記者会見
丸山外務報道官会見記録
(平成30年6月20日(水曜日)16時32分 於:本省会見室)
冒頭発言
(1)アベノンシ・ベナン共和国外務・協力大臣の訪日
【丸山外務報道官】現在,アベノンシ・ベナン共和国外務・協力大臣が外務省賓客として訪日中です。本日,河野外務大臣は,アベノンシ・ベナン共和国外務・協力大臣と外相会談及びワーキングディナーを行う予定です。
アベノンシ大臣は今回が初めての訪日となります。河野大臣とアベノンシ大臣は,昨年モザンビークで開催されたTICAD閣僚会合の際にも会談を行っていますが,今回の訪日により,日本とベナンの関係が一段と深まることが期待されます。
(2)日・フィリピン外相会談
【丸山外務報道官】カエタノ・フィリピン共和国外務大臣が19日から20日の日程で訪日中です。本20日,河野外務大臣と外相会談を行いました。
河野大臣は,様々なレベルでフィリピンとの関係を一層強化していきたい旨述べ,カエタノ大臣は,様々な機会に外相同士で意見交換を行い,良好な二国間関係をさらに発展させたい旨述べました。
両大臣は,経済・インフラ,安全保障,治安・テロ分野において,引き続き二国間で協力していくことを確認しました。また,河野大臣からは,海洋安全保障分野における協力を強化していく方針を説明し,カエタノ大臣からは,歓迎の意が表されました。両大臣は,北朝鮮問題や南シナ海を含む地域情勢に関しても意見交換を行い,安保理決議を引き続き厳格に履行していくことで一致しました。
また,本日,日・フィリピン経済協力インフラ合同委員会の第5回会合も開催されました。これらの会合により,両国の「戦略的パートナーシップ」に基づく協力関係が更に強化されることが期待されます。
(3)ジャパン・ハウス
【丸山外務報道官】明日21日,ジャパン・ハウス ロンドンが開館予定です。サンパウロ,ロサンゼルスに続き,3都市目の開館となります。
開館行事には,我が方から薗浦内閣総理大臣補佐官が参加する予定です。一般公開は22日から始まり,オープニングシーズンとして数々の企画が行なわれていきます。
国際的な情報発信のハブであるロンドンに開館するジャパン・ハウスは,日本への深い理解と共感の裾野を英国内外に広げていくことが期待されています。
北朝鮮情勢(拉致問題関連)
【フリーランス 安積氏】米朝首脳会談についてお伺いいたしますが,この時の金正恩(キム・ジョンウン)委員長の発言についてなのですが,萩生田自民党幹事長代行がこの時に,トランプ大統領が拉致問題について言及したときに,金委員長の方から拉致問題は解決済みというような言葉が出てこなかったというふうに言われていますが,外務省の方はこの件について,ほかのルートで何かしら確認されているということはありますでしょうか。
【丸山外務報道官】まず,個別の議員の発言については,一つ一つお答えすることは差し控えたいと思います。拉致問題というのは,トランプ大統領の強力な支援を頂きながら,我が国としても,北朝鮮と直接向かい合って解決していかなければならない問題と考えています。また,ご指摘の点は,総理とトランプ大統領との間のやり取りの詳細ということになりますので,これについて述べることは,私の方からは差し控えたいと思います。
【フリーランス 安積氏】その後に,北朝鮮の方からは,労働新聞とかラジオ,テレビの報道で,拉致問題は解決済みという言葉を何度か確認するように言っているのですが,日本政府としては,北朝鮮は拉致問題は解決済みという主張は変わらないという認識ということでよろしいのでしょうか。
【丸山外務報道官】日本と北朝鮮の間には,2014年5月のストックホルム合意があります。このストックホルム合意において,北朝鮮側は従来の立場はあるものの,拉致被害者を始めとする全ての日本人に関する調査を,包括的かつ全面的に実施する意思を表明しています。それにもかかわらず,北朝鮮がストックホルム合意に基づく調査を開始してから4年近くたつわけですが,今もって全ての拉致被害者の帰国に向けた具体的な進展が示されていない,そういう認識であります。
【フリーランス 安積氏】このストックホルム合意について,確かに示されていないというのはあるんですが,全くこれについて,例えば拉致被害者だけではなくて,日本人妻の問題とか遺骨の問題とかあるんですけど,全く何も示されていなかったんですか。
【丸山外務報道官】先ほど申しましたとおり,現在,4年間経過いたしましたけれど,具体的な進展は何も示されていないということです。
【共同通信 福田記者】総理なんですが,何をもって拉致問題の解決というのかと質問されて,確かフジテレビの番組だったと思うんですけど,要は,即時帰国ということをもって拉致問題の解決というふうに総理は発言されたんですが,2013年日本政府は,拉致被害者の帰国のほかに,真相究明と実行犯の引き渡しということも確か3大方針として掲げていたと思うんですけど,日本政府の方針としては,今現状どうなっているか教えてください。
【丸山外務報道官】我々が考える政府としての拉致問題の解決というのは,拉致問題の解決に向けて,まず一つは,拉致被害者の方々としての認定の有無に関わらず全ての拉致被害者の安全確保及び即時帰国,それから拉致に関する真相究明,それから拉致の実行犯の引き渡し,このために全力を尽くしていく,それはこれまでも累次表明してきたとおりであります。
韓国外交部による「女性と共にする平和」イニシアティブ発足発表
【毎日新聞 田辺記者】今朝,大臣のぶらさがりで康京和(カン・ギョンファ)さんが発言したことについて,必ずしも慰安婦の問題を取り上げることではないというふうな説明でぶらさがりがありましたけれども,ただそうは言っても,現地メディアでは慰安婦について取り上げるんだという報道があったわけで,その辺の齟齬が生じた理由,背景というのはどのようなことがあったんでしょうか。
【丸山外務報道官】まず18日の康京和長官の発言というのがありまして,そこで康長官は国際社会で慰安婦問題が戦時女性性暴行という深刻な人権問題としての位置付けを確保できるよう外交部としてのイニシアティブを発表する,その旨述べられて,要するに,このいわゆるイニシアティブと言われているものと慰安婦問題を明確に結びつけて発言されていました。そういったことから,これは韓国側に対しては,日韓合意に照らしてこの発言は受け入れられない,こういうことを強く申入れた次第です。
他方,このイニシアティブは,その後韓国側は,これは特定国家に対する問題提起ではない,それからこれは日韓合意と関連づけることは適切ではないと,そういったことを対外的にも説明しておられますし,また,外交部の当局者の方からも,これは我が国に対しては,本件は慰安婦問題とは無関係であるという説明があったということで,ですから日本側の考えをこれからも韓国側に伝えながら,イニシアティブなるもの,それから関連の取組を今後も注意していくということですので,昨日の時点での我々の申入れと,今回の大臣のご発言との間に齟齬があるとは考えておりません。
【毎日新聞 田辺記者】大臣の発言と申入れに齟齬があるという意味ではなくて,韓国側の康京和さんの発言と今回の回答,説明に齟齬があったのかということで,今の説明を伺うと,康京和さんの説明が先走ったというのは言いにくいかもしれませんけれども,ちょっと何か踏み越えてしまったということだったんですかね。
【丸山外務報道官】韓国側にご確認いただければと思います。
米国による国連人権理事会からの脱退表明
【フリーランス 安積氏】本日の報道なんですけど,米国が国連人権理事会から離脱するというようなことを発表されたということなんですけれども,日本は北朝鮮の拉致問題を提議する一方で,国連人権委員会の方からは,例えば慰安婦問題とか,その他の報道の自由とか,そういったところの人権侵害のものについて提議されたりもしています。このアメリカの動きについて日本政府としてはどういうふうにお考えですか。
【丸山外務報道官】ご指摘のアメリカ政府の発表は承知しています。これは米政府の決定に基づくものであり,日本政府としてのコメントは差し控えたいと思います。そう申し上げた上で,我が国は国連人権理事会の設立以来,長年にわたりこの理事会の理事国も務めております。また,この理事会が様々な課題に直面しながらも,世界の人権保護・促進に果たしてきた役割を評価しています。我が国としては引き続き国連人権理事会への議論への参加等を通して,世界の人権の保護・促進に取り組む考えであります。