記者会見
吉田外務報道官会見記録
(令和3年5月19日(水曜日)15時01分 於:本省会見室)
日米豪印(韓国の関与)
【朝日新聞 安倍記者】今週の米韓首脳会談を前に、韓国ではクワッドについて作業部会の参加など、何らかの形で関与してはどうかとの、そうした主張が出ているようです。日米豪印の枠組みに韓国が参加することの是非について、日本政府としてはどういった立場なんでしょうか。
【吉田外務報道官】明日ですか、米韓首脳会談がワシントンで行われると承知はしています。それとどういう関係があるか分かりませんけれども、いくつか韓国と日米豪印との連携の可能性のような報道が出ているということは承知しています。
一方、これまで日米豪印クワッドの間で、参加国を4か国以外に広げるとか、そういった議論は行われていないというのが実情ですし、報道の真意については定かでありませんけれども、ご指摘のあった、韓国政府から何か打診を受けているといったこともありません。
この日米豪印という取組、これは「自由で開かれたインド太平洋」、これを目指すということで、様々な取組をしているものです。それなりに長い経緯もあることはご存じだと思っています。その4か国の中でも、例えば日米豪とか、日米印とか、あるいは日本が入っていない場合もあるのかもしれませんけれども、そういった3か国などでやっている取組というものもあります。
まずは、そういった中での議論、それから協力、これを蓄積して実践的な協力を幅広く行っていくという中で、考え方を同じくする4か国以外の国々との間でのその連携、これを広めていくというのが当面の我々の考え方でございます。
北京オリンピック・パラリンピック(米国下院議長の発言)
【NHK 渡辺記者】来年の冬の北京のオリンピックを巡って、米国下院のペロシ議長が、ウイグルの人権の問題を踏まえて、外交的なボイコットをしようと呼びかけていますけれども、ウイグルの話はそれとして、相手国のそういった、やっていることが気に食わないということでオリンピックをすぐボイコットしようということで、オリンピックを何かとそういう対象として使うという外交的な発言について、日本政府としてどう考えているのかということと、日本はウイグルの問題、いろいろスタンスがあると思いますが、そうした発言をどう評価しているのかということをお願いします。
【吉田外務報道官】お尋ねのペロシ下院議長のご発言について、報道があることは仄聞はしています。まず一般論で申し上げると、オリンピックやパラリンピックに外国の要人とか首脳が参加することについては、大会の主催者である国際オリンピック委員会、IOC、あるいは国際パラリンピック委員会、IPC、ここが定める国際要人プログラムというものがありまして、これに基づいて、それぞれの国の、あるいは地域のオリンピックの委員会、これは要するに国内の委員会、NOCといいますけれども、あるいはパラリンピック委員会のNPC、これが国際的なIOC、IPCに申請をして、IOC、IPCが認証すると、いうこういう仕組みになっています。
従いまして、そもそもそういったところに首脳が参加する・しないという話は、何らかの普通の国際会議とかイベントとかに、各国政府が自ら独自に判断してその参加・派遣を決めるといった建て付けとは異なるというのが大前提にあります。
その上で申し上げると、北京オリンピック・パラリンピック、北京オリンピックに対する日本政府がどう対応するか、日本政府として、あるいは日本の委員会がどう対応するかということは、特に何か決まったものがあるということはないと認識しています。
やはりオリンピックと、それからパラリンピックというものは、その理念は、国際的な平和の祭典として開催されるというのがモットーだと思っていますので、来るべき北京冬季オリンピック大会も、そのような趣旨に基づいて行われることを期待しているというのが、日本政府の基本的な考え方でございます。
日米豪印(拡大の可能性)
【朝日新聞 安倍記者】先ほどクワッドについて、ご回答いただいてありがとうございました。韓国についての質問でしたけれども、打診を受けていることもないということですとか、また参加国を広げるという議論も現に行われてないということは分かりましたが、例えば、このクワッドのその4か国からメンバーを増やすことであるとか、また新たに作ることになった三つの作業部会がありますけれども、そこにメンバー国以外が参加するということは、このクワッドという枠組みの制度的にはできるものなのかどうか、この点はいかがですか。
【吉田外務報道官】クワッドそのものは、何回かそれぞれの事務レベル、それからここ数年は外務大臣レベル、それから初めて首脳という形で蓄積をしてきているものです。その中で、今ご質問のあった作業部会というものが、直近の会合で設けられることになりました。この作業部会では、それぞれの4か国の中での協力の在り方であるとか、あるいは役割分担であるとか、あるいは目指すべきものであるとか、そういったことを専門的見地から議論していくということが想定されている状況です。
その中にあって、4か国以外の国に呼びかけるとか、あるいは何か参加の希望があるときに、それをどうするかといった議論が、今行われているという状況にはないものと認識しています。何か条約があるとか、プロトコールがあるということではありませんけれども、基本的には先ほど申し上げたような考え方に基づいて、まずは目の前にある、この前、設置された作業部会の作業を鋭意加速していくのが、当面の考え方とご理解いただきたいと思います。
東電福島第一原発ALPS処理水(韓国からの協議の打診)
【NHK 渡辺記者】日韓関係でお伺いしたいんですが、福島東京電力第一原発の処理水の問題を巡って、韓国側が日本との調整を行う協議体みたいなものを作りたいというふうに考えているということで、まだ具体的な、そもそも正式に日本政府に打診があったのかどうか、それは日本としては、そうした場を設けることを受けるのかどうかということですね、その辺の今の調整の状況はどうなっていますでしょうか。
【吉田外務報道官】お訊ねのあったALPS処理水についての、日本と韓国の間で何らかの協議体に関する報道があったというのは承知していますけれども、具体的に、そういう要請があるのかどうかを含めて、まだ現時点では、皆様にご説明できるような状況にはないと認識しています。
他方、韓国政府に対しては、これまで様々な機会、これは要するに外交団に対する説明のような、その他の国が入っているような機会というものもありますけれども、それに限らず、韓国側の関心ということを踏まえて必要な情報であるとか、透明性のある説明であるとか、これは相当程度鋭意やってきています。
従いまして、こういった取組については韓国側の関心を踏まえながら、引き続きやっていくという考え方には変わりありません。
その上で、そのような協議の仕組みが果たして必要なのかどうか、それはそういったやり取りを踏まえながら、考えていくべき問題ではないかと考えています。
中国海警船舶による尖閣諸島領海への侵入
【朝日新聞 安倍記者】尖閣諸島を巡る政府の情報発信の在り方についてお伺いしたいと思います。中国海警の船舶が領海に侵入する度に、官房長官ですとか外務大臣がコメントしていますけれども、ほとんど毎回のように「誠に遺憾で断じて容認できない、海警船舶の活動は国際法違反、外交ルートを通じて厳重に抗議した」という文言になっています。こうした公式見解なのは分かりますけれども、いつも同じような表現を繰り返すというのはなぜなのだろうかという疑問があります。領海侵入を繰り返されているにもかかわらず、こうした同じような表現を繰り返す姿勢であれば、政府の危機感が国内にも海外にも伝わりにくいというふうな議論があるのですが、この点のご認識はいかがでしょうか。
【吉田外務報道官】お訊ねのあった、尖閣を巡る中国の海警船舶侵入に対する対応については、その事案があることについて、まず国内に周知するという観点から発表等を行っていますし、お訊ねのあった官房長官であるとか、外務大臣であるとか、会見等の場でご質問があって、日本政府としてどう対応しているのかというご質問があるのに対して、事実関係をご説明する過程でその内容について明らかにしているということだろうと思います。
当然ながら、日本の固有の領土である尖閣諸島への侵入というのは、国際法に違反する内容を含めて、断固として我々としては対応していかなければいけない。加えて、現場においては、海上保安庁が懸命に域外への退出を求める、体を張った対応しておられるということです。こういった取組については、会見等のやり取りの場では簡潔明瞭に、抗議をしている、それから日本の立場はこうであるということを、繰り返しご説明をしておりますけれども、これは基本的立場が何ら変わりがないということを前提として、それを明らかするために、そのような表現をしているということでありますし、事案の対処そのものにおいては、その時々の状況に応じて最も適切なやり方、それから中国側への抗議についても、その時々の時宜に応じた言い方・申し入れを行っているということです。
こういったものが国際社会に何らかの誤解を招くというご懸念があるとすれば、それは我々としても真摯に受け止めて、より対外発信に意を用いていく必要があろうかと思っていますけれども、これまでもそういった具体的な事案に留まらず、尖閣諸島に関する日本の主権・領土に関する立場、様々な手段で発信をしておりますし、また個別に、各国政府、あるいは各国の然るべき立場の人に対して、直接、具体的実例をもってご説明をしているという努力をしています。こういった取組については、今後も状況を見ながら、更に強化していくことになろうかと思います。