記者会見

川村外務報道官会見記録

(平成28年6月1日(水曜日)16時52分 於:本省会見室)

ユネスコ:「世界の記憶」(慰安婦関連資料の登録申請)

【産経新聞 田北記者】今日,ソウルのほうでですね,日本とか韓国,中国とかで作る民間団体の方が,ユネスコの記憶遺産について,慰安婦に関する資料の登録申請をしたという話があるんですが,これに対する日本政府の反応と,これに対してどういうふうに対応していくのかということ,それと併せてですけど,この団体,複数の団体があるんですけど,彼らが申請をしようとしているという話は前からあったと思うんですけれども,手続的に阻止するのは難しかったとは思うんですけども,そこら辺の事前の取組なり対策なりを何かされたのかということを教えてください。

【川村外務報道官】一点目,報道等も含めまして本件申請についてはいろいろな情報がありまして,こちらをフォローしているところでありますけれども,詳細につきましては現在確認中であります。
 それから二点目の,これまでどういう対応をしていたかということですが,慰安婦問題につきましては,昨年末の日韓の政府間の合意があります。ですから,韓国政府に対しましては年末の合意の趣旨を踏まえて,政府として適切に対応するようにと,累次にわたって申入れをしてきたということがあります。日韓,それぞれ昨年末の,まさに外相間の合意にもとづいて,本件を責任を持って実施していくということが重要であるというふうに考えております。本件についても,そのような考え方で対応していきたいと思います。
 あと一点付け加えますと,韓国の本件の共同申請につきましては,韓国の民間の団体が参加したものというふうに承知しております。そう事情はあるのですけれども,先ほど言いましたとおり,日韓それぞれの政府が,昨年末の合意を責任を持って実施していくということが大事であるというふうに考えております。

【毎日新聞 田所記者】今,お答えになった真ん中のところで,韓国政府に対して適切に対応するように,累次申入れをしてきたとおっしゃるのは,この記憶遺産のことを念頭に申入れしたということなのか,それとも,それとは関係なく一般論でというお話なんでしょうか。

【川村外務報道官】ご質問が今回の申請の件ということでありましたので,基本的に今回の申請があり得るということについてのことも念頭に置きながらですね,一般的に,本件に限らず日韓の政府間では,繰り返しですね,昨年末の日韓の政府間の合意というのが,慰安婦問題の解決について,非常に重要な基本でありますので,お互いの政府がきちんと責任を持ってですね,対応するようにということを述べてきたということであります。

【毎日新聞 田所記者】あとですね,今後の対応についておっしゃった言いぶりは,確認する必要もないのかもしれませんが,本件についてもそのような考え方で対応していきたいとおっしゃるのは,合意を責任持って実施するように,改めて韓国政府に申入れるということで良いのですか。

【川村外務報道官】はい,そういうことを念頭に置いてですね,対応していきたいと思いますが,最初に申しましたとおり,今回,種々報道されております共同の申請ということについては,いろいろな情報がありまして,詳細をまず確認したいというふうに思っております。

【読売新聞 森藤記者】その関連で,先ほど,韓国政府に対してというお話があったんですけれども,中国外務省はこの申請を支持するというような表明もされているかと思いますが,中国政府に対して何らかの働きかけというのはしたんでしょうか。

【川村外務報道官】失礼しました。中国政府に対しましてもですね,本件申請を差し控えるように求めてきております。過去の不幸な歴史に過度に焦点を当てるのではなくて,国際社会が直面している共通の課題に未来志向で取り組む姿勢が重要であるというのが,日本政府の考え方であります。このような考え方に基づきまして,当該案件の申請ということが,日中両国の国民感情に良い影響を及ぼさないということが明らかでありますので,これまで中国側に対して,このような申請は差し控えるようにですね,求めてきたという経緯がございます。

【産経新聞 田北記者】韓国政府の方は,一応,日韓合意の主旨を何度かにわたって伝えてきているということで,今回の動きに関しては,全く支援するとかバックアップしているようなものはないんでしょうか。

【川村外務報道官】日韓政府との間では随時,累次いろいろなやり取りということはしてきました。基本的な考え方は繰り返しになりますが,日韓の昨年末の合意を日韓両政府が責任を持って執行していくということにつきるわけですけれども,その中で,いろいろな働きかけ,あるいはやり取りをしてきたということであります。詳細につきましては外交上のやり取りということで,コメントを差し控えさせていただきたいというふうに思います。

三菱マテリアルと中国側被害者による和解合意

【朝日新聞 小林記者】三菱マテリアルの訴訟の件なんですが,和解という結果が出ました。今回,その強制労働に係る問題なんで,政府の見解にも関わるとは思うんですが,今回の和解を受けて,受け止めをお願いします。

【川村外務報道官】三菱マテリアルの今回の発表につきましては,そのようになされたという旨は承知しておりますけれども,本件,民間の,当事者間の自主的な解決ということでありますので,政府としましてはコメントをするということは控えたいと思います。

韓国における徴用工訴訟

【朝日新聞 小林記者】あとですね,韓国でも徴用工をめぐる裁判が継続中であるんですが,この裁判への影響についてはどのようにお考えでしょうか。

【川村外務報道官】今回の件では,和解ということが出ているんですけども,現時点で韓国における徴用工訴訟,いわゆる徴用工訴訟に関連する我が国企業のうち,和解を望んでいるという企業は承知しておりません。ですから,仮定の質問に政府としてコメントをすることは差し控えたいというふうに思います。
 その上で申し上げれば,韓国の旧民間人,徴用工の問題も含めまして,日韓間の財産請求権の問題は,日韓請求権・経済協力協定によって,完全かつ最終的に解決済みであります。また,韓国政府も本件については同様の立場というふうに考えています。

G7伊勢志摩サミット関連

【朝日新聞 小林記者】サミットの件なんですけれども,総理の世界経済を巡る認識の中で,当日の官房副長官のブリーフの中で,総理がリーマンショック前の状況に似ていると述べたと説明があったんですが,昨日の副長官の会見では,そういう発言はなかったと,事実上,取り消されたんですが,実際,その辺のやり取りというのを,改めて外務省としての認識をお願いします。

【川村外務報道官】昨日,世耕副長官が記者会見でお話になったとおりです。本件資料は,安倍総理がG7各国首脳に対して,新たな危機に陥るということを回避するために,適時に全ての政策対応を行うということによって,現在の経済状況に対応するための努力を強化する,こういう必要性について説明するために,用いられたものというふうに理解しております。本件,昨日の世耕副長官の記者会見において,お述べになっているとおりであります。

【朝日新聞 小林記者】リーマンショック前の状況に似ている,という発言はなかったということでいいんですね。

【川村外務報道官】世耕副長官の会見でお話しになっているとおりでありますし,その中身は今,申しましたとおりであります。

日韓,日中間の個人請求権問題

【読売新聞 森藤記者】先ほどの話に戻るんですけれども,今,日韓間の個人請求権の話についても解決済であるというふうに触れられたんですけれども,戦時中の強制連行などに対する賠償をめぐる個人の請求権についての政府の考え方を改めてお伺いしたいんですけれども。

【川村外務報道官】日韓間ですか。

【読売新聞 森藤記者】日韓間だけではなくて,中国を含めた戦時中の強制連行などをめぐる個人請求権について。

【川村外務報道官】まず,韓国についてですけれども,日韓間につきましては,先ほど申しましたとおり,日韓請求権・経済協力協定に基づきまして,個人的な請求権も含めまして,全て解決済という立場であります。
 中国に関しましては,先の大戦に係る,日中間の請求権の問題というくくりでみまして,1972年の日中共同声明発出後,日中間の請求権の問題については,存在をしていないという立場であります。

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