記者会見

報道官会見記録(要旨)(平成23年8月)


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報道官会見記録(平成23年8月24日(水曜日)15時15分~ 於:本省会見室)

中国漁業監視船の尖閣諸島への接近について

【共同通信 斎藤記者】尖閣諸島沖で中国の漁業監視船が日本領海を侵犯した問題についてお伺いします。外務省発表によれば、本日、佐々江事務次官が程永華中国大使にこの件で抗議したということですが、改めて日本政府の立場と、なぜこのような抗議を行ったのか、その背景について改めて説明していただきたいと思います。

【外務報道官】本日、海上保安庁からの連絡によると、中国の漁業監視船2隻が、それぞれ尖閣諸島周辺の我が国の領海に侵入し、その後も接続水域内を我が国の領海に沿う形で航行しているという事案が発生しま
した。
 尖閣諸島は歴史的にも国際法上も日本の固有の領土であり、そういう海域を無害通航とはみなしえない形で2隻の船が航行しているという事態が起こりましたので、これについて抗議を行いました。中国側に対しては外交ルートで抗議を行った他、本日午前中に佐々江事務次官が程永華駐日中国大使を召致し、中国公船の航行は国際法上認められた無害通航とはみなしえず、日本政府として強く抗議する、このような事態が二度と起こらないよう強く求めたいという趣旨を申し入れしました。

【共同通信 斎藤記者】その申し入れに対して、中国側からはどのようリアクションがあったのでしょうか。それからもう一点お伺いします。今お話の中で、今回の中国船の航行は国際法上認められた無害通航とみなしえないということですが、実際こうした航行を行った船に対して、我が国は関係法令によって対処する手立てがあるのか、そして今回はそれを行使したのかしなかったのか、この点についてご説明願いたいと思います。

【外務報道官】中国側の反応については、程永華中国大使からは尖閣諸島に関する中国独自の主張について表明があると同時に、日本側の申し入れについては本国に報告するという話がありました。
 また現場において、日本の海上保安庁の巡視船が中国の漁業監視船2隻に対して、繰り返しこの海域は日本の領海であるので侵入しないようにという警告を行ったにもかかわらず、これら中国船は現場において、尖閣諸島に関する中国独自の主張を行うと同時に、法に則り中国管轄海域において正常な法執行を行っているというような主張を行いました。そのようなことから、現場の状況から判断して、これは国際法上認められた無害通航とはみなしえないということで、日本政府として強く抗議をするに至りました。日本として取り得る措置は現時点では限りがありますが、現場においては海上保安庁の船が当該船舶に対して、繰り返し警告・忠告を与えている状況ですし、外交ルートを通じても日本側の立場について中国側に適切に伝達しているところです。

【毎日新聞 犬飼記者】中国の漁業監視船ということで、中国政府関係の公船が入ってきたのは2008年以来だと聞いております。去年の秋の尖閣事件以来初めてということで、そういった中でさらに日中関係も改善しようというような政府間の確認もあるとは思うのですけれども、そういう中でこういう漁業監視船が入ってきた意図というのはどのように見ていらっしゃるでしょうか。

【外務報道官】中国の漁業監視船が尖閣諸島周辺、特に接続水域に入ってきたのは今回が12回目、おっしゃるとおり領海に入ってくるというのは、ここ一年はなかった事例です。どういう意図で中国の漁業監視船が尖閣諸島周辺に回遊してきているのかというのは日本側として推測するのは難しいところがございますので、その意図については中国側に聞いていただく以外にないと思います。
 いずれにせよ、日中関係は先般の震災に対する中国からの温かい支援を通じて国民レベルでも関係改善の方向がでてきておりましたし、また政府レベルでも明年の日中国交正常化40周年に向けて戦略的互恵関係を一層深化させていこうという努力がなされております。そういう中でこういう事案が良好な方向に発展しようとしている日中関係の妨げにならないように、中国側に対しては日中関係の大局を踏まえた適切な対応を求めていきたいと考えております。

【毎日新聞 犬飼記者】本日の発表文の中で、今外務報道官もおっしゃいましたけれども現場海域において尖閣諸島に関する中国独自の主張を行った他、法に則り中国管轄海域において正常な法執行を行っていると。もう少しこれについてかみ砕いて、例えば正常な法執行というのはどういう意味なのか、あるいは中国独自の主張というのはどういうことなのか、もう少しご説明していただければと思います。

【外務報道官】中国独自の主張というのは、「尖閣諸島は中国の領土である」という主張です。そういう立場に則って中国政府の公船である漁業監視船が中国側の立場に立てば、中国の管轄海域において法執行しているということを主張しているというわけです。これは明らかに日本側の立場と相容れないものですので、その点については日本側の立場を中国側に申し入れたということです。

【読売新聞 小川記者】これまで中国の漁業監視船が接続水域に12回来ているということですけれども、これまで抗議を何度かされていると思います、これまで何回されていたのかということと、もう一つは抗議をしているにもかかわらず、さらに今回は無害通航ではない形で領海に進入してくるということがあるわけですけれども、抗議がどの程度効果があるのか疑問もあるわけですが、外務省としては抗議以上に外交的に何らかの措置をとるような検討はされているのでしょうか。

【外務報道官】接続水域に中国の漁業監視船が入ってくる度に、現場では海上保安庁が航空機や巡視船を通じて警告をしてきております。また、その都度外交ルートを通じても中国側に申し入れをしてきているということです。今回の事案が、さらには同様な事案が再発するような場合にどうするかについては、今後の状況を見ながら対応を検討していくということになると思います。

【NHK 吉岡記者】海保の方からも発表というか説明があるのですが、改めて今朝の事実関係を出来る限り詳しくお願いしたいのですけれども、何か中国船籍は「漁政」という船であったとか、1隻は出たもののもう一度戻ってきたとか、いろいろあるので、可能な限り分刻みでどういう動きがあってそれに対して日本側としてどういう対応や措置をとったのかというのを確認できますでしょうか。

【外務報道官】海上保安庁から発表が既にあると思うのですが、また官房長官も12時の会見の時に詳しく申し上げておられましたが、手元に持っている資料でご説明します。
 本日、8月24日午前6時16分頃、尖閣諸島久場島北北東約30キロメートル(16.3海里)を南南東に向けて航行中の中国漁業監視船「漁政31001」、それから尖閣諸島久場島北北東約33キロメートル(17.6海里)を南南東向け航行中の「漁政201」をそれぞれ海上保安庁の巡視船が確認いたしました。
 「漁政201」については午前6時36分に、また「漁政31001」については同6時44分に、尖閣諸島久場島北北東の我が国領海内に入域して、午前7時9分、それから7時13分にそれぞれ尖閣諸島久場島北東の我が国領海を出ました。また、「漁政201」については、午前7時41分に尖閣諸島久場島東北東の我が国領海内に再入域して、7時48分に出域しました。その後も午後1時30分現在の海上保安庁からの資料によると、この2隻の船は尖閣諸島久場島の我が国接続水域内を領海線に沿って南に向けて、いわゆる時計回りに航行しているということです。海上保安庁は巡視船、航空機により、日本の領海に入らないよう無線等で警告するとともに、監視警戒を続けているという状況です。それ以上の詳細は海上保安庁の方に問い合わせいただきたいと思います。

【共同通信 斎藤記者】佐々江事務次官の発言の中で、今回の中国側の行為について、両国首脳の合意に反するものだと、このように述べられています。ここで指摘している両首脳の合意というのはいつの合意で、どう違反しているとわが方は認めているのか、この部分についてご説明願います。

【外務報道官】ご指摘のあった両国首脳間の合意なるものは、日中首脳はさまざまな機会に戦略的互恵関係の強化、更には東シナ海を平和・協力・友好の海にするという合意をしてきております。最初にこういう合意が行われたのは、2006年10月、安倍晋三総理が訪中し、日中首脳の共同プレス発表が出されたときに、この2つの概念は発表されました。それ以降、福田総理、麻生総理、更に最近では菅総理等々、日中首脳間で会合をする度に戦略的互恵関係を強化していこうということを確認してきていますので、佐々江事務次官が程永華中国大使に申し入れのときに使った両国首脳の合意というのは、そういうものを指しているわけです。

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報道官会見記録(平成23年8月3日(水曜日)15時05分~ 於:本省会見室)

冒頭発言

(1)バーレーンにおける国民対話の終了について

【佐藤外務報道官】中東のバーレーンでは、本年2月から、改革を求める反政府デモと警察治安部隊との衝突が多発し、混乱が続いておりました。そのような中、ハマド国王が幅広い層の国民が様々な問題の解決について話し合うための国民対話を行うとの呼びかけを行い、この国民対話が7月2日(土曜日)から25日(月曜日)に亘って行われました。この国民対話の結果を28日(木曜日)、ザハラーニ国民対話議長が最終報告という形で国王に提出いたしました。これを受けて、ハマド国王はこの対話での合意事項を実施するために必要な手続きを行政府及び立法府に指示しました。
 このような情勢を受けまして、我が国としては、国民対話の実施を前向きな一歩として歓迎いたします。
対話で得られた様々な提言が着実に実施されるとともに、今後とも国民間における様々な意見をより吸収し、国内の改革が実質的に進展することを期待しております。我々としては、引き続き、バーレーン政府による改革の動きを注視していきたいと考えております。

(2)被爆者証言の多言語化について

【外務報道官】広島及び長崎の原爆記念日が近づいてまいりましたが、唯一の戦争被爆国としての経験を国際社会、特に将来世代に語り継ぎ、「核兵器のない世界」へ向けた取り組みを着実に進展させるという我が国の努力の一環として、外務省では「被爆証言の多言語化」事業を行っております。
 具体的には、広島及び長崎の原爆資料館の協力のもと、被爆者の体験記及び証言映像を英語、中国語、ロシア語、フランス語等に翻訳し、本年5月から英語版外務省ホームページに順次掲載しております。本日までに体験記15名分、証言映像11名分を掲載いたしました。今後とも引き続き拡充していく予定です。
 なお、証言映像においては、被爆者が当時の広島及び長崎の様子、被爆後の生活等について語り、核兵器使用の悲惨さや平和の大切さを訴えておられます。
 また、このような我が国の取組みを受けまして、本年7月、国連軍縮部のホームページのトップページに、我が国の外務省ホームページで紹介する被爆証言についてのリンクが貼られました。また更に今後、国連事務局としても被爆証言に関する独自のホームページを作成する予定であると承知しております。

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北東アジア非核兵器地帯構想

【共同通信 明石記者】先ほど、長崎の田上市長が松本大臣に面会し、北東アジアの非核兵器地帯構想の検討を要請しましたが、外務省としては、この構想に対して、賛成・反対、あるいは態度を、どのような姿勢をとっておられるのでしょうか。また、松本大臣は本日、どのような姿勢を示したか、教えてていただきたいと思います。

【外務報道官】外務大臣にそういう訪問があったということは知っておりますが、まだ終わったばかりで内容を聞いておりませんので、内容のコメントは差し控えたいと思います。

【共同通信 斎藤記者】大臣がどういう発言をしたのかはおいて、これまで市民団体とか、あるいは一部の自治体の首長さんたちが主張してきた、いわゆる北東アジアの非核地帯化構想というものについての従来の外務省の基本的な立場というものを説明していただけますでしょうか。

【外務報道官】ご案内のとおり、日本は「核兵器のない世界」を目指して世界的に核軍縮・不拡散を進めていこうという取組みを従来からしています。国連におきましては毎年、国連核軍縮決議を提出し多数の国の賛同を得て採択されてきております。また、つい最近は10ヵ国の外務大臣からなる軍縮・不拡散イニシアチブを立ち上げて、核軍縮の促進に努力してきているところです。具体的に北東アジア地域の核の問題をどうするかという点については、現時点では北東アジア地域にはまだまださまざまな脅威が存在しております。また、日本は日米安保同盟の下、米国の抑止力によって安全を担保されているという面もありますので、この地域の非核地帯化構想をどうするかというのは、さまざまな国際情勢の動向を勘案しながら検討していくという立場でございます。

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世界のコスプレ・サミット2011

【共同通信 下江記者】本日夕方、高橋副大臣のところにコスプレの人たちが世界からくるのですが、特に今年は震災、原発事故が起きて、外交ツールとしての価値もあって外務省も以前からバックアップしていると思うのですけれども、訪日する観光客も減っているとかの状況を踏まえて、今回の意義について基本的なお立場をお聞かせ下さい。

【外務報道官】コスプレ・漫画・アニメ等を含めて、いわゆる日本のポップカルチャーは世界でも大変人気が高く、特に若者を中心に非常にたくさんのフォロアーがいるという状況です。日本の持っている文化の魅力、クール・ジャパンをPRする一つの重要な切り口ではないかということもあって、ほぼ10年くらい前から、コスプレ・サミットとは民間の方が企画している事業ですけれども、外務省としても側面的に支援するという形でやってまいりました。特に今年はご指摘のとおり、福島原発事故等の影響があって、日本に来られる観光客が例年よりは減少気味であるということでもあり、我が国としては、日本は観光の面でも企業活動の面でもオープンである、営業中であるということをPRしたいと考えていますので、そういう我々の努力の方向性から考えるとコスプレ・サミットというのは一つ重要な意義があるのではないかと考えます。

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被爆者証言の多言語化について

【時事通信 西垣記者】冒頭でご発言があった被爆体験の多言語発信のことですが、これは冒頭おっしゃたことにも入っていると思うのですが、唯一の被爆国として今この時点でこういう取組みをすることの意義というのを改めて教えて下さい。

【外務報道官】日本は世界でも唯一の原爆の被爆国とであり、被爆によって非常に悲惨な経験をされた方々がご存命であります。もう70代80代というかなりご高齢になっておられますけれども、生の体験をされた方々が生きておられる間にその体験を語っていただいて、それを世界の人々、特に将来の世代に知っていただくという趣旨から行っているわけです。今の時点で証言記・オーラルヒストリーなどを残して世界の方に知っていただくということが有意義ではないかと考えております。特に英語、フランス語、ロシア語など、いろいろな言語に訳して内外の方に知っていただくということについては、外務省として是非協力・支援をしていきたいということで行っているわけです。

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自民党議員団による鬱陵島訪問計画

【NHK 吉岡記者】 韓国の鬱陵島の問題ですが、松本大臣は在京韓国大使に対して大局的な見地から判断をしていただきたいという趣旨のことを伝えたと思うのですが、東アジア情勢のその大局的なものの見方や状況というものが、もう少し具体的にどういう状況であるから外務省としてはそういった冷静な判断をしていただきたいというように伝えたのでしょうか。もう少し補足的に説明をいただけますでしょうか。

【外務報道官】大局的な観点から考えるべきだという大臣の発言のご趣旨は想像しますに、日本と韓国との関係は二国間という意味でも非常に重要ですし、北東アジアの政治・安全保障・さらには経済関係等々いろいろな視点から見ても非常に重要です。そういう日韓関係が竹島問題をめぐる問題で正常でない状況になるということは非常に残念だという意味で、日韓双方共に、日韓関係の重要性、北東アジア地域、さらには世界における日韓両国の役割等を勘案しながら、大局的な観点から取組むべきであるという意味で「大局的な観点から」と言われたのだと理解しています。

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