記者会見
吉田外務報道官会見記録
(令和3年3月10日(水曜日)15時46分 於:本省会見室)
ミャンマー情勢(「外相」の呼称)
【朝日新聞 北見記者】ミャンマーのワナ・マウン・ルイン氏に関して、8日夜、在ミャンマー日本大使館のフェイスブックに、外相として投稿されていたと思います。外相の呼称に関しては、昨日の大臣会見でも使われていたかと思いますが、市民から非難するコメントも上がっている中で、今後、日本政府として外相の呼称を続けていくお考えなのでしょうか。続けるとしたら、それはどういうお考えに基づいてなのか教えてください。
【吉田外務報道官】ご質問の在ミャンマーの丸山大使、現地でワナ・マウン・ルイン外相に申入れを行ったということで、ご指摘のように日本大使館の対外発表にも、そのように記述しています。日本としては、以前から申し上げていますけれども、ミャンマーにおいて人権が保護されて、平穏な社会と民主的な政体が回復し、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて、 ミャンマーとの間で協力が進めていけるような状況になること、これを強く望んでいるわけであります。
加えて、今回のクーデター発生に対しては、ミャンマーの国軍に対して暴力の即時停止であるとか、関係者の解放、民主的な体制の早期回復という3点を、繰り返し強く求めてきているということです。
確かに面会した外相と称するワナ・マウン・ルイン氏の呼称について、様々意見があることは仄聞しております。しかしながら、今申し上げたような目的のために、実際に治安、統治を行っている国軍当局に対して、日本側の考え方、あるいは国際社会の考え方、これをきちんと伝えていくことが、今、非常に重要だというわけであります。
そういったミャンマー側に具体的な行動を求めていく上では、やはり国軍側と意思疎通せざるを得ないということで、そういったチャネルとの間でやり取りを行っているわけであります。
今、ご質問にあった、今後どうするのかということですけれども、そういった働きかけを継続していくと、申入れを実現するといった観点からは、その相手方の呼称については、そういった観点も含めて、今のような表現を使ったということです。しかしながら、ここで強調しておきたいのは、そういった呼称を使っているということが、クーデターが正当であるとか、あるいはミャンマーの当局が行っている暴力を容認する、黙認するといったことには、当然、一切ならないということでありまして、そういったことを改めて強調したいと思います。
【朝日新聞 北見記者】重ねてお伺いします。最後におっしゃっていたところ、クーデターは正当なものとして認めないというお考えに立ちながら、外相と呼称することは、政府として認めているようにも取れる、そういう批判が上がっていることだと思うんですが、そこの矛盾といいますか、そこのところをもう一度ご説明いただけますでしょうか。あと改めて、念のためご趣旨を確認したいんですけれども、今後も外相の呼称は続けていくというご趣旨でよろしかったでしょうか。
【吉田外務報道官】まず、今申し上げた点について、重複するかもしれませんけれども、ご説明申し上げますと、3点、日本側がミャンマー国軍当局に対して求めていることは、様々な国軍につながるチャネルを駆使して、そういった働きかけを行っているわけです。
今回は、中でも対外関係を担当している外務大臣という職を任命された人との間で、申入れを行ったということです。そういった人物をどのように呼称するかということが、直ちに、我々として任命の正当性であるとか、あるいは任命した主体の正当性であるとか、ましてや今回の事態、一連の暴力も含めたものを容認するとか、そういうことではないということを、改めて強調して申し上げているということであります。そのような誤解が生じないように、引き続き留意してまいりたいと思います。
他方で、丸山大使が面会した外相、最近隣国のタイにも訪問して、あるいはインドネシアの外務大臣との間でも会談を行っています。我々は、要するにそういった外交当局の窓口になっている人物に対して、働きかけ、申入れを継続していく必要があるということを総合的に踏まえて、今言ったような対外発表にしているということです。今後どうするかということは、今ご指摘があったことは留意しますけれども、現時点で、そういったことを変更するかどうか、そういったことを決めているということはありません。
【NHK 渡辺記者】ミャンマーの話の関連ですが、軍の発砲とかで亡くなっている方の数も増えてきていますけれども、今日の衆議院外務委員会では、ODAの停止という話ではないということだったのですが、今後何かしら、例えばG7とか、あるいは外報官のコメントとか、そういった形で、よりミャンマーに対して強く日本政府の態度を表明するという形はあるんでしょうか。
【吉田外務報道官】ミャンマー情勢については、当然現地の情勢は刻々と変わっていますし、国際社会の対応も、当然現地の情勢に応じて様々変わっていくだろうと思います。
すでに日本政府として、日本政府の立場を明らかにしていますし、いろいろな節目、あるいは出来事がある度に、我々の考え方についても、改めてお示しをしてきているかと思います。
当然、今重要なことは、デモが継続する中で、ミャンマー当局が暴力を停止し、今の混乱した状況を一刻も早く是正することであろうかと思います。そういった緊迫した状況にありますので、今後どういうふうになっていくかは、現時点では予断を許さない、このように思います。
当然のことながら、状況が悪化する、あるいは非常に重要な状況、重大な状況に立ち至るといった場合には、国際社会あるいは関係国と連携しつつ、日本政府としての考え方もしかるべき形でお示ししていくことになろうかと思います。
日米豪印電話首脳会合
【毎日新聞 青木記者】今日、官房長官の会見で、日米豪印の首脳会議の日程発表がありましたけれども、この4か国の首脳がそろう意義、特に中立を掲げてきたインドがこれに加わることの意義を、どのようにお考えかお聞かせください。
【吉田外務報道官】今日午前に、加藤官房長官が記者会見で、12日の夜、日米豪印の首脳の、初めての、オンラインではありますけれども、テレビ会議に菅総理が出席することを発表しました。
今回は、新政権が発足したバイデン政権の下で、同大統領の呼びかけで開催されるものです。会議の中身としては、現時点で詳細に予断することは控えますけれども、「自由で開かれたインド太平洋」、それから目下喫緊の課題である新型コロナ対策、国際社会の直面する重要課題である気候変動等々のグローバルな課題。それから当然「自由で開かれたインド太平洋」と関連して、4か国が共通の対処の連携を必要とする地域情勢といったことについて議論が行われます。
ご質問のあったインドですが、確かにインドは、歴史的には非同盟・中立という立場をとってきたかとは思います。同時に、インドという国は、このインド太平洋、あるいは世界に冠たる民主主義国家であるということです。「自由で開かれたインド太平洋」というビジョンの重要要素である、法の支配による国際秩序であるとか、自由であるとか、そういった共通の価値感をまさに共有する域内の大国であります。
従いまして、こういったインドが、この4か国の会合、あるいは4か国の連携に加わるということは、大変大きな意味があると思っています。今回の首脳会合、これまでも外相会合等を通じて積み重ねてきた蓄積、そういったものを首脳レベルでも、更に深化させて、具体的な協力に着実に進んでいく、そういった機会にしたいと、このように考えています。
【毎日新聞 青木記者】関連してですが、この4か国の連携については、従前から中国が非常に警戒感を示して発信もしているのですが、そういった対中国という観点から、この4か国の会合はどういうものなのか、対中包囲網という話もあるけれども、それについては外務省としてどう考えているのかをお聞かせください。
【吉田外務報道官】この日米豪印、クワッドなどと呼ばれていますけれども、これまでも外相会合、昨年対面で、それから2月18日にはオンラインでやりました。やはり中心的になっているのは「自由で開かれたインド太平洋」、こういったものの推進で連携をしていくということです。
「自由で開かれたインド太平洋」という構想、ビジョンはこれまでもご説明をさせていただいていますけれども、特定の国を念頭に置いたものではありません。それからまたそれが、何らかの、俗にNATOとかと比較されますけれども、そういった軍事同盟的なものを目指していくというものでもありません。従ってこの同じビジョンを、共有できる国々との間では連携を広げていくということです。
そういった観点からは、すでにヨーロッパ、豪州であるとか、東南アジア、更にはアフリカや中南米みたいな国とも共通の認識が広がりつつあるということです。その中でこの4か国は、「自由で開かれたインド太平洋」において、具体的な協力を推進する国として、これまで様々な連携をしてきているということです。
従いまして、改めて申しますけれども、ご質問のあったような中国であるとか、あるいは特定の国を包囲するとか、あるいはそういったものに対抗するとか、そういったことを念頭に置いたものではありません。
【朝日新聞 北見記者】今のお話に関連して、日米豪印の首脳会合、バイデン政権の下で大統領の呼びかけで行われるという趣旨のご説明があったと思いますが、改めて、バイデン政権発足直後に、このような会合が、米国側から呼びかけられた意義に関して、どのようにお考えなっているか教えてください。
あと、政権交代によって、トランプ政権からバイデン政権に変わったことによって、日米豪印の枠組みにどのような影響を与えているか、お考えがあったら教えてください。
【吉田外務報道官】新しい政権が発足して、それほど月日を置かないうちに、このような形で、オンラインではありますけれども、まず4か国の外相が会議を行い、それに引き続いて、初めて首脳レベルで会合を行うということは、極めて歓迎すべきものだろうと、このように考えております。
このインド太平洋地域というのは、成長も著しい一方において、様々な法による支配に対するチャレンジであるとか、そういった課題が山積している地域でもあります。そういったものに、真正面から取り組む姿勢の表れとして、この日米豪印の会議を呼びかけられたバイデン新政権、その熱意のほどが伺われると認識をしています。
こういった枠組みであるとか、更には日本にとって最重要の同盟国である米国との間で、一層この考え方の推進について連携を深めていくということに、非常に高い期待を持っております。
政権は交代しましたけれども、トランプ前政権との間でも「自由で開かれたインド太平洋」の構想については、日米間で連携を深めてまいりましたし、それから、この日米豪印「クワッド」という会合も、前政権下でも、対面含めて行われてきております。そういった意味においては、こうした連携、それからFOIPといった考え方については、米国の国内において超党派の支持が得られているのではないかと考えます。従いまして、これまでの積み重ねを、着実に他の二国との間でも、連携を深めて深化させていきたいと期待しております。