記者会見

吉田外務報道官会見記録

(令和3年5月12日(水曜日)15時45分 於:本省会見室)

台湾との関係(政府関係者の往来)

【朝日新聞 安倍記者】最近話題になりました台湾についてお伺いします。政府は台湾について非政府間の実務関係として維持していくというのが、台湾に向き合う基本的な姿勢だと思いますけれども、今の政府関係者の往来というのは、どの程度可能なのでしょうか。例えば外務省の局長レベルの幹部でも、行き来ができるものなのでしょうか。
 
【吉田外務報道官】今、台湾との関係、外務省における台湾との関係についてお訊ねがありましたけれども、まず台湾との関係は、ご指摘ありましたが、日中共同声明にあるとおり非政府間の実務関係として維持しているということです。
 一方、台湾は日本にとって、自由や民主主義、基本的人権や法の支配、こういった基本的な価値観を共有して、緊密な経済関係、人的往来を有する重要なパートナーです。そういったことから、台湾との非政府間の実務関係ということで、台北にもそのような実務関係を処理する団体があります。
 外務省としては、今言ったような基本的な立場を踏まえて、日台間の交流とか往来であるとか、そういったものに対応してきているということです。
 特に、お尋ねがあったような局長級であるとか幹部がどうしているのかということについて、何か具体的な形があるということではないと思いますけれども、先ほど申し上げたような、日本の立場を踏まえて、適切に台湾との間でのやり取りが行われていると認識しています。
 
【朝日新聞 安倍記者】今、外報官がおっしゃったように、何か具体的な形を設けて制約をしているということではないんだろうと思いますが、例えば最近ですと、米国のアーミテージ元国務副長官が、読売新聞のインタビューに答える中で、台湾の国際的な地位を確保するために、外務省幹部が台湾側と会談するなどということをご提案していましたけれども、例えばこうしたことは現実的なのでしょうか。
 
【吉田外務報道官】アーミテージ元国務副長官のインタビューで述べられたこと、これは一つの有識者として、先般も台湾に実際行かれている方のご意見ということで、そういうものとして受け止めたいと思いますけれども、具体的に、どういうニーズがあって、そういった接触であるとか、会談というものが必要になってくるかというのは、ケースバイケースだろうと思いますし、直ちに現状、そのようなものが必要な状況にあるということでなければ、それを一般論として予断して申し上げるのは、必ずしも適切ではないのではないかと考えます。

中国の政治体制

【朝日新聞 安倍記者】話題が変わるのですが、米国のバイデン大統領は、米国と中国の対立について、民主主義対専制主義という言い方をしています。日本としてはこうした位置づけをどのように捉えているのでしょうか。
 例えば、日本はこれまで中国の力による現状変更ですとか、国際秩序に合致しない行動というものを繰り返し批判してきたわけですが、日本も中国を専制主義というふうに認識しているのでしょうか。
 
【吉田外務報道官】米政府、バイデン政権が中国を唯一の競合相手、競争相手ということを公言して、様々な諸懸案について率直なやり取りをしておられるというふうに認識しています。
 中国をめぐる様々な課題につきましては、先般の日米首脳会談、それに先立ちます「日米2+2」、それから実務レベルを含めた日米間の日常のやり取り、こういったものを通じて、その諸懸案に対する共通の考え方であるとか、懸念であるとか、こういったことについてはしっかりと共有されていると申し上げて差し支えないと思いますけれども、特定の国の体制そのものをどのように定義づけるか、専制主義とか専制政治とか、ターミノロジーとしては、歴史用語として、あるいは社会科の用語として、そういうものがあるのは事実ですけれども、それぞれの様々な国との関係において、特定の国について、そういう体制であるとか、あるいは定義づけをするといったことを、日本としては、これまでもあまり行ってきてはいないと思います。
 従いまして、同じようなターミノロジーを使うということは、恐らくないのだろうと思いますけれども、先ほど申し上げたような、力による一方的な現状変更であるとか、あるいは日本がFOIPであるとか、そういったことで推進をしている自由であるとか民主主義であるとか、法の支配といったような、そういった価値観であるとか、ビジョンであるとか、こういった観点から、中国に対して我々が持っている考え方、こういったことは率直に中国政府に対しても様々なレベルで申し上げていきたいと、このように考えています。

対ミャンマーODA

【共同通信 中田記者】ミャンマーの関係で伺います。茂木大臣が、本日の衆院外務委員会でミャンマーのODAの関係で「日本としてもミャンマーの民主化、人道支援のために様々な取組をしてきた」とおっしゃった上で、「経済発展のために、このままの事態が続いてしまうと、ODAは出せるのかというと、出せなくなる懸念はある。民間企業の投資も、したくてもこんな状況では投資できない。そういったこともしっかり考えるようにミャンマー側にも話をしている」とおっしゃっています。今の時点でのODAを出す・出さないに関する日本政府としての考え方について、一応確認させていただけますでしょうか。
 
【吉田外務報道官】本日の国会でのやり取り、私、ちょっと承知しておりませんので、そういう前提でお話しさせていただきますが、ミャンマーの現状につきましては、これまでも明らかにしてきておりますけれども、日本政府は三つのことを申し上げてきています。そういった中で、一向にクーデター以降の現状が改善の方向に向かない、引き続き、厳しい情勢がむしろ進んでいるという状況にあろうかと思います。
 日本はミャンマーとの関係では、最大のODA供与国として盤石な経済関係を築いてきているのは事実ですし、そのようなことを踏まえて、日本のODAにつきましても、クーデター以降の現状を踏まえれば、新しいODAを更に行える状況にはないということも申し上げてきたかと思います。他方において、これまでの日本の様々な経済協力がミャンマーという国、あるいは、国民の方の生活的な基盤を支えてきたことは紛れもない事実です。
 今後の状況において、我々が従来から申し上げてきているミャンマー国軍に対する要求と、それに対する今後の動向を踏まえながら、総合的にそういったものをどうしていくかということは、不断に考慮していくというのが現状だろうと思います。

日韓関係

【朝日新聞 安倍記者】先日、英国で日韓外相会談が行われました。日韓外相会談も1年以上開かれていなかったわけですけども、日韓関係は非常に厳しい状況が続いていました。この外相会談が行われたことによって、そうした厳しい状況に変化があったと言えるのでしょうか。その点、ご認識を伺えればと思います。
 
【吉田外務報道官】G7外相会合出席のために英国に滞在しておられた茂木外務大臣は、英国時間の5日に、鄭義溶(チョン・ウィヨン)韓国外交部長官と外相会談を行いました。既に概要についてはお知らせしているかと思います。北朝鮮への対応と、地域の安定のための日韓、日米韓の協力の重要性、そういったものについては、改めて一致・確認ができたということですし、両国間の懸案に係る二国間関係について意見交換が行われました。
 現状、日韓関係はかなり厳しい状況にあります。1回の外相会談、これをもってそういった日韓関係の流れが直ちにどうなるかというものでは必ずしもないだろうとは思いますけれども、今回、会談を通して、日本側の考え方を改めてきちんと韓国の外交の責任者に伝えたということと、引き続き日韓関係を健全な関係に戻すために、外交当局間の意思疎通は継続していくということも一致・確認をしたところです。そういった中で、お訊ねの日韓関係の今後について、外交当局間での意思疎通をきちんと図っていきたいと考えます。

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