記者会見
杉山外務事務次官臨時会見記録
(平成28年6月24日(金曜日)15時39分 於:本省中央玄関)
質疑応答
【記者】イギリスのEU離脱が確実となりました。まず,受け止めをお願いします。
【杉山外務事務次官】正式な発表はまだだと思いますけど,6月23日,英国においてEU残留離脱を問う国民投票が行われて,離脱支持が過半数を超えることが確実になったというふうに承知をしています。今後,英国とEUの間で様々な協議が行われると,聞くところによると,2年間協議を行っていくということが決まっていくということだそうですけれども,我が国として,その展開に伴う,我が国及び国際社会への影響につき,注視して,我が国の国益の観点から,適切に対応すべきだと思っています。外交を担当する外務省としても,岸田大臣の指示の下で,外交当局として,適切な対応をすべきものというふうに考えています。いずれにしても,日英両国というのは,基本的価値を共有し,単に貿易・投資といった経済関係だけではなくて,政治・安全保障,その他様々な分野で,強固な友好関係,協力関係にあるということでありますから,日本政府としては,引き続き,日英関係の維持,強化に努め,先ほど申し上げたように,また,EUとの関係がどういうふうになっていくのかということを注視するとともに,外交当局として,適切な対応をしていかなければならないというふうに思っています。
【記者】日本政府としては,これまで残留が望ましいというメッセージを発してきました。にもかかわらず,今回こういう結果を受けたことに対してはどのように受け止めてらっしゃいますか。
【杉山外務事務次官】G7の時に,G7の首脳が,共通した認識を示しましたし,安倍総理も,岸田大臣も,つとに残留が望ましいということは,皆さんにも申し上げたと思います。そういう点からすれば,日本だけではなくて,G7諸国は少なくとも残留が望ましいと思っていたわけですから,こういう結果になったということは,その限りにおいては,残念なことだというふうに思います。
【記者】イギリスには,1,000以上の日系企業があるんですけれども,こうした企業を含めて,日本に与える影響,マイナスというものは,どういうことが考えられますか。
【杉山外務事務次官】これは,先ほど申し上げましたように,第一義的には,投資・貿易・金融,そういった経済的な面で,どういう影響が与えられるか,残留が望ましいと言ったのは,離脱ということになると,良い影響ということにはならないだろうというふうに思ったからなので,当然,一定の影響はそれはあるものだろうと思います。ただ,これはもう公になっていることだと思いますけれど,来週の28日とか29日にEUが理事会を開くわけですし,これに基づいて,英国とEUの間で色んな協議がされて,どういう形になっていくかというのは,いまだその詳細については分かりませんから,具体的にどういうところがどういうことになるのかというのは,もう少しよく情報も収集し,具体的にコンタクトをし,意見も聞き,我々が考え,必要に応じて,きちんと発信をするというか,伝え,その結果最終的にどういうことになるかということを,見極めなければいけないと思いますが,短期的には,決して良い影響が出るということではないと思いますが,今お尋ねのざっと1,000社というのは,これがどうなるのかというのは,もうちょっと,明日明後日ということではないと思いますので,先ほど申し上げたように,外交当局としても,他の関係省庁と,緊密な連絡を取りながら,そして最終的には,大臣,総理の指示を仰いで,対応していくということを申し上げるのに留めるのが,適切だと思います。
【記者】経済にとどまらず,というお話しがありましたが,いわゆる自由民主主義,人権などの価値を共有するG7というグループが国際社会の中で相対的に力を落としていくような懸念というのはありますでしょうか。
【杉山外務事務次官】そこもですね,これから英国とEUが一定の合意をきちっと作っていくんだろうと思うんですけど,どういう形になるかよく見極めた方がいいと思います。ただ,一つ外交関係全般で言えることは,英国はEUの中でかなり重要な地位を占める主要国の一つであったことはおそらく客観的に間違いないと思いますから,その英国がどういう形で離脱することになるかはこれからよく見ていかなければいけないにしても,方向としてEUの加盟国ではなくなるということは,国際政治の関係を見る上で影響がないということはあり得ないので,我々としては悪影響を最小限にするような外交努力は必要だと思いますが,今申し上げたことは一般的な話として申し上げているわけですが,では具体的に何がどうだ,ということについては,先程来申し上げているとおり,今後どういう協議が行われるか,我々がどういう風に情報収集し,また接触するかということによって,具体的なことはもう少ししてからお伝えするべきだと思いますので,今この時点で具体的にこうだというようなことは申し上げられないと思います。
【記者】イギリスは,南シナ海問題で,一時エリザベス女王の馬車に習近平主席が乗ったりした後,次官も行かれたシャングリラダイアローグなどでだいぶ日本やアメリカとも近づいて来たと思うんですが,アジアの安全保障,南シナ海問題に与える影響については。
【杉山外務事務次官】今日この時点でその問題についてどう,というのはちょっと不適切な気がします。全く影響がないと断定もできないとは思いますが,今日この時点で,今の質問と一緒なんですけど,具体的にどうということを申し上げるのは何か分かっていて申し上げられないのではなくて,何かを断定的に言うのは適切ではないので,こういうふうにお答えしています。