記者会見
吉田外務報道官会見記録
(令和3年6月16日(水曜日)15時45分 於:本省会見室)
日韓関係(G7サミットの際の首脳間の接触)
【NHK 渡辺記者】日韓関係でお伺いしたいのですが、G7の場で、日韓の首脳のその接触をめぐってですね、韓国側が言っていることと、日本側が言っていることが大きく食い違っていて、さすがに政府同士の関係で、ここまでその言い分が違っているというのは、どっちが本当のことを言っているのかというのをすごく疑問に感じているんですが、実態として本当に韓国側が主張しているような、事前の打ち合わせとか、そういったものが本当になかったのかどうか、しかるべく人が出張しているというのもあるので、当然、立ち話以上会談未満ぐらいのものは、何か考えていたのではないかと思うのですけれども、それはやはり本当になかったのでしょうか。
【吉田外務報道官】G7首脳会合における日韓首脳間の会談、協議等についての、韓国側で種々報道されている、韓国側の方でいろいろな反応があることについて、お尋ねいただきました。
当方として承知しているのは、日韓両政府が何らかの暫定合意があったであるとか、竹島における訓練を理由にキャンセルしたんだとか、そのようなことが報道されたり、発言されたりしているようですけれども、そのような事実はありませんということを申し上げています。
それからまた、そういったことについて、ありもしない、事実ではないことをあたかもそうであったかのように発信されるというのは、大変遺憾だと思っています。
昨日も外務大臣が記者会見で質問があって、お答えをされていたかと思いますけれども、今回のコーンウォール・サミットは、非常にセッションも多くて、加えてG7以外の国々、これは途中から参加されてきたということもありまして、それからサミット会場というのは、非常に出入りも限られていますし、そういった感染対策上、非常に厳格な行動ルールも求められていたということもあります。
そういった中で、結果として、会談が実施されなかったということでありまして、そこに何か裏があるとか、偽りがあるとか、そういうことはありませんし、現にサミット会場の中で、これは一部国内の報道でも遠隔から撮られた映像が出ていましたけれども、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の方から声をかけてこられたのに対して、菅総理もご夫妻で、非常に礼儀正しく丁寧に挨拶を交わしておられただろうと思います。
ですから、そういうような状況なので、諸般の状況が整わなかったということで、首脳間の会談に至らなかったということに尽きるかと思います。
そういう結果ですので、それを今からさかのぼって、準備があったとかなかったとか、そういうことは言うべきではないだろうと、このように思います。
日韓関係(東京オリンピックの際の文在寅大統領訪日)
【時事通信 越後記者】韓国の関係でお尋ねしますけれども、東京五輪に文在寅大統領がこのタイミングで来日されるというような報道が一部でございます。日韓両政府の調整状況をお伺いしたいのと、仮に来日された場合には、大統領と総理による首脳会談が行われるのかどうか、行われるにあたっては何か条件があるのかどうか、今政府のお考えをお尋ねします。
【吉田外務報道官】オリンピックにおける諸外国の要人の方々、特に首脳の方々、ご出席されるのか、来られるのか、これはこれまでもご説明を何度かさせていただいていると思いますけれども、IOCと各国・地域のオリンピック委員会、NOCと言いますけれども、その間で調整されるという建て付けになっています。
既に、公に、特定の、例えば開会式とかにおいでになるということを言っておられる国もありますけれども、次のオリンピックのホスト国、開催国の首脳であるフランスの大統領とか、そういう例はございますけれども、まだ開会式そのものが1か月以上先ということもありますし、特に首脳の関係では、来られる場合のお迎えするにあたってのセキュリティ対策といったような事情もありますので、これまでにそういった通報のあるオリンピック、IOC等から、あるいはNOC等から、そういう通報のある方がいたとしても、自ら明らかにしておられる要人の方以外は、あるかないかについては、当方としては仮に承知したとしても、お答えをすることは控えなければならないという状況にあります。
そういう状況ですので、お尋ねの韓国の文在寅大統領が、お見えになるのかどうかということは、現時点では、そのようなことを申し上げられるような状況にはありませんし、従いまして、来られた場合に首脳会談をするのかどうかとか、そういったことについては、この時点では仮定の質問ということになりますので、お答えするのは控えたいと思います。
当然、どの特定の国がどうこうということはありませんけれども、オリンピックに来られる要人の方々、もしそういうことになれば、日本としてはホスト国としては歓迎をして、丁寧にお迎えする必要があろうかとは思いますけれども、それぞれの御日程、あるいはそのときの諸般の状況を見ながら、どのような形で国内の日程を組んでいくのかということは、それぞれ今後検討していく、そういう問題だろうと思います。
日韓関係(G7サミットの際の首脳間の接触)
【NHK 渡辺記者】また日韓の続きですけれども、実際、韓国側が言っていることは言っていることとして、聞いた上で、逆に裏返してみると、向こうの事情がどうかというのは当然外務省の担当の人たちも分析されていると思うんですが、いろいろな懸案事項がたくさん日韓にある中で、日本側としても日頃から韓国側が解決策をまず提示すべきであるという姿勢は、もう一貫されていると思うんですが、そういう中にあって、今回向こうとしては、会ってある程度きちんとしたことはしたかったのに、そういうチャンスがなかったということで、大統領がわざわざそのメッセージを出していますけれども、あの辺はつまり向こうとしては、日韓関係を改善したいと、両国関係改善したいという意思の表れがある、意思がそこにあるんじゃないかと、打開したいと思っているんじゃないかというのはあると思うんですが、その辺は、どういうふうに日本側としては分析されているのでしょうか。
【吉田外務報道官】現在の日韓関係、旧朝鮮半島出身の労働者問題、慰安婦問題等など、非常に厳しい状況にあるというのはご案内のとおりです。両国間の懸案解決のために、韓国が責任を持って対応していくことを、我々かねがね、強く求めてきているということであって、いまだもって韓国側からの具体的なお話を待っている、注視しているという状況にあります。
だからといって、では韓国側と対話はしないのかというと、そういうことではありませんで、日韓関係を健全正常な形に戻していくためにも、まずはその外交当局間の意思疎通、これは維持するということでありまして、こういった考え方に基づいて、日韓間の外相会談等というのも行われているということであります。
ただ残念ながら、これまで韓国側に求めてきているような対応が得られていないという状況にあります。従いまして、日韓関係を改善したいという強い意思をお持ちであれば、そういったことに対して、現実に意味のある形でお答えいただく。これが先決ではないかと思います。
それと、先ほどご質問があってお答えしたような、今回のコーンウォール・サミットでの経緯、こういったことと、これは別問題であって、そのような強い意思をお持ちであれば、むしろ内容で答えていただくことが、様々な前進をしていく上での環境醸成になろうかというのが、日本の基本的な一貫した考え方であります。
日韓関係(慰安婦問題に関する日本政府への財産開示命令)
【共同通信 鈴木記者】韓国のソウル中央地裁が、元慰安婦訴訟の確定判決をめぐって、日本側に財産目録を開示するよう命じる決定を出していますが、日本側の対応と見解についてお聞かせください。
【吉田外務報道官】ご質問は日本政府に対して、財産開示命令の決定をソウル中央地裁が命じたという件かと思います。ご質問の件については承知をしていますけれども、これは韓国の国内の司法機関の手続きということですし、この命令に先立つ、本年1月、同じくソウル中央地裁で行われた判決、これに対しては日本政府としては、国際法、日韓両国間の合意に明らかに反するもので、受け入れることができないという立場を明らかにしてきています。
従いまして、今回の手続き一つひとつにコメントはございません。従来から申し上げてきているとおり、日本の先ほど申し上げた考え方に基づいて、韓国に対しては、この国際法違反の状態を是正する、これを引き続き強く求めていきたいと、このように考えているというのが現時点でのお答えです。
日露関係(択捉島北東海域におけるロシアの爆撃訓練)
【NHK 渡辺記者】日露関係ですが、一部の報道で、海上保安庁の航行警報の内容に基づく記事だと思うんですが、北方領土の択捉島と択捉島以北のウルップ島の間の海域で、ロシアが爆撃訓練を行うということで、そういう海域を設定したということですが、これに対して日本としては抗議をしたということですが、その抗議の内容と、それでどんな訓練がそこで行われていることを把握されているのか。16日から18日の毎日5時から朝の5時から夕方の5時までということで設定されているんですけど、そういう内容を含めて把握されているのか、その辺含めて、どういう抗議をしたのかも含めて対応をお聞かせください。
【吉田外務報道官】6月の16日から18日の毎日午前5時から午後5時まで、いずれも日本時間でありますけれども、択捉島沿岸の日本の領海を含む海域において、爆撃訓練が実施されるという情報に接しています。これを踏まえまして、海上保安庁の方から13日に航行警報を出して、警報文とともに地図などが出されているかと思います。
今回の爆撃訓練、我々、高い関心を持って、情報収集に努めていますけれども、このような爆撃訓練は、北方四島におけるロシアの軍備の強化に繋がるものであり、こういった訓練そのもの、それから軍備の強化は、北方領土に対する日本の立場に照らして、受け入れられるものではないということで、外交ルートを通じてロシア側に抗議を行っています。
引き続き、船舶の安全の観点から海上保安庁と連携をして、航行の安全を図るとともに、こういった日本の領土に対する立場に照らして、引き続き毅然と対応していきたいと考えています。
ハワイ沖におけるロシア太平洋艦隊の軍事演習
【NHK 渡辺記者】ロシアの関係ですけど、これは日本のメディアほとんど報じてないんですけど、ハワイ沖でロシアの太平洋艦隊が、かつてない規模の軍事演習を行っていると、巡洋艦ですとか、大型対潜艦、誘導ミサイル兵器搭載のフリゲート艦とか、航空機もたくさん参加してやっているんですけど、だいたいいつも「自由で開かれたインド太平洋」という考えからいきますと、中国の海洋進出という点が非常にクローズアップされているんですが、このロシア太平洋艦隊のこの大規模な訓練というのは、そういった意味からして、日本としてどう捉えているのか、中国とはまた違うものとして見ていらっしゃるのか、その辺のそのFOIPの観点から見て、これは問題にならないのかどうかというのはどうでしょうか。
【吉田外務報道官】まず、ロシアの艦隊の航行、あるいは訓練、特に日本の近隣で行われるもの、それから、このインド太平洋地域で展開されるものについては、この地域の安全であるとか、バランスに関わるものとして、その動向は常日頃から注視はしています。
それについてどのような分析をしているかというのは、それぞれの当局で、鋭意やっているということですが、現時点でどういう評価をするかというのは控えたいとは思います。
関連付けてお尋ねのあったFOIPですが、FOIPは、「自由で開かれたインド太平洋」、この中核は法に基づく国際秩序ということで、我々、日本をはじめとするFOIPを支持する国々が共有している基本的価値観、自由であるとか、人権であるとか、そういった価値観を、このインド太平洋という地域の基盤となるルールにしていくというのが、この構想の内容です。
そういった観点から、例えば特に特定の国を念頭に申し上げるわけではないですが、これまでの既存の国際秩序を、例えば、力でもって変えようとする、現状を変えようとする。そういったことに対しては、一致して声を上げていかなければならない、こういうことであります。
従いまして、どういう国であるかは問わず、そういった観点から、既存の自由で開かれた国際秩序、国際法に支えられた国際秩序、これに対するチャレンジとみなされるような行動、言動があれば、それに対しては、我々は一致して声を上げていくということだろうと思います。
冒頭、お尋ねのあった訓練等については、引き続き注視はいたしますけれども、そういうものであるのかどうかということによって、お尋ねになったFOIPとの関係というものの、関連があるのかないのかというものが変わってくるのかなと、このように考えます。