記者会見

報道官会見記録(要旨)(平成22年8月)


INDEX






報道官会見記録(平成22年8月25日(水曜日)15時11分~ 於:本省会見室)

冒頭発言

(1)「日本・カリコム公開シンポジウム~気候変動及び生物多様性を中心として~」の開催について

【外務報道官】8月20日付で外務報道官になりました佐藤です。宜しくお願いします。
 私の方から一点ご報告をしたいと思います。日本・カリコム公開シンポジウムの開催です。来る9月2日(木曜日)、国連大学において「日本・カリコム公開シンポジウム~気候変動及び生物多様性を中心として~」を開催いたします。このシンポジウムには、我が国で10年ぶりに開催されます第2回日・カリコム外相会議に出席するために来日されるカリコム諸国の外務大臣の参加を得ながら、カリブ地域の気候変動及び生物多様性についての発表やパネルディスカッション等が行われます。外務省からは吉良外務大臣政務官が出席されます。詳細は8月19日付の報道発表でお配りしたとおりですが、ご関心のある方は是非ご出席いただきたいと思います。

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日韓併合条約

【共同通信 斎藤記者】日韓併合100年の関係ですが、100年前の日韓併合条約について、当時この条約が有効であったか、あるいは無効であったか、これについて国交正常化交渉の当時には激しい議論もあったと聞いております。その後、各内閣が政府答弁書を出したり、あるいは、時の総理大臣が発言されたりしていますが、岡田大臣にも聞いているのですが、改めて、現政権がこの当時の条約の有効性について、如何にご認識されているのか見解を頂きたいと思います。

【外務報道官】日韓併合条約が当時有効であったかどうかということについては、日本政府と韓国政府の間で意見の違いがございますが、日本政府は当時は有効であったと考えております。その後、日韓基本条約が結ばれるときに、日韓両国政府の間で併合条約がもはや有効ではない、もはや無効であるということで合意をしたという経緯があります。従って、我々の理解としては、締結当時は有効であったが、現時点においては、日韓基本条約の締結以降は、もはや有効ではないと考えております。

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報道官会見記録(平成22年8月18日(水曜日)15時00分~ 於:本省会見室)

冒頭発言

(1)藤村外務副大臣のパキスタン洪水被害に関する国連総会特別会合出席について

【外務報道官】8月19日、藤村副大臣はニューヨーク国連本部で開催されるパキスタン洪水被害に関する国連総会特別会合に出席する予定です。
 国連は、パキスタン洪水被害に関し、8月11日に国際社会に対し緊急アピールを発出するとともに、同15日に潘基文(パン・ギムン)国連事務総長が被災地を訪問し、上記の緊急アピールへの早期対応を呼びかけました。今次、国連総会特別会合では、パキスタンの洪水支援に対する政治的意思を強化するとともに、今後の支援のあり方が議論される予定です。
 若干補足しますと、パキスタンにおける今回の洪水の被害の状況ですが、去る7月下旬からパキスタン各地で発生した記録的な豪雨によって、パキスタン北西部のハイバル・パフトゥンハー(KP)州を中心に広範囲で洪水氾濫被害が発生し、現在では、パンジャブ州中南部、シンド州、バルチスタン州にも被害が拡大しているところです。国連の発表によりますと、被害状況ですが、死亡者は1600人以上、被災者は約1400万人を数えると言われています。被害の内容としては、人災がある訳ですが、停電、水不足、給水の問題、通信手段が寸断されていること、あるいは、道路、橋等のインフラが全て破壊されているということです。一言で申し上げれば、ライフラインが殆ど壊滅的な状況にある地域が現在あるということです。これを受けて、先ほど申し上げたように、11日、国連が約4億6000万ドルの緊急アピールを発出しております。現在までのところ、日本政府は、総額1440万ドルの緊急無償資金協力、緊急援助物資、あるいは、ジャパン・プラットフォーム向けの緊急支援を行ってきているところです。日本政府のこの会合への参加については、16日、パキスタンのクレーシ外相から岡田大臣宛に日本政府からのハイレベルの出席依頼の書簡が接到しているということもありまして、そのような一連の動きを受けて、本日、藤村副大臣の今回の特別会合への出席が決まったということです。

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パキスタンの洪水被害

【朝日新聞 山尾記者】パキスタンの洪水被害についてですが、自衛隊のヘリの派遣ということも要請されているようですが、その状況はどのようになっているのでしょうか。

【外務報道官】パキスタン政府からご指摘のとおり、日本のヘリコプター派遣の要請は接到しておりますが、これにつきましては、先週の13日の夜、現地調査のために外務省と防衛省の職員が既にパキスタンのイスラマバードに向けて出発しております。そして、現在まで、現地のニーズ、あるいは、治安状況等についての調査を行っているところです。現地では、関係機関との意見交換、パキスタン側、国連関係機関、いろいろとあると思いますが、今後、まさに支援活動が期待されている地域の現地視察等も行うということで、現地調査を今も継続中ということです。いずれにしても、その結果を踏まえて、政府としての対応を決定するということになると思っております。

【朝日新聞 山尾記者】現地調査に行かれているのは、どちらですか。

【外務報道官】繰り返しになりますが、被災地がいくつか散らばっていると思いますが、その中でパキスタン側が日本政府の貢献を期待しているというところを視察していると了解しております。

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国籍不明の小型機飛行機の墜落

【産経新聞 酒井記者】先日、中国で国籍不明、北朝鮮らしい軍用機が墜落したという事案があったのですが、日本政府としてこれについてどのようにお考えでしょうか。

【外務報道官】報道は承知していますが、特にコメントすることはありません。

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日米安保条約(尖閣諸島での有事の場合)

【産経新聞 尾崎記者】尖閣諸島についてお伺いします。尖閣諸島で他国の攻撃を受けた際に日米安保条約第5条第1項が適用されるかどうかというのを改めて確認したいのと、その場合に日米が協力して対処するのかどうか、公式見解を教えて下さい。

【外務報道官】今、ご質問の尖閣諸島に対する日米安全保障条約第5条の適用に関して、米国政府から方針の変更が伝達されたという事実は一切ありません。オバマ政権成立後も、本件に関する米国の見解は従来のものから変更されていない旨確認を得ております。1960年の日米安保条約第5条において、この条約が日本の施政の下にある領域、つまり尖閣諸島を含めた領域に適用されるということに何ら変わりはないということです。この5条事態ということが発生すれば、日米一緒に対応するということは当然のことだろうと思います。

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ホルムズ海峡沖での日本の原油タンカー損傷事案

【NHK 石井記者】中東のホルムズ海峡の商船三井のタンカーの件ですが、本日、国土交通省で事故調査委員会が設置されたようですが、外務省としての今の段階での見解と、何らかの今後の対応がおありでしたらお聞かせ下さい。

【外務報道官】今ご指摘があったように、本日午前、国土交通省において、第一回ホルムズ海峡タンカー事故原因調査委員会が開かれたと承知しております。従いまして、まさにこの委員会において鋭意、事故原因の究明ということが行われるわけです。当然、外務省はその中のメンバーですけれども、しっかりこの委員会での作業に関与していき、その作業を通じて原因が究明されることを期待しております。今、申し上げられるのは、以上のようなことかと思います。

【NHK 石井記者】ホルムズ海峡で、原油タンカーの損傷被害のような事案が発生していることに対して、受け止めをお願いします。

【外務報道官】ホルムズ海峡での事故ですから、ホルムズ海峡は日本の中東原油、あるいはガスに依存している日本にとってシーレーンの要衝であるわけです。その場所においてこうした事案が発生したことについては、我々はこれを深刻に真剣に受け止めなければいけないということです。どうしてこういう事案が起こったのかということは、しっかりと今究明中ですから、その結果を踏まえつつ、日本だけで解決できる話ではないと思うので、しっかり関係国と連携しながら、あるいは緊密な情報交換をしながら、安全な航行が確保されるように努めていくということです。

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鳩山前総理の第2回ヤロスラヴリ政策フォーラムへの出席

【毎日新聞 西岡記者】本日、北京訪問中の鳩山前総理が記者団の質問に答えて、「自分がやり残した北方領土問題の解決に向けて、9月上旬の国際会議の機会を捉えてメドベージェフ大統領と会談をする」というようなことをお話しになられたそうですが、この会談についての外務省側のサポート体制とか、ロシア側はどのような感じで受け止めているのか、その辺りの見立てを教えて頂ければと思います。

【外務報道官】9月上旬にロシアで会議が開催されるということで、それに鳩山前総理が参加されるということは、私ども承知しております。また、本来、政権交代前に鳩山前総理ご自身が出席を希望しているということもあったと思います。いずれにしても、菅総理の方から鳩山前総理に対して「出席してください」という依頼もあったと聞いておりますので、当然のことながら外務省としてもしっかりサポートするということかと思います。それ以上に、仮にメドベージェフ大統領とお会いになる時にどうかということを、今この時点で外務省としてコメントするのは控えたいと思います。

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報道官会見記録(平成22年8月11日(水曜日)15時30分~ 於:本省会見室)

冒頭発言

(1)岡田大臣の中央アジア訪問について

【外務報道官】岡田大臣が8月7日から10日まで、中央アジアのウズベキスタン及びカザフスタンの2カ国を訪問しましたので、その訪問に関する概要と評価を、簡単に私の方から申し述べたいと思います。ちなみに、私も大臣に同行して、今朝、大臣とともに帰国をしたばかりです。まず、今回の訪問の大きな位置付けということで申し上げれば、4年ぶりの日本と中央アジアとの対話ということです。これは、第3回日本・中央アジア対話外相会合ということで、ウズベキスタンの首都タシケントで7日に開かれました。外務大臣の中央アジア訪問は、6年前の8月、当時の川口大臣がウズベキスタン、カザフスタン、キルギス、それからタジキスタンの4カ国を訪問し、それ以来の訪問になりました。大臣自身は訪問して非常に良かったという感想を持っておられます。
 それから、中央アジアの地政学的な重要性ということも、これは大臣が出張前に、この場でも触れられたことだと思いますが、改めて今回の訪問を通じて、ロシア、中国、イラン、アフガニスタンといった国に囲まれた中央アジア地域の安定というものが、ユーラシア全体の安定につながる問題であるということ、そして、とりわけ、アフガニスタンの現在の状況ということを考えれば、アフガニスタンの平和と安定にとっても、北部に位置するこの中央アジア諸国が重要な役割を果たせる地域であるということが、確認できたということだと思います。この中央アジア+日本の会合については、3回目ということでしたが、中身については日本と中央アジアが一緒になって、岡田大臣の言葉でもあるのですが、日本が触媒として中央アジアの共通の課題に取り組むと、共同で日本も対処すると、そしてまた、日本が触媒役として、この中央アジア地域の域内協力を促進していくと、そういう上で日本としてしっかりと役割を果たすというメッセージを発信をし、それが歓迎されたということかと考えております。ちなみに、今回の対話の最後において、次回の中央アジア・日本対話外相会合は、2012年に東京で開くということも合意が得られたところです。
 それから、二国間関係という文脈で、若干コメントを申し述べますと、日本にとってこの中央アジア地域というのは、申すまでもないことですが、資源・エネルギーの供給地として非常に重要であるということです。とりわけ、ウズベキスタンとカザフスタン、今回の訪問先については、石油、天然ガスはもとより、ウラン、レアメタル、レアアースといった鉱物資源に関する日本企業の関心が大変高まっているということがあります。従いまして、こうした国々との高度な政治レベルでの政治対話を通じて、信頼関係を構築していくということ、さらにはこういった国々がより良好な投資環境を整備してくということを働きかけていくということは、当然、日本の外交政策上、重要なことだと考えております。ちなみに、大臣は、タシケントとアスタナそれぞれにおいて、現地で活動しておられる日本企業の代表者の方々と懇談を持ちまして、その懇談の場で、日本政府に対するご要望も伺い、また政府としての考えについても大臣からも説明をされ、大臣の方からは「是非、中央アジア諸国と日本との貿易投資の拡大に向けて、企業の関係者の方も努力をしていただきたい。政府としても全面的にサポートする」とのやりとりがありました。
 最後に、地域情勢や国際情勢といった問題についてのやりとりも、大臣はしっかり行いました。今回の訪問先では、ウズベキスタンのカリモフ大統領とは1時間40分に亘る時間が費やされ、また、カザフスタンのナザルバエル大統領も30分ということで、外相会談とは別に、こういう形で相手国の最高首脳が大臣と時間をしっかり割いて、二国間問題のみならず、国際情勢等について意見交換をしていただいたということも意義があったと考えております。そして、そうした会談を通じて、先方の首脳から、この過去20年、つまり、ソ連が崩壊して中央アジア諸国が独立をする。独立当初から日本が一貫して国造り、それから民主化・市場経済化支援といったこと、あるいは人材育成といったところで、一貫して支援をしてくれた、支援をしているということに対する感謝の言葉が伝えられたということもありましたし、そこに日本がこの地域に対して払ってきた関心、あるいは努力といったものが評価されているということを、大臣自身がしっかりと感じ、受け止められたのではないかと思っております。また、安保理改革や核軍縮・不拡散といった喫緊の課題、グローバルな課題ということについて意見交換が深められ、日本の立場に対する強い支持といったものを頂いたということがありました。
 いずれにしましても、今回、久しぶりの外務大臣の中央アジア訪問ということであった訳ですが、今申し上げましたような大きな成果があったと思います。それをしっかりとこれからフォローアップしていくということ、引き続き、首脳レベル、外相レベルの政治対話を維持、強化していく必要があるというようなことが言えるのでないかと考えております。

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日韓併合100年に関する総理談話

【共同通信社 斎藤記者】朝鮮王朝の王室儀軌の件でお伺いしたいのですが、先日(7月21日)、外務報道官記者会見でのやり取りの中で、その時点ではいわゆる日韓基本条約締結当時に、請求権問題は消滅しているということで、「現時点においては検討はしていない」とお答えになったと思いますが、その後、談話の中で王室儀軌を返すという話が明記されました。これはどういう方針の変更に当たるのか、そして官邸からどういう形で指示があったのか、その点についての説明をお願いします。

【外務報道官】まず私の7月21日のこの場での答えにつきましては、その時点における認識を述べたものです。そして、昨日、総理がご案内のとおり、総理談話を発表されたということだと思います。今お尋ねの文化財引き渡しの件ですが、これは官房長官もお答えになっていることだと思いますが、まず財産請求権に関する日韓両国、国民間の問題は1965年の日韓請求権並びに経済協力協定により、最終的に解決済みであるということは全く変わりありません。従って、この日本に所在する朝鮮半島由来の文化財については、日本として韓国への引き渡し義務を負っているわけではないという認識もございます。そう申し上げた上で、昨日、まさに総理が閣議決定を経て総理談話を発表されたわけですが、そこにあることに尽きているのだろうと思います。すなわち、日韓関係にとって節目の年である今年2010年ということですが、未来志向の日韓関係を構築していく観点から、韓国の人々の期待に応え、両国の文化協力関係を増進することを目的に、所要の手続きを経た上で、日本が統治していた機関に朝鮮総督府を経由してもたらされ、日本政府が保管している朝鮮王朝儀軌などの朝鮮半島由来の貴重な図書について引き渡しを行うことを考えていると総理は言われたということだと思っております。

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インドにおける洪水(邦人の被害状況)

【読売新聞社 川崎記者】インドのジャム・カシミール州での洪水被害についてお伺いします。日本人で現地にいた可能性のある7名の方の安否を確認しているということですが、現状、どのような状況を把握されているかということについてお聞きします。

【外務報道官】今、ご指摘の洪水事案ですが、8月5日の夜、インド北西部のレイというところで洪水が発生をしたということです。外務省にインドに滞在中のご家族と連絡が取れないでいる、つまり、こういう事案が発生したこともあって連絡が取れていないということで、そういう状況を連絡をしてこられて、外務省が照会を受けたということです。本日午前9時現在で、そうした照会対象者のうち、まだ連絡を取れていない方が7名おられます。そういう状況ですので、我が方のニューデリーの大使館からインド警察に対して、9日にその7名の方に関する情報収集の依頼をしたところです。当然ですが、そうした照会があった方々を含めて、被災地域におられると思われる邦人の方々の所在、被害の有無について、我が方の大使館を通じて確認に最善を尽くしているところです。

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報道官会見記録(平成22年8月4日(水曜日)15時17分~ 於:本省会見室)

冒頭発言

(1)イスラエル国防軍とレバノン国軍との衝突について

【外務報道官】冒頭、私から三点申し述べたいと思います。第一点は、外務報道官談話を発出致します。件名は、イスラエルの国防軍とレバノン国軍との衝突についてです。
我が国は、イスラエル・レバノン国境において、8月3日(火曜日)、交戦が発生したことを深く憂慮します。
この交戦により死傷者が発生したことに遺憾の意を表明します。
 我が国は、暴力の拡大が防がれている現状を認識しつつ、イスラエル・レバノン両国政府が引き続き最大限自制し、安保理決議1701を完全に履行するよう求めます。
我が国は、イスラエル及びレバノン両国が国連レバノン暫定隊「UNIFIL」と呼んでおりますが、UNIFILに完全に協力し、事実関係が明らかにされることを期待します。なお、レバノン、あるいはイスラエルにおける在留邦人の方については被害があったという情報はございませんが、注意喚起等を発出しておりまして、安全の確保には万全を期して参ります。

(2)アインホーン米国務省不拡散・軍縮担当特別顧問の武正外務副大臣表敬ついて

【外務報道官】アインホーン米国務省不拡散・軍縮担当特別顧問が訪日中ですが、本日午前、武正公一外務副大臣を表敬したました。その概要を簡単に申し述べます。
 この表敬訪問においては、二つの問題が取り上げられました。第一は、北朝鮮の問題についてです。武正外務副大臣から、韓国哨戒艦沈没事件を受けた安保理による議長声明発出のための日米の連携を評価した上で、北朝鮮が核放棄等の義務を果たさない限り制裁措置を引き続き着実に実施する必要があり、今後とも日米で緊密に連携していきたい旨述べました。これに対してアインホーン国務省特別顧問からは、「北朝鮮の脅威に対し日米韓が結束し一致したメッセージを送ることが重要である。また、六者会合の再開のためにはまず北朝鮮が非核化に向けた具体的な行動をとることが必要である。今後とも日米が連携して安保理決議に基づく措置を着実に実施していきたい」との発言がありました。
 二つ目の話題として、イランの核問題がございました。これにつきましては、武正外務副大臣から、安保理決議第1929号を履行する我が国の措置に関する8月3日の閣議了解の内容について説明をされ、閣議にて了解された措置以外のイランの核活動・ミサイル開発に関与する個人の入国・通過の防止、イランへの核活動・ミサイル開発に関する物資・技術の移転防止、イランへの大型通常兵器等の供給等の防止、その他のすべての武器の供給の監視・抑制についても、既存の国内法・制度等の厳格な運用等によって実施をしている旨述べました。また、武正副大臣から、安保理決議が要請している措置等については、我が国としてとるべき措置について8月末を目途に結論を得るべく政府部内で検討を行っている旨述べられました。これに対し、アインホーン国務省特別顧問から、安保理決議第1929号の履行に関する我が国の措置を歓迎しつつ、EU等の措置にも言及の上で、国際社会の要請に応えなければ圧力は高まることをイランに認識させるため、国際社会の一致した強いシグナルを出すことが重要であると述べたということです。

(3)ジャナドリヤ祭出展:連絡支援協議会第一回会合開催について

【外務報道官】最後に三点目ですが、日・サウジアラビア関係についてですが、我が国は、来年の2月、サウジアラビアのリヤドで行われる大規模な文化行事であるジャナドリヤ祭にゲスト国として参加をします。
日本政府の関係省庁、あるいは民間企業の協力を得ながらこれに取り組んでいく方針です。東京においては、現地と共にこの事業に取り組み、今週の8月6日、明後日ですが、武正外務副大臣主催の下で、連絡支援協議会第一回会合を開催します。政府関係省庁・機関、経団連等がこの会合に参加をし、我々が参加をする文化行事のコンセプトや具体的内容に関する意見交換を行う予定になっております。なお、先月25日ですが、、現地で政府関係者と邦人企業関係者により総合的に日本を紹介する事業を行っていくための出展準備委員会が立ち上がったところです。若干の補足ですが、このジャナドリヤ祭というのは、1985年から毎年春に約2週間に亘って開催をされております。主催はサウジの国家警備隊、その長官はアブドッラー現国王が務めておられるということです。来年の祭典は2011年2月23日開会ということが決まっております。場所は首都リヤドの近郊の特設会場ということで、そもそもの趣旨というのは、サウジアラビアの伝統・文化の次世代への継承、部族融和等ということですが、2008年から毎年、海外の一ヶ国がゲストとして招待をされるということになっておりまして、そのゲスト国は自らの総合的な文化紹介事業を行っているということです。これまでの行事の中身としては、伝統芸能の実演、伝統芸術品の制作実演、文化講演会等で、来場者は約100万人を超えるということです。ちなみに今回の参加の経緯としては、この5月に国王の親族であられるムトイブ国家警察隊副長官から遠藤在サウジ大使に対し、「日本が次回のゲスト国として参加をするように」ということで招請をうけたということです。これまでのゲスト国は、2008年がトルコ、2009年がロシア、今年はフランス、来年が日本です。

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アインホーン米国務省不拡散・軍縮担当特別顧問の訪日

【共同通信 斎藤記者】アインホーン調整官の件で教えてください。今、局長クラスにも会われているようですが、具体的にどの局長とか、あるいは経産省とか財務省に係る方にも会われるのではないかと思いますが、そうした他官庁が同席している有無も含めて、若干具体例を教えてください。

【外務報道官】政務レベルで武正副大臣がお会いしたということで、事務レベルで具体的に誰がということは控えさせていただきたいと思います。いずれにしても外務省におきましては、それぞれ北朝鮮、あるいはイランに関係する事務方がお会いしているというように私は聞いております。関係省庁のことについては、私の方から述べるのは差し控えたいと思いますが、今回、昨日日本に到着して、本日発たれるということで、この二つの問題について日本側の関係先と精力的に会われたと承知しております。そういうことでご容赦いただきたいと思います。

【共同通信 斎藤記者】ご案内のとおりですと米国は、既に対イラン独自追加制裁に乗り出しておりまして、その中にはいわゆる資金の流れを遮断する、監督する、あるいは資産を凍結する、あるいはそれに協力している、取引に関与している外国企業に対するペナルティも入っているというように、少なくとも報道ではそうなっております。そうすると、日本はイランと国交があるわけで、かなり厳しい、足並みを揃えるということは対イランという関係においてかなり厳しい局面もあるのではないかと思いますが、その辺りをどのように取り組んでいくおつもりでしょうか。外務省の基本的な立場を教えて下さい。

【外務報道官】日本政府のこの問題に対する基本的な立場ということについて申し上げますと、イランの核問題については、核不拡散体制の堅持、北朝鮮の核問題への対応との関係、あるいは中東地域の安定への影響等の観点から毅然とした対応が必要であるというものです。この問題の平和的、外交的解決のためには、これもいつも申し上げていることですが、イラン自身が累次の安保理決議の要求履行に従うことが必要であり、そのため先程のアインホーン・武正会談の中の一致事項でもあったわけですが、国際社会が一致した対応をすることが非常に重要であるということです。そういう意味で、日米も当然、あるいはEUとも基本的な方向においては、しっかり連携をしていくというだと思います。同時にこれも大臣がいろいろな機会を捉まえて言われていると思いますが、制裁をする場合には、その制裁措置が実効的なものでなければならない。すなわち、ある国が制裁をしても、もし抜け道というものがあれば効果は上がらないわけですから、その辺りについての目配りというか、そういうこともしっかりやっていく必要があると思います。それから、二国間関係で経済については、これも昨日、大臣が既にお答えになっておりますが、日本の措置ということについては、それがイランとの経済関係に与える影響については、しっかり我々としても見極めていく必要があると思います。

【NHK 市原記者】アインホーン特別顧問の訪問ですが、米国からは財務相のグレーザー財務次官補代理も来日されているということですが、財務次官補代理も外務省での会談にも同席されたのでしょうか。また、財務省の立場から、具体的な日本の追加制裁の措置の内容について、呼びかけといいますか、働きかけはあったのでしょうか。

【外務報道官】いずれの質問についても、私は答える材料を持っておりません。いずれにしても、日本のイラン制裁、或いは日米連携に関係する方面とは、この2日間という大変慌ただしい日程の中でしっかり連絡は取り合っていると私は聞いておりますので、そういうことでご理解いただければと思います。

【共同通信 斎藤記者】アインホーン米調整官の関係ですが、基本的な日本政府の立場をお伺いしたいのですが、今回、アインホーン調整官が来て、北朝鮮とイランの両方を取り扱っています。率直に言って、日本からすれば、北朝鮮の核は脅威であり、一方、米国にとって非常にイランの核問題は重要であるということです。もちろん、日本からも重要だということは変わらないのですが、それぞれの立場があるのは当然だと思います。そうした中で、イランと北朝鮮の核問題、この2つの異なる国の核問題を議論していく上で、特に米国という国とこの2つの問題で協議していく上で、日本としてはどのような点により力点をおいて、連携を深めていきたいと考えているか。例えば、イランできっちりと連携することによって、それが巡り巡って、米国の北朝鮮を巡る日米連携につながっていくというような戦略的利益をしっかりとつかんでいくのか、それとも、そうではなくて、とりあえずイランはイランでやっていこうということなのか、その辺の戦略的立場といったことについて言及があると有り難いのですが。

【外務報道官】先ほどの斎藤さんのご質問で、基本的なイランに対する立場というときにも触れたと思うのですが、イランの核問題ということに対処する上で、当然日本政府としては、あるいは米国政府もそうですが、北朝鮮の核問題の対応との関係と、そういう対応における一貫性(consistency)というものが、求められていると思います。その点において、日米は全く一緒だと思っております。
 それから、直接の答えにはならないかもしれませんが、私がお答えできることとしては、イランに対する制裁措置というものと、それから北朝鮮に関する制裁措置というものは、それぞれ経緯がある訳ですけれども、違いというものもある訳です。参考までに、差異ということで指摘をすれば、北朝鮮については、化学兵器、生物兵器を含む全ての武器及びその関連物資が輸出入禁止の対象になっているということですが、それに対してイランについては、核ミサイル関連物資、大型通常兵器等が移転等の防止の対象となっているということがあると思います。それから、禁止物品を含むと信ずるに足る情報がある貨物の公海上での貨物検査の話ですが、北朝鮮の場合は、貨物検査に旗国が同意しない場合は、旗国は貨物検査の対象である自国船舶に対して検査のため適当な港に向かうよう指示しなければならないと非常に明確な規定が決議の中に入っている訳です。それに対してイランの場合には、同様の規定は行われていないというようなことがあります。事実関係で違いということを述べましたが、いずれにしても、根本においては、核不拡散体制の堅持ということを、その大目標ということを本当に進めていく上で、日米の連携というのは極めて重要で、その点においては、全く違いというか、立場の相違はないと思っております。

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ホルムズ海峡沖での日本の原油タンカー損傷事案

【AFP通信 長谷川記者】商船三井のホルムズ海峡沖でのタンカーの事件に関して、イスラム過激派から犯行声明が出ておりまして、自爆テロであるということですが、それについて、それと符合するような、例えば、遺体が見つかったとか、自爆テロの攻撃の跡が見つかったとか、そのような情報は入っていますか。

【外務報道官】私もこちらに今、参ります前に、この問題を確認をしてまいりましたが、今のお尋ねの件について、とりあえず日本政府として申し上げられることは、次のようなことです。まず、今ご指摘がありましたが、一部のインターネットサイトで7月28日に発生した日本企業所有のタンカー上の爆発事案について、犯行声明なるものが出されているということは承知しております。他方で、この犯行声明の真偽、信憑性というのは、今の段階では不明です。このタンカーは、現在もアラブ諸国連邦のフジャイラ港に停泊中であって、その原因について引き続き確認中ということです。それが今、この報道について申し上げられることだと思っています。

【ロイター通信 竹中記者】ホルムズ海峡で損傷を受けた日本のタンカーの件ですが、今まだ調査中ということですが、この時点で日本政府として、原因などに関して、事故である、あるいは今回の声明のような人為的なテロによるものである等、何かお考えやおっしゃれるたことがあれば教えていただきたいと思います。もし、テロであるとしたら、どのようなものをターゲットにして、それは会社に対してのものなのか、あるいはホルムズ海峡の通行というもの全体に対してのものなのか、そう言ったようなことも今の時点でお話しできることがあれば、教えていただきたいのですが。

【外務報道官】先程の質問にお答えした以上に手元にお答えする材料もございませんし、それ以上、今、私が軽々にコメントすべき話ではないと思っておりますので、ご理解いただきたいと思います。

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