記者会見
吉田外務報道官会見記録
(令和3年6月2日(水曜日)15時46分 於:本省会見室)
ロシア国境警備局による日本漁船の臨検・連行
【NHK 渡辺記者】日露関係でお伺いしたいと思いますけれども、今、稚内の底引き網漁船が拿捕されて、サハリンのコルサコフ港に入っていると思いますけれども、外務省のサハリンの総領事館が、おそらく間に入っていろいろやっていると思うんですが、現時点でロシア側からどういった違反があったのかとか、その辺の事実関係をどういうふうに、今、外務省として把握していらっしゃるのかということと、あと、解放の見通しとか、その交渉は今どうなっているのか、そこの現状をお願いします。
【吉田外務報道官】ご質問があった日本漁船の事案ですが、発生したのは5月28日ということです。「第百七十二榮寶丸(えいほうまる)」という漁船ですが、まず事案発生当日、外務省の方から、東京のロシア大使館に対しまして、それからご質問いただきましたけれども、ユジノサハリンスクの日本総領事館、それからモスクワの在ロシア日本大使館から、それぞれロシア側に対して、乗組員の健康状態、船体の状況の詳細、解放の見通しなどについて申入れをしたということです。併せて人道的観点から、乗組員及び船体が早期に帰港できるように働きかけを行っています。
ユジノサハリンスク日本総領事館の方で、乗組員の方々と連絡は取れているという状況で、これまでのところ、乗組員全員の健康状態、それから食料であるとか水・燃料等の補給状況に特段支障がある状況にはないことは確認をしています。
サハリン州の国境警備局等は、ロシア側の水域で操業したのではないかというようなことを発表しているやに聞き及んでおりますけれども、この辺のロシア側とのやり取り、それからそういったことの事実関係、これについては関係省庁において確認を行っている状況ですので、これ以上のコメントは控えたいと思います。
解放の見通しですが、特段今、具体的なものが見えているわけではありませんけれども、外務省、政府として早期解決に向けて、全力で対応していきたいと考えています。
日韓関係(慰安婦問題)
【朝日新聞 安倍記者】茂木大臣が31日の参院決算委員会で、日韓の慰安婦合意を念頭に、「率直に申し上げて、韓国によってせっかくのゴールポストが常に動かされる状況がある」というような発言をされています。長年こうした指摘というのはあるわけですが、日本政府としては、現在もこうしたゴールポストが常に動かされるという状況が韓国で続いていると、そういう認識であるということでしょうか。
【吉田外務報道官】ご質問のあった決算委員会での茂木大臣のご答弁、その質問の流れとか文脈とか、私、承知していないものですから、どういう趣旨で言及されたのかについては、定かに承知しておりませんけれども、従来、日韓間に横たわる諸懸案、なかんずく慰安婦に関する合意、これは2015年に両国の政府が不可逆の合意として国際社会にも発表しているものであって、国家間の約束事であるということです。
この2015年の日韓合意が現状どういうことになっているかということは、ご案内のとおりでありまして、そういった状況を惹起した、創り出したのは韓国側です。従いまして、この慰安婦合意をめぐる韓国大法院の判決については、韓国側で、国として責任を持って是正措置をとる、国際法違反、国際約束違反の状況を解消することが必要であるということを、従来かねがね申し上げてきているということであります。
この「ゴールポストが動く」というのは、端的にこの経緯に表れているということでして、こういったことが、慰安婦合意に限らず、旧朝鮮半島出身労働者の問題等においても同様なことが生じていると、こういうことであろうかと思います。従いまして、我々の認識として、そういったものを端的に「ゴールポストが動いている」というふうに表現された、こういうことではないかと、このように推測します。
日韓関係(IOCホームページ・竹島削除要請)
【朝日新聞 安倍記者】韓国に関連して、もう1問伺いたいのですが、東京五輪をめぐって、大会組織委員会の公式ホームページに竹島が表示されているということについて、韓国の日本大使館の相馬総括公使が韓国の外務省に呼ばれて、昨日、抗議を受けたようですけれども、事実関係についてお伺いしたいと思います。また、茂木大臣の今のゴールポストをめぐる発言についても、抗議というのはあったのでしょうか。また日本としてはどういった反論をされたのでしょうか。
【吉田外務報道官】お尋ねのありました、東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会のホームページにおける、聖火リレーのルートを示す地図をめぐる問題かと承知しておりますけれども、韓国側からご質問あったように抗議がございました。6月1日に、韓国外交部のアジア太平洋局長から、在韓国日本国大使館の相馬公使に対して、申入れがあったということです。
これに対しては、当然のことながら、まず竹島は歴史的にも国際法上も日本固有の領土であるということであって、「韓国側が行った抗議は受け入れられない」ということを反論したところです。
なお、この組織委員会のホームページに掲載されている地図は、先ほど申し上げましたけれども、聖火リレーのルートを分かりやすく示すために作成されたもので、純粋に地理的表示ということで、客観的に表記をしているというふうに組織委員会は説明をされていると承知をしております。
お尋ねのあったゴールポスト云々について、やり取りとりがあったかどうかは承知しておりませんので、お答えは控えたいと思います。
新型コロナウイルス(米国による起源の追加調査)
【朝日新聞 安倍記者】バイデン米大統領が新型コロナウイルスの起源について、中国の研究所から流出した可能性に言及して、追加調査を求めたことを明らかにしています。こうした起源を求める姿勢について、日本政府としてはどういった立場なのでしょうか。
【吉田外務報道官】お尋ねのバイデン米大統領、それから米国政府が、ご質問のあったようなことをおっしゃったことは承知をしております。
日本政府としては、まず、この新型コロナウイルスの起源につきましては、将来のパンデミック予防の観点から、迅速かつ独立した、それから専門家主導で、外部からの干渉を受けないウイルス起源の評価が不可欠ではないかというのが基本的立場です。
従いまして、今後、更なる調査が行われて、新型コロナ発生源の解明に繋がることが重要ということでありまして、今後そういった観点からも、我々としても国際社会の努力に協力していきたいと考えております。