記者会見
城内外務副大臣会見記録
(平成26年10月9日(木曜日)16時33分 於:本省会見室)
冒頭発言
(1)城内副大臣のタイ出張
【城内外務副大臣】先週,タイに公務出張で行ってまいりまして,ちょうど2日,1週間前ですが,タイのバンコクを訪問しまして,プラユット首相と会談しました。
私から日本とタイとの二国間関係をさらに強化していきたい旨を申し上げるとともに,タイが民政復帰に関するロードマップに沿って,民主化を進めることを期待するというように述べるとともに,また,日本企業にとって重要な透明・公正な投資環境の整備改善をぜひやっていただきたい。また,インフラ関係における日本の世界最高水準の技術を積極的に活用してほしいということ。そして,懸案事項であります東日本大震災後の放射性物質に係る食品の輸入規制を,早期に撤廃してほしいというような話をさせていただきました。
プラユット首相からは,日本を含む外国の経験を参考にしながら,着実に民主化を進めていきたいという発言がございました。また,日本企業にとっても公正な投資環境の改善をやります。さらに,食品輸入規制につきましては,可能なものから順次撤廃をしていくということを述べていただきました。そのほかASEANにおける協力関係の強化を含む地域情勢に関する意見交換も行われたところであります。
(2)産経新聞前ソウル支局長の在宅起訴
【城内外務副大臣】皆さんから多分質問が出るのではないかと思うのですが,私から産経新聞の前ソウル支局長が,韓国の検察当局から名誉毀損ということで在宅起訴を受けた件についてですけれども,これに対する見解について述べていきたいと思いますが,本件をめぐりましては,これは多分,官房長官も記者会見で述べられていると思いますけれども,我が国政府として韓国政府に対して累次にわたり懸念を伝え,慎重な対応を求めてきたところであります。今般,産経新聞の前ソウル支局長が起訴されたことは,報道の自由及び日韓関係の観点から極めて遺憾であり,事態を深く憂慮しているところであります。
本日,韓国政府に対しまして日本政府は累次にわたり懸念を伝えたこと,慎重な対応を強く求めてきたにもかかわらず,同支局長が起訴されたことは,繰り返しになりますけれども,報道の自由及び日韓関係の観点から極めて遺憾であり,事態を深く憂慮している旨,厳重に申し入れたところであります。
これがソウル支局長の在宅起訴の件であります。
産経新聞前ソウル支局長の在宅起訴
【産経新聞 山本記者】外務省と政府は,今,城内副大臣がおっしゃられたように,極めて遺憾,事態を深く憂慮という表現を繰り返されていますが,これは抗議には当たらないということでよろしいでしょうか。
【城内外務副大臣】抗議という定義いかんにもよりますけれども,今,申しましたように,かなり強いトーンで,本日,伊原アジア大洋州局長から金元辰韓国大の公使に対しまして,報道の自由及び,日韓関係の観点から極めて遺憾であり,事態を深く憂慮している旨,厳重に申し入れたということが事実でありまして,これが抗議にあたるかどうか,抗議の定義いかんにもよりますけれども,こういう厳重に先方に我が方政府の立場を伝えたということに尽きるのではないかと思います。
【産経新聞 山本記者】重ねて確認させていただきたいのですが,例えばロシアが北方領土で演習をしたとか,中国機が防空識別圏の件で日本のあれと接触,近づいたときとか,そういう場合は例えば抗議という形なのですが,今回,抗議という言葉を使っていないところは,抗議には当たらないということでよろしいのでしょうか。
それとも,抗議をする気持ちはあるのだけれども,外交上の配慮によってこういう表現にとどまっているのか,その辺りはどうでしょうか。
【城内外務副大臣】繰り返しになりますけれども,これは私なりの解釈ですけれども,抗議というのはいろいろな定義にあると思うのですが,事実上,抗議に近い形で厳重に申し入れたということは言えるのではないかと思います。これは,私の個人的な解釈でありますけれども,事実上の抗議に近い形で事態を深く憂慮している旨,厳重に申し入れたということをもって,これが抗議そのものかどうかは別として,事実上の抗議に近いのではないかというのが,私の個人的な見解でありますが,政府としてどうかということは,私の立場で申し上げることはできません。
【朝日新聞 松井記者】事実上の抗議であるにもかかわらず抗議と銘打たなかったのは,やはり韓国との関係が今こういう改善の途上にあるからというようにも思えるのですが,それはいかがでしょうか。
【城内外務副大臣】繰り返しになりますけれども,抗議が何をもって抗議というかどうかは定義にもよると思うのですが,韓国政府に対しては,非常に極めて遺憾であると,事態を深く憂慮しているとことを厳重に申し入れておりますし,官房長官ご自身も,非常に国際社会の常識と大きくかけ離れていると,そういう記者会見の発言もありますので,抗議という定義は別として,かなり強い口調で韓国側に対して事態を深く憂慮しているということを厳重に申し入れたということには全く変わりはないというように思います。
【朝日新聞 松井記者】先ほどの局長から公使への申し入れの際に,例えば前支局長はずっと韓国内に身柄が留めおかれることになってしましますので,それを例えば,どうにかパスポートを戻してこちらに出て来られるようにして欲しいとか,具体的に身柄について何かしら日本政府から要求をされたのでしょうか。
【城内外務副大臣】ひとつひとつのやりとりについては,この場で発言することは控えさせていただきたいと思います。
【共同通信 伊藤記者】韓国側としては,本国にその旨伝えるということですが,もう少し彼らが言ったことについて教えていただけますか。
【城内外務副大臣】韓国側から,日本側からの申し入れの内容は,ソウル,本国に正確に報告するとした上で,本件は韓国の検察当局において,法と原則に基づき捜査を進めた上で取った措置であり,日韓,二国間関係全体とは無関係に取られたものであると,そういう反応があったというように承知しております。
これは,先方の発言をそのまま申し上げたということであります。
【朝日新聞 松井記者】今の二国間関係全体とは無関係ということは,つまり,今後も日韓関係を改善に向けて努力していきたいという,そういった趣旨の向こうからの言葉があったのでしょうか。
【城内外務副大臣】そこはちょっと承知しておりませんが,先方の趣旨は,これはあくまでも,日韓二国間関係ではなくて,まさに司法というか検察の法と原則に基づいて,彼らの主張は,これは法に,名誉毀損にあたる,法に触れているということで,日本とか,どこの国とか関係なくとった措置だというのが,先方の言いぶりだということを今紹介したのであって,もちろん,これをそのまま我々が受け入れるということはできないということでありますが,先方がその旨反応したということは,今お伝えしたところであります。
【朝日新聞 松井記者】今後の日韓関係に影響が懸念されますが,どのようにとらえておられますか。
【城内外務副大臣】いずれにしましても,まさに繰り返し述べているように,日韓関係の観点からのみならず,報道に自由という,これは普遍的な価値ですけれども,そういった観点から極めて遺憾であり,事態を深く憂慮しているという,その我が国の立場を,これからも適切に伝えていくと同時に,韓国との間には難しい問題はありますけれども,意思疎通をしっかり図るべきという立場については特に変わりはありません。
【毎日新聞 福岡記者】事実上の厳重な抗議という表現ですけれども。
【城内外務副大臣】これは私の解釈でありますので。
【毎日新聞 福岡記者】逆にそのような形になったのは,ある意味,司法に問題ですので政府としていかんともしがたいという,そういう側面もやはりあるのでしょうか。
【城内外務副大臣】もちろん,韓国側に司法は司法の問題だと言っておりますが,さはさりながら,報道の自由,あるいは,ある意味人権にも係わる話でありますので,必ずしも,これはあくまでも韓国の司法が判断することであって,我々は全く何らかの形で厳重に申し入れをしては不適切だということには,全くあたらないと思います。というのは,やはり人権とか報道の自由というのは,国境を越えた普遍的な価値でありまして,そこについては,仮に内政干渉だとかそうじゃないということになった場合でも,それにはあたらないというように考えています。
【毎日新聞 福岡記者】そういうものすごく強い抗議ではなくて,若干ソフトになったように感じたのですが,それはつまり司法の問題だから,韓国側としても,,,。
【城内外務副大臣】必ずしもそうではなくて,かなり私はこれははっきりと日韓関係の観点から極めて遺憾だということをはっきり言っているわけですから,報道の自由だけではなくて日韓関係の観点から極めて遺憾であり,しかも事態を深く憂慮しているという,例えば注視しているとかではなくて事態を深く憂慮しているということでもって厳重に申し入れたわけですから,今言ったご指摘は当たらないのではないかと思いますが。
【朝日新聞 松井記者】安倍総理は,例えば森元首相に親書を託して朴槿恵大統領に届けられたり,秋の一連の外交日程の中で,首脳会談をぜひしたいということを韓国側に伝えていたと思いますが,今回の件を受けて首脳会談を開きたいという日本側の意向に何か変化はあるのでしょうか。
【城内外務副大臣】このまさに産経新聞の前ソウル支局長の問題については,今,日本の立場,政府の立場を伝えましたけれども,それはそれとして韓国との間にさまざまな難しい問題がありますけれども,これをもって対話のドアをオープンにするという立場を変えて,今,行われているさまざまなレベルの対話が中止するということではなくて,引き続き対話のドアをオープンにし,さまざまなレベルで先般,次官級協議もあったようですけれども,それは引き続き重ねていくことには変わりません。
ただし,この問題については引き続き,これでおしまいではなくて,日韓関係,報道の自由の観点から極めて遺憾であり,事態を深く憂慮しているという日本の立場については,今後も適切に韓国政府に対してしっかりと伝えていくという立場は変わりません。
【共同通信 伊藤記者】確認ですけれども,今後ハイレベル対話などがあったときには,この問題について日本側から取り上げて話をするということでよろしいですか。
【城内外務副大臣】その点についても,その時々の状況に応じて総合的に勘案しながら,この問題について,当然触れないという選択肢はないと私は理解しておりますので,その時々の状況に応じて日韓二国間関係の問題点の1つとして取り上げられることは,当然可能性は排除されないと理解しております。
日露関係
【共同通信 一之瀬記者】ロシアなのですけれども,先日,プーチン大統領と安倍総理が,バースデーコールということで電話をされまして,11月のAPECで日露首脳会談を目指すということで一致されました。今月のASEMでも声をかけ合うという話もあるようですけれども,ウクライナ制裁でG7と歩調を合わせる中で,かつ,日露の二国間ではこういう動きが出てきていることについて,今後の動きの予想も含めて副大臣,どのように見ていらっしゃいますでしょうか。
【城内外務副大臣】今,ご指摘のあったとおりに,バースデーの電話会談で11月の北京のAPECで首脳会談をやる方向で調整していくということを伝えた。同時に10月16,17日でASEM首脳会合の際に,恐らく何らかの形で言葉を交わす可能性はあると考えておりますけれども,いずれにしましても安倍総理大臣とプーチン大統領とのいろいろなそういった接触の機会を通じて,日露関係のいろいろな課題について議論していくことは,当然これからもやっていくというように考えております。
訪朝団の派遣
【NHK 山崎記者】拉致問題についてお伺いしたいのですが,北朝鮮側から平壌に来ればより詳細な調査の現状を伝えるという呼びかけがあった中で,政府として対応を検討されていると思うのですが,副大臣,拉致問題に副大臣就任前からされている身として,このタイミングで平壌に行くことの是非,副大臣として,あと,この問題に長く携わっていた議員として,どのようにメリットを。
【城内外務副大臣】やはり今,メリット・デメリットおっしゃいましたけれども,今後の対応につきましては,拉致被害者のご家族を初めとする関係各方面のご意見をしっかり聞きながら,調査を前に進める観点から,政府全体でこれはメリット・デメリットとおっしゃいましたけれども,まさにそのとおりで総合的に検討していくことに尽きると思います。現時点では何も決まっていないということであります。
【朝日新聞 松井記者】今の拉致問題についてですが,家族会や救う会などからは,政府に毅然たる対応をというふうに求める声が上がっていまして,どちらかというと平壌への派遣については懐疑的な声も多く上がっています。そういった方々に対してどういうふうに今後,理解を求めていくのでしょうか。
【城内外務副大臣】理解を求めていくか,まだ何も決まっていないわけでありまして,拉致被害者のご家族のご意見もしっかりお聞きしながら,同時に与野党拉致問題対策機関連絡協議会というものも場合によっては立ち上げて,その中の意見も聞きながら,いろいろな意見を総合的に勘案して,最終的に決めるということでありますが,現時点では何も決まっておりません。
【朝日新聞 松井記者】決めるタイミングとしては,例えば家族会からの意見聴取が来週あると思いますが,与野党の協議会を経てからでないと派遣の最終は決定なされないということで理解してよろしいでしょうか。
【城内外務副大臣】そうですね。やはり御家族のご理解,関係各方面のいろいろな意見,ご理解を踏まえてでないと決められないということでありますので,そういった理解でいいのではないかと思います。