記者会見

大鷹外務副報道官会見記録

(平成29年9月6日(水曜日)16時40分 於:本省会見室)

冒頭発言

G7を通じた日本の気候変動分野への貢献

【大鷹外務副報道官】本日,外務省から,気候変動と脆弱性に関する報告書「気候変動に伴うアジア・太平洋地域における自然災害の分析と脆弱性への影響を踏まえた外交政策の分析・立案」を発表しました。
 背景としては,2013年以降G8及びG7外相会合において議論されてきました。特に気候変動と社会経済の脆弱性の課題,つまり科学的な話と社会経済学的な話と,そういったものを併せていろいろと議論する。それをG7外相会合の場で議論してきましたが,G7外相会合の下に作業部会が設置され,その中で,今申し上げたようなテーマに関連して,特定の地域に着目し,ケーススタディやパイロットプログラムの実践の可能性を探求することの意義が提起されています。
 今回発表された報告書は,G7の議論を踏まて,世界の人口の多数が集住し,今後も人口増加が見込まれる一方で,自然災害に対して脆弱なアジア・太平洋地域に着目し,気候変動が自然災害にもたらす影響と,地域の社会経済的な脆弱性の関連性について日本の分析をまとめたものです。この報告書は,日本の関係各省庁や研究機関,各分野の専門家の知見を集約して,最新の研究成果を踏まえて作成されたものです。
 この報告書については,G7外相会合プロセスを通じた日本の気候変動分野での貢献として,本年秋にもイタリアで開催される予定の同作業部会の次回会合にて提出します。日本としては,今回の報告書作成を通じて得られた知見及び成果を気候変動交渉だけでなく,開発協力や防災,持続可能な開発目標(SDGs)の達成等をはじめとする様々な外交分野においても活用し,発信していく考えです。
 来週13日には,シンポジウムが東京都内で予定されていますので,その場でも今回の成果を紹介しながら議論することになると思われます。生きのいい人たちが作った資料ですので,是非とも機会があればご覧になってください。

日露外相会談

【リア・ノーボスチ通信 奈加記者】河野外務大臣のロシア訪問に関しての質問ですが,今日はウラジオストクに訪問されるということになりましたが,ラヴロフ外相と会談する予定はあるかどうか,もしあれば,どのような課題が議論されるのでしょうか。二つ目は,今回,極東のロシア訪問になりましたけれども,モスクワへの訪問はいつ頃,報道には11月あたりという報道がありましたけれども,どのあたりとかは予定されているんですか。

【大鷹副報道官】河野大臣とラヴロフ外相は,ご案内のように9月1日に電話で会談しています。その時に,既にいろいろ議論はしているのですが,それ以降,直接の接点がないという中で,当然,河野大臣もラヴロフ外相も早く会いたいなという気持ちは持っているはずです。 他方,実際にいつ会うのかどうか,そこはまだ決まっておりません。先ほどの電話の場でも,今後の河野大臣のロシア訪問について,具体的な日程を調整しましょうということで両外相の間で一致はしたのですが,まだ決まっていないというのが現状です。

気候変動と脆弱性に関する報告書関連

【環境新聞 福原記者】今回,報告書をまとめられたということですが,その中でも特に重要な成果,ポイントというところと,アジア太平洋地域に関する結果ですけれども,これを今後の外交分野でも活用するということなんですが,どのように活用されていくということなのか,その感想も踏まえてお伺いできればと思います。

【大鷹副報道官】この類の報告書は,私も長く外交官生活してますけれども,一国のイニシアティブで,これだけ大事なテーマについて出していくといのはなかなか見ないものです。先ほど,生きのいい人たちがいるというように申し上げましたが,ある意味で,相当汗をかきながら,日本の国内の専門家の方々,あるいは研究機関の方々,相当様々な人の意見を聞きながらまとめたものです。それが先ほど申し上げた,科学的な気候変動という問題と社会経済的ないろんな変化がどういうふうに合わさって,どういうふうに作用するのかという視点で行ったかなり独自のものであります。
 ただある意味で,外相間,あるいは国家間で議論するのにふさわしい非常に大事なテーマなので,画期的なものだと思います。そういうものとして,いろんな場で,こういったテーマに関係する様々なフォーラムで,活用できればと思っています。
 特に,島嶼国も関係してくる話ですし,途上国も結構関心示している話だと思いますので,そういったことを議論をする場でもどんどん活用したいと思います。
 詳しくは関係課の方にご照会いただいてもよろしいかと思いますが,いろんな東南アジアの事例とかも書いてあります。人口移動があるとか,あるいは社会不安が起きることによって,自然災害の社会不安が広がることによって,それが社会経済に及ぼす影響とかですね。面白い視点で,そして,考えて見るとそうだなと思うことがいっぱい書いてあります。

【読売新聞 中根記者】今日の発表内容についてなんですけれども,特に東南アジアでは国境を超えた人口移動と,移動先での定着という社会経済的な点が盛り込まれていると思うんですけれども,その点というのは,例えば,シリアの方で難民が増えてるのは,干ばつによる影響もあるんじゃないかと言われてますけど,そういう形で難民とか移民が東南アジアの方でもひょっとしたら増えるかもしれないみたいな,そういうことも言及されてらっしゃるのでしょうか。

【大鷹副報道官】今,おっしゃったような問題というのは,確かに非常に関心の深い問題だと思います。おっしゃるようにシリアの内戦の背景として,例えば干ばつの影響があったのではないかという議論は,確かにあることはあるんです。今の干ばつが社会不安を高めたことが,国内の対立を悪化させて遠因になったという見方は確かにあることはあるんです。ただそれについては別の視点もありますので,多分,いろいろ議論を深めていく必要があるんだと思うんです。そういう中で,我々も一つのアジアの視点,シリアまで入るかどうかなんですが,アジアの視点でこういうものがあるということを一つの議論のベースにできれば,また議論が深まるのかなと思います。

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