記者会見

川村外務報道官会見記録

(平成29年1月18日(水曜日)17時00分 於:本省会見室)

イラク・エルビル領事事務所の設立

【共同通信 林記者】1月1日付でですね,イラク北部のクルド人自治区のエルビル市に領事事務所を設置したということが発表されましたけれども,今回,臨時事務所から領事事務所になるということで,所長以下常駐する形になると思いますけれども,エルビルでの体制強化の狙いとですね,あと今後,どういう役割を期待されるかということについて,ご見解をお願いいたします。

【川村外務報道官】今回のエルビル領事事務所の設立は,邦人保護などの国益確保の観点と,クルディスタン地域を含むイラクとの関係強化を図る上で重要な拠点になり得るという考えに基づくものです。ちなみにイラクのクルディスタン地域には広範な自治権を有する自治政府が存在しており,欧米及び中東諸国などが総領事館などを設置しています。
 クルディスタン地域に日本として新たな拠点を築くことで,クルディスタン地域を含むイラクと多角的な関係を築くことが期待されます。我が国政府としては,クルディスタン地域及びイラクとの一層の関係強化に尽力していきたいと思っています。

日EU・EPA及び日比首脳会談

【中国経済日報 蘇記者】二つお尋ねしたいんですが,一つは日本とEUのEPA交渉,今,報道で出ていますが,実際に交渉の重点エリアはどういうエリアで,それから合意のタイムリミットみたいなものがもしあれば教えてほしいこと。それからもう一方,フィリピンとの安倍総理のフィリピン訪問で,いわゆる,ミサイル云々という話が出たんですけど,官房長官はそれを聞いてないというだけで,実際,外務省はそういう説明はありましたでしょうか。それをお願いします。

【川村外務報道官】最初のご質問,日EU・EPA交渉の現状について,昨年末の岸田外務大臣とマルストローム欧州委員との電話会談において,可能な限り早期の大枠合意を目指すべく,今月速やかに交渉を開始することで一致しています。双方の首席交渉官以下,様々なレベルで電話会議等も活用しながら,間断なく継続的に交渉を行ってきています。その一環として今月17日からブリュッセルで首席交渉官会合を開催しています。分野等につきましては,残された課題として,大枠合意の実施に向けて解決が必要なものとして,主に,物品関税,非関税措置,それから政府調達,サービス,投資,地理的表示,これはGIと略していますが,GIを含む知的財産などがあり,議論を継続しています。今後の閣僚会合等の具体的な予定は決まっていませんが,鋭意,交渉を進めていくことにしています。
 それから,第2問目,日フィリピン首脳会談において,ミサイルの問題が出たのではないかという報道に対する見解ですが,官房長官が言われたとおり,この会談においてミサイル問題が議論されたということは承知していません。

トランプ米国次期大統領

【毎日新聞 田所記者】20日に発足するアメリカのトランプ政権についてなんですけれども,3点お伺いしたいんですけれども,ロシアに対して前向きな姿勢と言いますか,親露反中みたいに報道もされていますけれども,ロシアと接近することの日本への影響をどうご覧になるか。それと,中国と今後対立が強まった場合に,あまり対立が強まり顕在化しすぎても,日本にとって懸念されることではないかと思うんですけれども,そこら辺をどうご覧になるか。それとあと,大統領選中に話していた駐留経費負担増の問題につい,直近で特に発言はないですけれども,今後,出てくる可能性があるわけですが,日本としてどうご覧になっているか。その3点をお伺いしたいんですけれども。

【川村外務報道官】ロシアと関係ですが,米露関係の今後の展開について,日本政府としては注視をしております。ただ,トランプ次期大統領が正式に大統領に就任しているわけではありませんので,トランプ次期大統領の今後の方針等については,コメントすることは控えたいと思っております。ただし,日露関係,我々の日本の対露関係のマネジメント等につきましては,トランプ次期政権とは緊密に意思疎通をしていきたいと思います。
 2問目の中国との関係について,中国とアメリカとの関係の展開によって,日本に影響がどう及ぶか,どう対応するかということですが,アメリカの次期政権の対中政策など,具体的な諸点については,先ほどの対ロシアとの関係と同じように,個別の政策ですので,現時点ではコメントすることは差し控えたいと思います。
 ただ,一般論として,中国を含むアジア太平洋地域の平和・繁栄,これについては引き続き,日本としては米国と緊密に協力していきたいと思っています。特に,東アジアの地域の安全保障環境が厳しさを増しています。そういった中で日米同盟の重要性が一層増しており,トランプ次期政権との間で日米同盟を一層深化・発展させていきたいと思っています。
 最後に,駐留経費の問題ですが,この問題については,トランプ次期政権の立場について予断を持ってコメントすることは,現時点では差し控えたいと思っています。先程も申しましたが,アジア太平洋地域の安全保障環境が厳しさを増しているという状況の中で,日米同盟がアジア太平洋地域の平和と繁栄の礎として不可欠な役割を果たしているということに関し,日本政府としてその認識に変化はありません。ただ,日米安保体制が日米いずれかのみが利益を享受するという枠組みではなくて,米軍の駐留経費についても,日米間で適切な分担が図られるべきものと考えます。現時点の米軍の駐留経費の日本負担については,両政府の合意に基づいて適切に分担されていると認識しています。

【朝日新聞 下司記者】今の関連でお伺いしたんですけれども,先日のトランプさんの会見の際に,日本に対する言及が2か所ありました。主に経済関係の貿易赤字のことだったんですけれども,これについてどのように受け止められたかということをお願いします。

【川村外務報道官】トランプ次期大統領の会見において,貿易赤字の言及があったという報道がありましたが,先程の諸案件と同じように,本件の次期大統領の発言についてのコメントは現時点では差し控えたいと思います。ただ,政府として,活発な貿易投資が日米経済関係の活力の源泉であると考えていますので,トランプ次期政権との間では,日米経済関係の一層の発展・深化を図るための取組を進めていきたいと思っています。

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