記者会見

丸山外務報道官会見記録

(平成30年4月4日(水曜日)16時31分 於:本省会見室)

冒頭発言

(1)アバーディー・イラク首相の訪日

【丸山外務報道官】4月4日から5日の日程で,アバーディー・イラク首相が,実務訪問賓客として日本に滞在されます。滞在中,安倍総理は,アバディー首相と首脳会談を行い,夕食会を開催する予定です。
 首脳会談では,イラク復興への協力,日・イラク間の経済分野の協力や人的交流,地域・国際情勢等について幅広く議論される予定です。
 今般のアバーディー首相の訪日を通じて,2019年に外交関係樹立80周年を迎える両国の友好親善関係を一層深めていきます。
 また,4月5日に,アバーディー首相と安倍総理大臣出席の下,東京で「イラクの治安改善のための経済開発に係る東京会議」を開催します。
 日本は,イラクにおける職業訓練や雇用機会の拡充を通じて,武器回収を進める仕組み作りにおいてイラク政府に協力する方針をこれまでも表明してきています。
 日本は本会合を主催して,イラク自身による武器回収への取組を支援していきたいと思います。

(2)対日理解促進交流プログラム

【丸山外務報道官】この場でも何度もご紹介しました対日理解促進交流プログラムですが,3月末をもって平成29年度事業が終了しました。この1年間でアジア大洋州地域から約3,300名,北米地域から約1,200名,欧州地域から約200名,中南米地域から約100名,計4,800名の将来を担う若手人材を日本に招へいしました。
 平成30年度につきましても,これらの地域から約4,000名の若手人材を日本に招へいし,多角的な日本への理解をより深めるとともに,国際社会における対日イメージの向上,あるいは我が国への持続的な関心の増進を図るため,このプログラムを推進していく予定です。

北朝鮮情勢(河野外務大臣の発言)

【朝日新聞 田嶋記者】昨日,中国外交部の報道官が記者会見で最近の朝鮮半島情勢について,「日本がいささか冷遇されているようだ」と指摘して,「みんなが努力している最中に足を引っ張らないでいただきたい」と批判する発言をしましたけれど,この発言に対する受け止めをお願いします。

【丸山外務報道官】外国政府による記者会見の発言の一つ一つについて,コメントをすることは差し控えたいと思います。そう申し上げた上で,我が国としては北朝鮮の核・ミサイル開発の動向については,重大な関心を持って平素から情報収集・分析に努めています。個々の内容の具体的な分析については,事柄の性質上,お答えは差し控えたいと思いますが,いずれにしても我が国としては,日米同盟,強固なものを下に,高い緊張感を持って高度な警戒監視体制を維持して,国民の安全を守るために最善を尽くしていくということです。

【共同通信 福田記者】個々の分析は控えたいと今おっしゃいましたけれども,河野大臣は高知市内の講演で,「北朝鮮が新たな核実験に向けた準備をしている」という趣旨の発言をされましたが,この発言と,個々の分析は控えたいという政府の立場と若干ぶれがあるということでしょうか。

【丸山外務報道官】河野大臣が紹介されたのは,専門家の中にはそういう見方をしている人もいるということで,具体例を挙げられたと承知しています。

【共同通信 福田記者】ただ,今,政府の立場として明らかに主語は政府として言われたように思われるのですけれども,そうではないという理解,では政府としてのコメントではないということですか。

【丸山外務報道官】繰り返しになりますが,河野大臣が指摘されたのは,専門家の意見の中にはこういったこともあるということです。

【記者】専門家の意見を政府の立場の方が発信するということについては,これは問題ではないのですか。政府がそう思っていないのにもかかわらず,ただ専門家の意見を言うというのは,それはちょっと責任としてはどうなのでしょうか。

【丸山外務報道官】見方があるということを紹介したと,理解いただければよろしいのではないでしょうか。

【朝日新聞 倉重記者】今の関連で,こちらの理解では大臣が知りうる立場の上で,大臣の認識,理解を述べたと我々は理解しているんですけれども,すなわち外務大臣がそういう考えを述べたということは,日本外務省の見解というふうに取れる,ひいては政府の見解というふうに,専門家の意見を紹介したというのは,大臣に確認した上での発言なんでしょうか。

【丸山外務報道官】大臣の発言は,大臣ご自身もの発言を申し上げると,そういうことだとご理解いただいて結構だと思います。専門家の中にこのような見方があると紹介したということです。

【朝日新聞 田嶋記者】現地で聞いた限りでは,大臣の考えとして,情報をいろいろ見ると核実験の準備を一生懸命しているというような発言だったと,私は理解しましたけれども。

【丸山外務報道官】ここで大臣がおっしゃっているのは,恐らく,ある専門家の記事,専門的な記事を,会見の場では・・・。38ノースのことですよね。

【朝日新聞 田嶋記者】高知市での講演の話だと思ったんですけれども。

【丸山外務報道官】いずれにしても,同じようなご質問を38ノースの関係でもあったと理解しておりますし,その時には,大臣のご発言そのまま申し上げますと,記事の最後には「実験場のそばの道路の開発は活発化しているというふうに出ていると思いますが,北朝鮮は様々公開されている情報を見る限り,実験場を含む核関連施設での活動が続いていると思っています」とご発言されています。

【共同通信 福田記者】「見る限り,公開されている情報を見る限り,そう思う」という大臣の認識を明らかに言われているわけで,それは専門家の見方を紹介しているだけというのは,それはちょっと違うんじゃないかと思うのですが。

【丸山外務報道官】いずれにしても,これは専門家の見方には,こういう発言の見方もあると紹介したということです。

【朝日新聞 倉重記者】中国の外交部の発言,コメントに対して,先ほど他国の政府のコメントはしたくないとおっしゃってましたけど,そうは言っても,外務省は対外発信戦略として,日本の外交政策を世界に発信するということを税金を使ってやっているのですけれども,その中で,中国外交部が日本を名指しで,日本の外交政策と北朝鮮外交について,正直,批判を国際社会に対して発信しているわけですね,これについてコメントしないというのは,ちょっと,あるべき姿なのかという疑問が生じるんですけれども,いかがでしょうか。外務報道官としてどうでしょうか。

【丸山外務報道官】これは要するに,外国政府がいろいろと記者会見の場で言っていることはありますけれども,我々としては,それを一つ一つとらまえて,それに対してコメントはしていないと。他方,日本の立場な何かということは常に発信していく必要があると思ってますし,今回の関連で申し上げれば,先ほどの繰り返しになりますけれども,北朝鮮の核・ミサイル開発の動向については,どういうふうに我々が見ているか,どういう立場の下で国民の安全を守るためにやっていくか,こういうことは当然その機会に発言することだと思っています。そういう趣旨であります。

【NHK 辻記者】今の質問に関連してなんですけれども,日本が足を引っ張っているというふうに指摘されているわけですけれども,これについてはどのようにコメントされるんでしょうか。

【丸山外務報道官】これもまた同じような形で,発言の一つ一つに対する具体的な質問だと思いますのでコメントは申し上げませんが,ただ,今,何が北朝鮮との関係で必要かということについては,我々は常に申し上げているとおりだと思っていますし,したがって,そういったことについて,発言をとらまえてコメントすることはしていない・・・。

【NHK 辻記者】つまり,北朝鮮が非核化に向けた具体的な行動を起こすまでは圧力を維持し続けるという日本政府の姿勢が,理解を得られていないんじゃないかということだと思うんですけれども,理解が得られていれば,足を引っ張るという発言にはならないかなと思うんですけれども。

【丸山外務報道官】それは報道官の発言だと思います。我々は日中間で,今,何をやるべきかということについては,すり合わせを行いながら,しっかりと対話を行っている,そうした中では,そういった考え方の違い,特に,朝鮮半島の非核化ということに対して,我々はお互い協力しながらやっていこうということ,そういうことについては,しっかりと意思疎通を行っているということであります。

【朝日新聞 倉重記者】関連なんですけれども,中国の報道官は,昨日,会見の中で,「各方面が互いに歩み寄り,半島情勢の緩和を共に推進し,朝鮮半島問題を対話によって解決するという努力をしている」そういうことを希望している」と,「その努力の最中に足を引っ張らないでほしい」ということを言っているのですが,その前段の「歩み寄り,緊張緩和を対話によって解決する」と,こういった姿勢というのは日本の対北朝鮮外交とは違うものだというふうに理解した方がいいんでしょうか。

【丸山外務報道官】我々が今,何が必要か,ということについては,これは累次,いろんなところで,ここでご質問が出れば,私から申し上げてますし,外務大臣のところであれば大臣からもご説明いただいていますけれども,とにかく地域の平和と安定を確保するためには朝鮮半島の非核化が不可欠だということ,それからこれもよく申し上げてますけれども,北朝鮮による完全な検証可能なかつ不可逆的な方法での核・ミサイルの廃棄,これを実現するためには国際社会が最大限の圧力を維持していかなければならない,この点についても我々は申し上げているところであります。
 そして必要なのは,北朝鮮からの具体的な行動,今,対話とおっしゃいましたけれども,恐らくそれは南北首脳会談に向けての流れ,あるいはあり得るべき米朝首脳会談ということだと思いますけれども,これを通して私どもが必要だと思っているのは,北朝鮮から具体的な行動を引き出すことが必要であると,そして今度の総理の訪米の機会も含めて,あらゆる機会をとらまえて,特に,日米韓3か国の間で緊密に政策のすり合わせを行う,そしてまた中国の役割は,非常に重要だと思っています。
 と申しますのも,中国はご案内のとおり,六者会合の議長国でもありますし,また北朝鮮との貿易額についても9割を占める,この中国の役割は極めて重要,そして我々も,中朝間でもやり取りがありますので,中国が北朝鮮に対して非核化に向けた具体的な行動を示すように働きかけることを期待している,そういった中で我々は関係諸国との協力を通して,朝鮮半島の非核化を共通目標として努力していく,そういう方向性は変わらないと思います。

【朝日新聞 倉重記者】中国の外交部側に報道官の対日批判についての,真意の確認とか,抗議とか,説明とかを求める考えはありますか。

【丸山外務報道官】先ほど申しましたように,報道官の発言の,外国政府の記者会見における発言の一つ一つについてコメントすることはいたしません。

【共同通信 福田記者】確認なんですけれども,大臣の発言は「公開されている情報を見る限り,実験場を含む関連施設での活動が続いていると思う」と,一人称で言われているわけで,これを専門家の見方を紹介しただけとうのは,ちょっと若干無理があるんじゃないかなと,大臣は「思う」と言われているので,一人称で言われているわけですよ。これを専門家の見方を紹介しているとはちょっと思えないんですけれども・・・。

【丸山外務報道官】私どもは,これはあくまでも専門家の見方をご紹介した,こういう見方もあるということだと理解しています。

日韓首脳会談

【NHK 辻記者】安倍総理大臣が3月の電話会談で,文在寅(ムン・ジェイン)大統領に訪日を要請したという報道がありましたけれども,南北首脳会談前に,日韓の首脳会談が行われることの是非について,報道官はどのようお考えでしょうか。

【丸山外務報道官】これも外交上のやり取りですので,お答することは差し控えたいと思いますが,いずれにしても先ほど申しましたように,南北首脳会談,米朝首脳会談を通して,北朝鮮から具体的な行動を引き出したい,そのためにはあらゆる機会をとらまえて,日米韓3か国で緊密な政策の擦り合わせを行っていく,これが必要だと考えています。

【NHK 辻記者】北朝鮮とはアメリカも,韓国も,中国も首脳で会談しているわけですけれども,日本は今のところ,そういう予定,現時点では明らかにしてませんけれども,日本も日米韓の連携を深めていくために,日本と韓国の首脳同士が南北会談の前に意思疎通するということの意義,役割をどういうふうにお考えでしょうか。

【丸山外務報道官】日韓の間ではこれまでも,北朝鮮の具体的な行動を引き出すためにはすり合わせを行っていく,というように,そのことが必要だ,とお互いに認識していますので,そういった観点から,すり合わせというのは常に行っていく,それが必要だという考えに変わりはありません。

【NHK 辻記者】やれたらいいとか,そういうのもあったりしますか。

【丸山外務報道官】これは外交上のやり取りの中身に入っていきますので,それに対するコメントは差し控えたいと思いますが,繰り返しますけれども,日韓,日米,日米韓の,この中で北朝鮮から具体的な行動を引き出す,そのためには政策の綿密なすり合わせが必要だということ,これについて三者間は一致しているということであります。

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