(問)今日の参院本会議で小泉総理が靖国参拝について、アジアで中国と韓国以外に靖国参拝を批判する国はないと発言をされましたが、これについて何か中韓両国から反応というのは外務省に届いていますでしょうか。
(報道官)今ご指摘の、総理の参議院における答弁について、中国や韓国から何らかの発言があった、あるいは何らかの指摘があったということは存じていません。今の段階で。
(問)ちょっと踏み込んだ話をしますが、報道官として、こういった発言については、一外交官としてで結構なのですが、どうご覧になりますでしょうか。
(報道官)靖国神社参拝問題については、総理が度々、その趣旨は国会でもあるいは他の場でも説明されています。総理としては、現に靖国神社問題についていろいろ指摘をされているのが中国及び韓国であるということを述べたものだと受け止めています。
(問)それに関連してですが、今折しも盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領が靖国参拝の中止を求めていると会見で述べられているのですが、お互いの意見が全く食い違うというか、かたや心の問題と言って他国からの批判は的はずれだと言って、韓国が求めてきているのと全く意見が分かれているわけですが、外務省として、韓国側にどのようにして理解を求めていくというおつもりですか。
(報道官)盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領の発言については我々も承知しています。従来から申し上げているとおり、日韓関係は我々としては極めて重要な関係だと思っていますので、引き続き未来志向的な関係、あらゆる分野での日韓関係の拡大に努めていきたいと考えています。歴史問題については、日韓関係でいくつか意見の相違、そういう問題もありますが、歴史問題についても、韓国側の心情というものを重く受け止めて、我々としては例えば過去に起因する問題についてはできる限り韓国側と協議しながら前進を図ろうと考えています。また、ご承知のように、歴史問題について、日韓間で相互理解を深めることは極めて重要だと考えています。その関連で、日韓歴史共同研究委員会というものもやってきました。その第2ラウンドを開こうということについても、韓国側と合意しています。我々としてはできるだけ早く歴史共同研究委員会についても第2ラウンドを開催したいと思っています。ご承知の通り、今、人選等準備作業を進めています。日本側では小此木慶応大学教授を中心に人選を進めているところですが、このような歴史共同研究などを通じ、歴史問題についても日韓間の相互理解を深めていければと考えています。
(問)アメリカの財務省の当局者が外務省等に来ていて幹部の方といろいろ会談されたようですが、いわゆる北朝鮮のマネーロンダリング問題についてどういった報告があったのでしょうか。
(報道官)財務省のフェーザー次官補代理の件だと思います。外務省でも会談が行われました。これはご承知の通り、マカオにあるデルタ・アジア銀行がマネーロンダリングの疑惑があるということで、その旨、米国の法律に基づいて認定されているわけです。その関連で、主としてまずマカオ当局との協議ということで、マカオ等を訪れたのだと考えています。我々も次官補代理の方から情報を一部頂いていますが、この問題は基本的には第3国の法の執行に関わる問題ですので、詳細については差し控えさせて頂きます。
(報道官)本日は特に私から発表することはありません。
(問)上海の総領事館の件ですが、日本側は抗議されているということですが、その抗議に対して中国側から何か返答はありましたでしょうか。
(報道官)今のところありません。もちろん、会見での中国政府の発表、そういうものはありますが、直接私どもへの回答というものはまだありません。
(問)中国側の会見などを聞くと、日本側と意見の隔たりというのが大きいのですが、今後日本としてはどういう対応を取っていくのですか。
(報道官)私どもとしてはこれからも、どういうことがあったのかということは引き続き照会し聞いていきたいと思いますし、我々の考えではやはり遺憾な行為があったので、その点についての抗議は行っていこうと思います。これを引き続き行っていくということが我々の基本的な立場です。
(問)例えばその回答期限を区切って要求するとかそういう具体的なことはお考えですか。
(報道官)今のところ、引き続き真相究明、そして我々の抗議の気持ちを伝えていくというのが基本的な立場です。
(問)事件後、監察官など、外務省が調査団を派遣したという報道も一部あるのですが、これの事実関係はどうでしょう。
(報道官)この件については、我々もできるだけ可能な範囲で調査をすべきだと考えましたし、また、我々の体制の問題をどう強化できるかという問題もありましたので、その方面でも努力は行っていますし、その観点から、本省からも出張者が出て調査をしたという事実はあります。
(問)今回の金正日総書記の中国訪問について、外務省としても情報等、何かしているのですか。
(報道官)金正日総書記が訪中しているという件については、我々も関係国等から情報収集を行っていますし、様々な情報に接していることは事実です。確定的に確認できているかということであれば、まだ確認までは至っていません。
(問)今回、訪中されてるのは間違いないと思うのですが、いろいろ経済特区ですとか中国南部、どのように見ていらっしゃるかというのは答えられるような話ではないですね。
(報道官)どのような目的かということについて確定的に言うことはできませんが、金正日総書記はこれまでも中国を訪問していますし、様々な視察を行っています。特に経済開発関連で様々な視察はこれまでも行ってきましたし、もしも中国を訪問しているとすれば、そういう観点からの活動を継続していたということは充分考えられます。ただ、我々としても、訪問していたとすれば、具体的にどういうところを視察したか、どういう日程で訪問していたか等については、地道に情報収集をしていきたいと考えています。
(問)日朝協議に関してなのですが、1月末までに3つの協議を開催したいと報じているかと思うのですがその後の調整の方は如何でしょうか。
(報道官)日朝協議については引き続きできるだけ早く開催したいと思っていますし、もしも可能であれば、1月にも開催したいと思っています。ただ、今の段階では、まだ日程は固まっていません。
(問)3つの協議の担当者について、一部、拉致問題を担当していた宋日昊(ソン・イルホ)外務省副局長が、日朝交渉正常化交渉大使になられるという報道もあるのですが、その点についてはどうですか。
(報道官)その報道は私どもも承知していますが、北朝鮮側の人事について確定的に何か我々として言えるかといえば、まだそのような状況ではありません。
(問)日本側については、だいたい固まったのでしょうか。
(報道官)日本側についても、今鋭意調整しています。3つの協議を行うという事で、正常化交渉については原口大使が引き続き担当することになると考えています。ただ、他の2つの協議については、どのような体制で行うかについては調整中です。
(報道官)まず冒頭、私から2点。一つは、リベリア共和国大統領就任式典への総理特使の派遣についてです。これは先程、記事資料をお配りしましたが、わが国は1月16日にリベリア共和国の首都モンロビアで開催される予定のエレン・ジョンソン=サーリーフ大統領就任式典に伊藤外務大臣政務官を総理特使として派遣します。リベリアでは、2003年8月の包括和平合意に従って和平プロセスが進展し、大統領・上院下院選挙が昨年の10月11日および11月8日に実施されました。
その結果、11月23日、サーリーフ女史が新大統領に選出されたことを受けて、今回の大統領就任式が開催されるに至ったものです。リベリアの紛争は、アフリカでは最も長く続いた紛争の一つであり、その終了は平和定着の観点からも重要であると考えています。
また、サーリーフ女史は民選の女性で初の大統領であり、これも民主化プロセスのひとつの象徴であると考えています。わが国は、リベリアにおける持続的和平の達成が、同国のみならずアフリカ全体の平和と安全にとって極めて重要であるとの観点から、これまで同国に対する支援を着実に行ってきています。今回の派遣は、民意によって選出された大統領の下で同国政府による平和の定着・復興開発に向けた努力を支援し、また日本と同国との友好関係を維持・強化していくとの観点から決定されたものです。以上がリベリアの大統領の件です。
第二点は、明日から二日間、外務省新庁舎7階講堂で「新型インフルエンザ早期対応に関する東京会議」が、日本政府とWHO(世界保健機構)との共催で開催されます。約20カ国、ASEAN事務局や欧州委員会、関係国際機関、それにわが国の関係省庁・機関等が参加し、神余国際社会協力部長と外口厚生労働省技術総括審議官が共同議長を務めます。これは、まだ記憶に新しいと思いますが、昨年12月にASEAN+3首脳会議において、1月12日および13日に、WHO(世界保健機関)と共催でアジア諸国、主なドナー諸国および関係国際機関の参加を得て、この会議を開催するということを小泉総理から発言しましたが、これを受けて東京で開催されるものです。私からは以上です。
(問)上海総領事館員の自殺について、今日安倍官房長官が事件発生当時外務省から官邸に報告がなかったと発言していますが、当時官邸には報告を上げていなかったのか、また上げたとすればいつ頃どういう形で上げたのですか。
(報道官)この件については、当初から外務省が主管官庁として中国側等に対して事実関係の確認であるとか抗議をしていまして、外務省として対応しており、官邸には報告していません。
(問)それはどういう判断で官邸の方は。
(報道官)どういう案件を官邸に報告するかということはあると思いますが、この件に関しては、当時この事件が発生し我が方としては中国側に抗議する、あるいは事実関係の確認を求めるという我々の対応を開始したわけで、外務省の責任として行うということで、そういう決定の下に官邸には報告していないということです。
(問)当時大使館や総領事館から外務本省には発生当時報告があったのですか。
(報道官)外務本省にはもちろん報告されています。
(問)以前報道官は記者会見で外務省としては適切に対応したと仰っていますが、情報を官邸に上げなかったことは適切とお考えですか。
(報道官)私どもとしては、こういう事件があって、外務省の職員が関係したわけですが、中国側に対して事実関係の照会、抗議という対応を行っていましたので、外務省として行うべきことはやったと、やっていたとそういう判断です。
(問)確認ですが、発生直後、総領事館または中国大使館から本省には報告があったのですね。
(報道官)それは迅速にあったものと理解しています。
(問)発生が2004年ということで、現在に至るまでずっと伏せていて、報道があるまでは何も表に出なかった、報道がなければこれは表面化せず有耶無耶になったと思いますが、今振り返ってみて外務省の対応は適切であったとお考えですか。
(報道官)この件については我々も事件の当時から中国側には強く抗議していますし、事実関係の確認や究明については申し入れています。我々の職員が死亡したという事件ですので、我々としては中国側に対してはもちろん抗議もし、また事実関係の究明という形で対応していましたが、なぜ公表しなかったのかというご質問であれば、我々としては公表は差し控える、ただし中国側にはきちんと申し入れるという判断でずっと行ってきたわけです。
(問)以前お伺いしたことの蒸し返しになりますが、遺族の意向を尊重して詳細について公表しなかったのは理解できますが、外務省が具体的にいつ抗議したのか、誰が抗議したのかを明らかにできないことと遺族のプライバシーと全く関係ないと思いますが、事件が発生してからいつの時点で誰が抗議したのか明らかにできないのでしょうか。
(報道官)我々が外国との間で交渉したり会談を持つ場合に、色々な機会に色々なレベルで行いますが、個々のやりとりについて必ずしも常に公表していませんし、この件についても、従来からお答えしていることは、中国側に対しては複数回いろいろなレベルで、同じ人だけではないという意味ですが、申し入れもし抗議もしていますが、いつ、誰がということについては差し控えさせて頂きたいということです。
(問)差し控える理由が今ひとつよく分からないのですが。疑心暗鬼を我々に与えてしまう、つまり適切に対応されたというが、ではどの時点で対応したのかはっきり言わないと、その直後、これまでの間にという表現ではっきり言わないと、逆に痛くもない腹を探られるということになるのではないでしょうか。
(報道官)この点については、我々今までも答えてきておりますし、また中国側に対しては先般も改めて抗議と事実関係の確認を求めているわけですし、これからもまたやっていくつもりです。我々としては重要なことは、中国との関係では我々の立場を引き続き申し入れていく、抗議をし事実関係の究明を求めていくことだと考えておりますし、これからもやっていくつもりです。
(問)先程公表しなかった理由について中国側へ抗議していたという話ですが、これは理由になっていないと思いますが、遺族への配慮ということを以前言っていましたが、そういう理由からと考えて宜しいでしょうか。
(報道官)そういうことです。
(問)ただ、私人の場合はそういう理由も当てはまるのでしょうが、この方は電信官で国家機密を取り扱う方で国益が害されたという可能性もあるわけですが、その重要性については認識はないのですか。
(報道官)どういう状況かということは部内で調べましたし、こういう事件の再発防止のための処置もとっていますし、この事件が重要な深刻な事件であるということは十分認識しているつもりです。それを踏まえて調査もし、このような事件の再発防止のための措置は直ちに取った次第です。
(問)具体的にはどういう措置を取ったのですか。
(報道官)各公館に対して安全管理等について改めて周知徹底したということです。ただ、電信等の関係することですので詳細は差し控えたいと思いますが、安全管理について改めて周知徹底したということです。
(問)外務省から官邸に報告したのはいつになるのですか。
(報道官)この件で官邸にご報告したのは報道のあった後です。今正確に何日かと問われれば、いつかということは正確には言えませんが、報道の後です。
(問)それは一部週刊誌の報道した後ですか。
(報道官)そうです。
(問)それまでは全く報告していなかったのですか。
(報道官)そうです。
(問)現地でこの件について中国側から何らかの回答はあったのですか。
(報道官)回答はまだありません。
(問)北朝鮮の話を伺いたいのですが、北朝鮮の金正日総書記が中国を訪問すると報道されていますが、これについて日本政府は確認されていますか。
(報道官)まだ確認していません。私どもも関連情報の収集に努めておりまして、金正日総書記が中国にいるのではないかという情報も入っていますが、まだ中国政府も公式には何も発表していませんし、北朝鮮側も発表していません。まだ確認できる段階には至っていません。
(問)今日、ヒル国務次官補が佐々江局長と六者協議の早期再開に向けて協議するということですが、特にこの段階で日米の間で早期再開に向けて協議すべき事柄というのは何になるのでしょうか。
(報道官)日米間では頻繁に打ち合わせを行っていますし、今の時点ですと、我々としては六者協議をできるだけ早期に開催したいということで、議長役の中国も努力しているところです。ご承知の通り、今、六者協議がいつ開かれるかという見通しは必ずしも立っていない状況なので、六者協議の早期再開に向けて米国と議論し、また中国・韓国と議論していくことがいずれにしても重要だと考えています。そういう観点から、今日、佐々江局長とヒル次官補が今後の六者協議の早期再開に向けて議論するということになっています。
(問)イランが昨日、ウラン濃縮関連の研究活動を再開したということで、外務報道官もコメントを出しておられますけれども、現段階で日本政府はこの問題の安保理付託に対してどういうスタンスなのか教えてください。
(報道官)今の段階では、例えばIAEAの特別理事会を開くか、あるいは安保理へ付託するかということはまだ何も決まっていません。日本政府としては、イランの今の行動は極めて遺憾と考えていますし、今後どういう方法で対応していくのが最も適当かということは関係国と議論していきたいと思います。今ちょうどウィーンではEUの3カ国がこの段取りについて議論していますので、私どもとしてはそのEU3カ国の議論の動向をふまえ、またEUとも連携を取りながら日本政府としての今後の対応というものを考えていきたいと思っています。