記者会見

丸山外務報道官会見記録

(平成29年7月12日(水曜日)16時40分 於:本省会見室)

冒頭発言

(1)「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」のユネスコ世界遺産一覧表への記載決定について

【丸山外務報道官】9日(日曜日),ポーランドのクラクフで開催されている第41回ユネスコ世界遺産委員会において,我が国が推薦した「『神宿る島』宗像(むなかた)・沖ノ島と関連遺産群」の世界遺産への登録が決定されたことを,大変喜ばしく思います。
 今回,この文化遺産を構成する8つの資産全ての一括登録が実現したことを,特に喜んでおります。古くから神聖な祭祀の場として信仰を集めてきた沖ノ島と,その信仰を育み,継承してきた宗像大社や古墳群は,文化的・歴史的に一体のものであること,また,その信仰が古代から現在まで断絶なく続いていることが理解され,評価された結果と考えております。日本の新たな世界遺産の誕生を心から歓迎するとともに,貴重な文化遺産を生きた伝統とともに守り伝えてこられた地元の皆様に改めて敬意を表したいと思います。
 外務省としても,地方の魅力発信の観点からも,この宗像・沖ノ島を含めた日本の世界遺産の対外発信に,関係省庁と連携しながら取り組んでまいります。

(2)国際組織犯罪防止条約,人身取引議定書,密入国議定書及び国連腐敗防止条約の受諾書の寄託について

【丸山外務報道官】本日,国際組織犯罪防止条約(TOC条約)の受諾書を国連事務総長に寄託し,我が国は本条約を締結しました。
 国際組織犯罪防止条約は,既に187の国と地域が締結している極めて重要な条約であり,本条約の締結は,関連する国連の決議やG7/8サミットにおいても,繰り返し要請されてきたところです。
 2019年のラグビー・ワールドカップや2020年のオリンピック・パラリンピック競技大会を控え,我が国に対する国際社会の注目が集まる中,今般,我が国が国際組織犯罪防止条約を締結し,188番目の締約国になったことは大きな意義を有します。
 我が国として,テロを含む組織犯罪対策において,国際社会との協力を一層強化してまいりたいと思います。
 なお,本条約の受諾書の寄託に加え,本条約を補足する人身取引議定書及び密入国議定書並びに国連腐敗防止条約の受諾書についても寄託いたしました。
 我が国としては,これらの条約の締結を契機に,人身取引,密入国を含む国際的な組織犯罪や国際的な問題である公務員等に係る腐敗行為についても,国際社会と緊密に連携して,犯罪対策の更なる強化に努めていく所存です。

南シナ海情勢

【共同通信 内保記者】南シナ海情勢について伺います。国連海洋法条約に基づく仲裁裁判が中国による南シナ海支配の根拠を退けてから,丁度,今日で1年になります。この1年間,中国はその受け入れを拒否して,一方で,米国とは「航行の自由作戦」を展開しています。この1年間の南シナ海をめぐる情勢をどのように分析されているかということが1点,それと,中国側がその判断を無視していることに対して,今後,政府として,どういうふうに働きかけていくのか,この2点についてお願いします。

【丸山外務報道官】国連海洋法条約の規定に基づいて,仲裁判断は最終的であり,紛争当事国を法的に拘束するということで,当事国は仲裁判断に従う必要があると考えております。
 我が国は,これまでも一貫して海における法の支配の貫徹,これを支持してきております。南シナ海をめぐる問題の全ての当事国が,国際法に基づく紛争の平和的な解決に向けて努力することの重要性を強調してまいりました。
 それから,これもご案内のとおり,先般開催されましたG7におきましても,タオルミナサミットにおけるコミュニケでG7首脳,東シナ海,南シナ海における状況を引き続き懸念し,全ての当事者に対し,係争のある地形の非軍事化を追求するよう要求する旨,G7の一致した考えとして表明してまいりました。
 政府としては海における法の支配の貫徹に向けて,関係国と協力を進めていくとともに,平和的解決に向けて,引き続き努力していく所存であります。また,先般のG20,ハンブルクサミットの機会にも多くの二国間首脳会談が行われました。そうした中での地域情勢について意見交換を行って,その中で必要に応じて南シナ海についても議論をしてまいりました。
 中国との関係におきましては,日中首脳会談も今回G20ハンブルクサミットの期間に行われて,日中関係全体についてやり取りをする中で,海洋安全保障についてのやり取りも行われました。その中で,日本側からも,南シナ海についての日本の考え方に基づいた発言を行いました。中国側の方からも中国側の立場に基づいた発言が行われましたが,詳細については,外交上のやり取りということでもありますので,これ以上は差し控えたいと思います。

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