務省としては,不断の努力を通じて邦人の保護に万全を尽くすようにしてきているわけですけれども,このイラクにつきましてもこれまで広域情報とか領事メール等を発出して,中東地域の在留邦人に対して注意喚起を行ってきていますし,今後も引き続き事態を注視しつつ,邦人保護に万全を尽くしていきます。そして今いろいろ発出している情報についても,これまでどおり不断の見直しを行って,現下の最新の状況を踏まえて,更に見直すべきところがあれば,当然いろいろ見直していくことになるのではないかと思います。
【毎日新聞 田所記者】今日のイランのミサイル発射後に,何かこの地域で領事メールを出したとか,何か具体的なものは把握されていますでしょうか。
【大鷹外務報道官】具体的な話は私の方でまだ把握しておりませんけれども,今申し上げたように,不断の見直しの努力は当然行っているわけであって,そういったものの一環として,いろいろ関係部局において検討を進めているものと理解いたします。
中東情勢(イランによるイラクの米軍基地への攻撃)
【日本テレビ 佐藤記者】先ほどイランの国営テレビが,今日の攻撃で米国側の部隊80人が死亡,200人が負傷と報道したようですが,現状,政府として把握している被害状況等々を教えてください。
【大鷹外務報道官】状況については,全体としてまだいろいろ情報収集中ということです。そういった報道があるということもあると思いますが,全体としては情報収集中でございますので,一つひとつについてまだコメントできる状況にはないとお考えください。
中東情勢(自衛隊中東派遣)
【日本テレビ 佐藤記者】あともう1点。自衛隊の中東派遣が間もなく迫っているかと思いますけれども,この情勢で,予定通り派遣するべきかどうかについて,お考えをお聞かせください。
【大鷹外務報道官】政府としては,中東における日本関係船舶の航行の安全を確保するためにどのような対応が効果的かという観点から,情報収集体制を強化するために,自衛隊の艦艇及び航空機を派遣することにしたというのは,ご案内のとおりでございます。自衛隊の活動の目的等について,引き続き関係国の理解を得るべく,しっかりと対応するとともに,今後とも関係国と緊密に連携しつつ,地域の緊張緩和と情勢の安定化のために粘り強く外交努力を継続していくということが日本の姿勢ですけれども,いずれにせよ日本政府として,中東情勢に高い緊張感を持って注視していくつもりですし,必要な情報収集体制を強化することが必要ということには変わりありませんので,現時点において,今申し上げた方針に変更はないというふうにお考えください。
【日本テレビ 佐藤記者】もう1点だけすみません。総理や茂木大臣が,米国ないしはイラン側と電話会談等々行う予定があれば教えてください。
【大鷹外務報道官】現時点では私の方では,具体的な話は聞いておりません。
中東情勢(イランによるイラクの米軍基地への攻撃)
【NHK 渡辺記者】現時点で今回の米国によるイランの司令官の殺害,それとそれに対する報復ということでイランが攻撃をしましたけれども,このそれぞれの行動について,軍事行動について日本政府としてはどういう評価をしているのか,そこをお伺いしたいということと,あとは外交努力ということなんですけれども,その点の外交努力という場合はどういったことを現時点でされているのか,先ほどの質問にもちょっと重なりますが,そういった電話会談含めてどういったことを想定されているのか,どういった外交努力をしているのかということと,軍事行動双方についてどう評価しているのか,日本としては何らかの立場を表明するのかどうか,その辺をお願いします。
【大鷹外務報道官】まず1点目なんですけれども,日本自身はご案内のとおり,直接の当事者ではございませんし,それから詳細な事実関係を十分把握する立場にあるかといえば必ずしもそうではないという状況にありますので,いろいろどう評価するのかということについてはコメントすることは差し控えたいと思います。ただいずれにせよ,日本として関係国と緊密に連携しながら,中東地域の緊張緩和と情勢の安定化のために粘り強く外交努力を継続していくということです。具体的に粘り強くというときに何をやっていくか,それはまだ現時点で予断できるところではないんですけれども,日本としてできることはやっていくし,そして何と言っても先ほど申し上げたように,事態の更なるエスカレーションは避けるべきであるという立場を明確にしながら,そして可能な限りの外交努力を続けていくということに尽きるのではないかと思います。
カルロス・ゴーン被告人の出国とレバノン入国
【共同通信 原記者】ちょっと話題が変わるんですが,カルロス・ゴーン被告の逃走の一件について2点質問がありまして,一つが日本の司法制度というのが国際社会から一部批判されてるような状況にありますけれども,日本政府としてはこれにどういうふうに対応,反論していくのかということが1点と,昨日,大使とレバノン大統領の会談があったかと思いますが,そこで事実関係の究明について協力するという回答を得たところだと思いますけれども,この協力というのは具体的にどういうことなのか,この2点をお願いします。
【大鷹外務報道官】まず2点目の方から申し上げますけれども,今お話にあったように,現地の7日において大久保駐レバノン大使とアウン大統領,レバノン大統領と会談が行われて,ゴーン被告人の出国事案についていろいろやり取りを行ったということです。大久保大使の方からは,ゴーン被告人が不法に我が国から出国し,レバノンに到着したことは誠に遺憾であって,我が国として到底看過できるものではないということを伝えるとともに,我が国として重大な関心を有する本件について,レバノン政府が事実関係の究明を含め必要な協力を行うよう要請したということです。
それに対して,先ほどお話がありましたけれども,アウン大統領の方から本件に関してレバノン政府は全く関与していないという説明があるとともに,レバノンは日本との関係を重視していて日本側からの協力要請に対しては全面的な協力を惜しまないことを約束するとの発言があったということです。
ちょっとそれ以上のことは外交上のやり取りなので申し上げにくいんですけれども,いずれにせよ今申し上げたように,事実関係の究明を含め必要な協力を行うよう要請しておりますし,それに対して向こうとしてはいろいろ協力を惜しまないということを言っておりますので,全般的な協力という意味を込めて,大統領という一番上の方の発言ですので,たぶんちょっと大きな意味を込めてではないかと思いますけれども,そういう発言が向こうからあったということは事実だと思います。
あと,もう一つの点なんですけれども,日本の立場としては,これまでも法務省の方からも出ていると思いますけれども,今回の12月31日,保釈中であったカルロス・ゴーン被告人がレバノンに到着した旨の声明が発表されて,そしてもちろん今,まだ事実関係については確認中ですけれども,ゴーン被告人が日本を出国した旨の記録がないことが判明し,何らかの不正な手段を用いて不法に出国したものと考えるということです。こういった事態に至ったことは誠に遺憾というのが日本の立場です。
裁判所によって被告人の保釈が取り消されたということも承知していますけれども,いずれにせよ日本の刑事的手続きは適正に行われるということは必要であるというのが日本の立場ですので,今後,関係当局との調整の上で,関係国,国際機関ともしっかり連携していきたいと思います。そして日本の制度について,いろんな疑問点ですとか,各国,いろいろ各社から寄せられるようであれば,日本政府としても丁寧にそれは説明しなければいけないというふうに思っているところです。ただ,日本の手続きそのものは適正であって,その手続きを適正に運用しているというのが日本の立場ですので,そのことは分かるように丁寧に説明していくということに尽きるのかなと思います。
【NHK 渡辺記者】ゴーン被告の国外逃亡についての関連の質問なんですけれども,まずは昨日の大久保大使とレバノン大統領との会談に関してなんですが,全面的な協力というのは,犯罪人引渡条約がなくてもそういった身柄の拘束も含めて,どれくらいまでの深い協力が得られそうなのか,その感触としてはどうなのか,それとももっと一般論的に言ったのか,それとももう少しかなり深いところまで協力するということを言ったのかということと,それとトルコの政府は航空機の関係者なんかを拘束していますけれども,逃亡に関わったですね,今回,米国国籍の人間が関わっているわけですよね,日本から,とされていますけれども,そういった意味でこれを国のレベルにもっていくのかどうか,個人のレベルなのか分かりませんけれども,米国政府に対して何らかの照会をするとか,そういったことは日本として考えていらっしゃるんでしょうか。
【大鷹外務報道官】まず2点目の方から申し上げますと,今,トルコでの状況とかいろいろご指摘をいただきましたけれども,そういったことについても今まだ事実を確認中という状況です。そして,いろんな国も関わってくるんではないかということについては当然,そういった国々とは我々いろんな機会をとらえて各種,意思疎通を行っているところなんですけれども,なかなかその内容については踏み込んでまだ皆さんにご説明できるものではないというふうに考えておりますけれども,いずれにせよ必要な意思疎通は行っていくということになるのではないかというふうに思います。ただ,それは具体的に何なのかということについては,今の段階ではまだ申し上げる段階にはないということです。
それから,先ほどのアウン大統領の協力の意味なんですけれども,これはまさに大統領ご本人に聞かないと分からないところではありますけれども,彼が言っているような協力を惜しまない,その範囲がどういうものなのか,そこはちょっといろいろ聞いている側としては解釈の余地があるのかもしれませんけれども,でも言葉としては協力を惜しまないという言葉をそのまま受け止め,私どもとしては理解したいというふうに思っているところです。
いずれにせよ今後の展開については,この事案の具体的な今後の展開云々についてはまだいろいろコメントすることは差し控えたいと思っておりますけれども,一般論として申し上げれば,いろいろ日本側としても勉強,あるいは検討しなければいけない部分もあるのかなというふうに思っております。
【ローシスカヤ・ガゼタ レーニン記者】カルロス・ゴーンについて質問ですが,マスコミによりますと,この事件の関係者が3名でした。まずは米国人が2人ともう1人は外国人ですが,外務省の中には,日本政府には何か具体的な情報がありますか。
【大鷹外務報道官】個別の事案については申し上げにくいところがあるんですけれども,いずれにせよ今おっしゃったような具体的にどういう人たちが関わったのか,どういう形で出国したのかということについては,今,事実を確認中であるというふうにお考えください。
安倍総理の中東訪問
【ジャパンタイムズ 吉田記者】安倍総理の中東訪問なんですけれども,これは延期なり中止なり調整ということですけれども,今現在どういう状況にあるのか,相手国に何らかの通知があったのか。
【大鷹外務報道官】総理の訪問については,現在,情勢を見極めながら慎重に検討し判断していきたいという状況です。