記者会見

川村外務報道官会見記録

(平成28年7月6日(水曜日)16時13分 於:本省会見室)

バングラデシュにおける人質襲撃事件関連

【朝日新聞 安倍記者】ダッカの人質事件で,昨日ご遺体が日本に戻られましたけれども,外務省としてご遺族の方に,それぞれお一人ずつ担当を付けているというふうに伺っていますが,今後のご遺族の方への対応策についてお伺いできたらと思います。

【川村外務報道官】今回のダッカ事件につきましては,ご家族のお気持ちが,非常に大事であります。ご家族のお気持ちに寄り添ってできる限りのご支援をしていくため担当を一名ずつ付けました。今後の具体的な対応ぶりにつきましては,それぞれのご家族の方と意思疎通をはかり,それらを十分踏まえて対応させていただきたいと思っております。

【フジテレビ 藤田記者】関連で,バングラデシュ襲撃事件を受けて,一部報道に「テロ対策ユニット」の増強増員などを考えているという報道があるんですけれども,その辺の確認をお願いします。

【川村外務報道官】今般のテロ事件の発生を受けて,総理から国内外のテロ対策に万全を期すようにとご指示がありました。これを受けまして,昨年外務省に設置された「国際テロ情報収集ユニット」を始めとして具体的な体制の強化をはかるべく検討を進めていきたいと思っております。
 今後の具体的な検討の内容については検討を始めていきたいと思っておりますが,今の時点では具体的にどういう形ということを申し上げるという段階にはありませんが,鋭意,進めていきたいと思っております。
 海外の邦人安全確保ということで,領事業務にも資する形でこの体制強化を進めていく必要があると思っております。また,地域,語学の専門家の増強も含めて検討していくということになると思います。

【フジテレビ 藤田記者】具体的なことは申し上げられないということなんですけれども…。

【川村外務報道官】ただ,一つの方向性あるいは分野として,今,最後に申し上げましたようなことが考えられるということであります。

【フジテレビ 藤田記者】規模感というのは,その倍だとか…。30人ぐらいですよね。それがどれぐらいに…。

【川村外務報道官】今後,検討を進めていきたいと思います。

外交青書

【朝日新聞 安倍記者】外交青書が書店にも並ぶようになりました。是非,今回を機によく勉強したいなと思って,内容を見ているところなんですが,各国との関係について,いろんな記述が日本との関係についていろんな表現があるなという,是非,頭の整理としても教えていただきたいんですが,例えば,ロシアと日本の関係は「アジア太平洋地域のパートナー」という書き方をしています。台湾では「密接な人的往来や経済関係を有する重要なパートナー」というふうに書いています。ロシアは「パートナー」で台湾は「重要なパートナー」という書き方ですが,これはロシアと台湾を比較すると,台湾の方をより重視している,緊密な関係だというふうに位置付けているというような理解でいいんでしょうか。

【川村外務報道官】外交青書は対象の国,地域,イシューなどいろいろな切り口で報告を書いているわけです。また,その国との外交政策の方向性についても考えを述べています。外交青書は,非常に幅広い,地域,国,それから政策事項を扱っていますので,一概にA国とB国の表現ぶりの一つ一つを見てどちらが重い,あるいはそうではないかということを判断をするということはどうだろうかと思います。それぞれの国と日本の関係についても相当の字数,ページを割いて,記述をしております。長い歴史も有しております。それらを総合的に見て,関係というものをどう表現するかということからそれぞれ適切な表現を選んでいると思っております。二国間関係を比較するということではなくて,それぞれの国と日本の関係の現状についての判断,認識というのが書かれているとご理解いただきたいと思います。

【朝日新聞 安倍記者】特に,中国だと「重要な二国間関係の一つ」という言い方だったりしますけど,特に「パートナー」という言葉が使われているから,日本との距離が近いとかということでもないということですかね。特に,ランクみたいなものがあるというわけじゃないということでですかね。

【川村外務報道官】外交青書の表現ぶりをもって,国との国との関係に順位を付けるとか,あるいはランクを付けるという趣旨では書かれていないと理解しています。むしろ,それぞれの国と日本の関係は先ほども言いましたけれども,あらゆる分野で種々の動きがあって,それらを総合的に判断をしてどういう関係であるかを表現するかという視点から表現を選んでおります。ご指摘のあった一つの二国間関係を表現する言葉,それは全体の記述の中ではほんの一言でありますけれども,その背景にはいろいろな側面があって,また,それぞれの問題との関係で,関係が緊密であるとか,あるいはこういう問題について議論しているところだとか,いろんなバリエーションを持って表現されているはずだと思いますので,一概に二国間関係を表現する一つの言葉だけを取り上げて,比較するというのはどうかなと思います。

【朝日新聞 安倍記者】例えば,韓国だと去年は「最も重要な隣国同士」でしたが,今年は「戦略的利益を共有する最も重要な隣国」というふうに表現が変わりました。「戦略的利益を共有する」という意味では,例えば去年1年間では,日韓合意なんかもありましたし,非常にそういった動きなんかも反映した言葉かなというふうに思ったんですけど,より何か距離が近づいたのかなという感じがしますが,それはそれでそういうことも盛り込まれているような表現にも思えますけれども。

【川村外務報道官】先ほど申し上げたことと重なる部分がありますけれども,それぞれの国との関係というのも一年間で随分動いたりします。いろいろなことが起きたり,改善があったり,あるいはいろいろな課題が生じたりという流れの中で,判断をすることになりますけれども,日韓関係について言えば,昨年末の慰安婦に関する日韓間の合意が成立したりもしております。日韓関係の現状を言えば,協力関係を深めているということになると思います。それはやはり,総合的な1年の動きを踏まえながら日韓関係をとらえて表現しているということであります。どういう事項があったからこうなった,どういう違いがあるかということよりは総合的に判断しているということであります。

バングラデシュにおける人質襲撃事件関連

【産経新聞 田北記者】一番最初のダッカ事件の対応のところの関連ですけど,結局先ほど報道官が言われたのは,全体の方向性として,やっぱり海外にいる邦人,事業者も含めて全体の対応を強化するというような,報告書じゃないですけど,そういうのをまたやるということが近々決められるわけですか。昨日,大臣,いろいろと対策会議,立ち上げるとか,そういうことを言ったんですけど,それとはまた別として,領事業務の強化という意味で方針を出されるという話なんですか。

【川村外務報道官】まさに総理からご指示があり,さらに大臣のご発言もありました。これにしたがい,打合せや協議をしていくプロセスを取っていきたいと思います。先ほどの「国際テロ情報収集ユニット」を始めとして,どういう強化をするのかというご質問だったので,例えば一つの方向性として地域,語学の専門家の強化とか,あるいは領事業務などにも資する形で体制の強化という方向性を持って,具体的な検討を進めていきたいという趣旨でお答えしました。総理のご指示,大臣のご指示を受けた,具体的な方向性あるいは分野として一つの例を挙げて,今申しましたようなことを考えているということです。

日露首脳会談

【北海道新聞 細川記者】日露交渉についてお伺いしたいんですけども,9月のウラジオでの首脳会談に向けて,6月に最初の高官同士の交渉があったわけですけども,さらに,9月に向けて外務省としてどういう環境を整えておかないといけないというふうにお考えになっているかお聞かせ下さい。

【川村外務報道官】ご指摘のウラジオストックでの会議というのは,「東方経済フォーラム」のことかと思いますけども,ソチで行われた先般の日露首脳会談でも「東方経済フォーラム」への言及というのはありました。ですが現時点で,ウラジオストックにおいて日露首脳会談が行われるということは何ら決まっておりません。そういう前提で申し上げれば,ソチでの日露首脳会談の結果を踏まえてですね,引き続き日露間の関係についてですね,日露双方で協力していくということに変わりはありません。今の時点で,今後予定されている9月初旬のウラジオストックでの会議に向けて,どういう協議会合をするかということを明確に決めているわけではありません。

【北海道新聞 細川記者】その前に,再び高官同士の交渉はあるというふうに考えて良いでしょうか。

【川村外務報道官】ウラジオストックにおいてですか。

【北海道新聞 細川記者】ウラジオストックに向けてです。その間にです。

【川村外務報道官】現時点で具体的にいつ,どのような協議をするかということを決めているわけではありません。

日本人乗船のロシア籍漁船の拘束

【北海道新聞 細川記者】先日カムチヤッカでロシアの船が拿捕されて,日本人が3人が乗っていたという話があって,その後,解放されたということですけども,その3人は日本に戻ったかどうか,もし外務省の方で足取りが分かっていれば教えて下さい。

【川村外務報道官】申し訳ございませんが,本件調べて,後でご報告したいと思います。

(補足説明)ウラジオストクの総領事館員が,7月3日に現地(カムチャツカ)入りしたが,3名の日本人は7月1日に解放されているとの説明を受けた。
 これら日本人3名とは面会できておらず,現時点での所在についても,承知していない。

英国のイラク戦争検証委員会の最終報告書の発表

【毎日新聞 前田記者】今日,イギリス政府の方でイラク戦争の検証に関する最終報告の発表ということだと思うんですけれども,日本政府,日本も外務省も12年ですかね,検証結果発表されていますけども,一部でまだ不十分ではないかという指摘もあったりしますが,改めてこの検証の在り方とか,今後改めて検証するかどうかとか,もしお考えがあれば教えていただければと思うのですが。

【川村外務報道官】本6日,英国の今ご指摘の本件最終報告書を発表する予定だと認識しております。イラク戦争については,その他諸外国でもこれまでいろいろな形で検証は行われてきているわけであります。今回は英国の報告書でありますが,我が国は,イラク戦争にあたっては人道復興支援あるいは後方支援のみを行ってきたわけです。イギリスの本件報告書と,我が国がこれまで自ら行った検証を同列に比較して同列に論じるということは必ずしも適切ではないと考えております。
 その上で,これまでの我が国の総括ないし,考え方をもう一度述べさせていただければ,イラク戦争の核心というのがクウェートに侵攻して国際社会の信用を失っていることにあり,その中で,査察の協力を通じて大量破壊兵器の廃棄を自ら証明すべきであったイラクが,即時無条件の査察受け入れを求める安保理決議に違反し続けた,それで大量破壊兵器の不存在を自ら積極的に証明しなかったということに,イラク戦争の核心があると日本政府としてはこれまで考えてきましたし,そのように公表もしてきました。ですからこの基本的な考え方は現時点でも変更する必要はなく,イラクに対する武力行使ということを支持した我が国政府の判断も含めて,我が国の判断は妥当性を失うものではないと考えています。

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