記者会見

外務大臣会見記録(要旨)(平成23年10月)


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外務大臣会見記録(平成23年10月4日(火曜日)13時58分~ 於:本省会見室)(動画版他のサイトヘ

冒頭発言

(1)脱北者の移送について

【玄葉大臣】1つは、9月13日に能登半島沖で発見された脱北者9名でございますけれども、政府といたしましては、人道上の見地から適切に対応するという方針の下で、韓国行きを希望する本人たちの意向を踏まえて、韓国側との調整を行ってきたところでございますけれども、これら9名につきましては、4日午前に韓国に向けて出国をしたところでございます。

(2)東南アジア3ヵ国訪問について

【大臣】次に、東南アジア訪問でございますけれども、諸般の事情が許せば、11日から15日までの日程でインドネシア、マレーシア及びシンガポールの東南アジア諸国を訪問する予定でございます。訪問中、各国外相との間で外相会談を行う予定であり、各国首脳等への表敬も調整中でございます。
外務大臣就任後、初めての東南アジア訪問でありますが、我が国の外務大臣として、インドネシアへは2年ぶり、マレーシアは8年ぶり、シンガポールは5年ぶりの単独訪問ということでございます。インドネシアはASEANの議長国ということでございますし、言うまでもなく、マレーシア、シンガポールも経済発展が著しいASEANの主要国であるということであります。
 「開かれた復興」の実現のためにも、また同時に我が国が、いつも申し上げておりますけれども、人口減少の時代に入る中で、アジアの活力を取り込んでいくということは極めて重要な課題になっている中で、今回の訪問を通じて、これらの国々との間で、経済的な互恵関係を深化させたいと考えております。
また、この機会を通じて、開かれた多層的なネットワークをつくる。それらのルールづくりのメカニズムの構築に向けて、11月にASEAN関連首脳会議がございますので、その連携をしっかりと確認をしたいと考えているところでございます。

(3)フィリピンでの鉱山襲撃事件について

【大臣】次に、フィリピンでの鉱山襲撃事件でございますけれども、昨日、ミンダナオ島北部で鉱山プラントの襲撃事件が発生いたしました。ご存じのとおりでございます。現地大使館に対しては、邦人の安全確認とフィリピン政府への安全確保の要請を指示したところでございましたが、昨夜、現地の日本人の方々に人的な被害はなかったという報告を受けて、ほっとしたところでございます。
 なお、昨日夜、改めて事件の詳細把握に努めてほしいということと、さらなる安全確保と再発防止のための措置を取ることを現地政府に申し入れるよう重ねて指示をしたところでございます。私(大臣)といたしましては、今後とも我が国の企業が安心して海外で活動できるように努力をしていきたいと考えております。

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東南アジア3ヵ国訪問

【NHK 吉岡記者】冒頭、大臣のご発言の中で、開かれた多層的なネットワークをつくるとか、ルールづくりのメカニズムの構築、これは先日のフィリピンとの首脳会談の中の共同声明にも出てきた言葉で、最近、東南アジア政策で外務省が打ち出しているコンセプトかとも思うのですが、いま一度、大臣の方からこの意味づけについて具体的に、「多層的なネットワーク」と言われても、なかなか視聴者や読者が聞いて、どういうことを意味しているのかというのがわかりにくいものですから、ご説明をいただきたいのと、なぜ今、日本外交が東南アジアの国々とそうした関係をつくる必要があるのかとか、意義について伺えればと思います。

【大臣】以前、吉岡さんの質問に対して、「日本の死活的な利益とは何か」ということに対して、私(大臣)は端的にお答えをしたというように思います。つまりは、アジア太平洋地域において、民主主義的な価値に支えられた豊かで安定した秩序を構築することが、まず私(大臣)は一番大切な最重要課題であるというように考えています。
 その上で、アジア太平洋地域には不安定要因がさまざま存在をする中で、アジア太平洋地域の安定した秩序をつくるためには、まさに開かれた多層的なネットワーク、これは重層的ということを付け加えてもいいのですけれども、結局、アジア太平洋地域の中で1つは、航行の自由。もう一つは、紛争の平和的解決。更に大切なのは、国際法規の遵守。こういったルールをしっかりつくり上げて、しかもつくり上げるだけではなくて、実行していくということが大切になるというように考えておりまして、そのためには、まさに私(大臣)が言うネットワークというのは、いつも価値の議論が出ますが、単なる自分たちの価値の押しつけということではなくて、むしろ開かれたネットワークですから、このネットワークに魅力を感じて、さまざまな国々がこのネットワークに参加をしてくると。そういうようなネットワークというものを私(大臣)としては構築をしたいというように思っているのです。その一環でもあると。それだけではありません。先ほど申し上げたように、経済の問題を始め、さまざまなことがございます。
 特にインドネシアは、ASEANの議長国でございます。同時に、先般、マルティさんという外務大臣とお会いしたときも、正式な招請がございました。また、マレーシア、シンガポールにつきましては、従来からいわゆる是非来てくださいということの要望がございます。特にマレーシアの場合は、インフラの海外展開の最重点国というように申し上げても過言ではないと思います。
 どうしてもインフラ海外展開というと、私(大臣)も外務省の皆さんに言っているのですが、原発輸出ばかり言うけれども、そうではないと。上下水道も水もあれば、あるいはマレーシアについてはそれだけではなくて、通信のインフラなどもございますし、さまざまあります。あるいはETCなどもそうかもしれません。あるいはこれからは私(大臣)は、マレーシアに限らず、どこの国もそうですけれども、昨日もエネルギー・環境会議で発言しましたが、環境技術に関連するインフラというものをどう売り込んでいくかということを真剣に考えなければいけないというように思っていまして、そういったことを展開する最重点国の1つだということもあります。
 同時にTPPの問題もシンガポールもマレーシアも参加をしていますので、そういう意味では、意見交換をしっかりとしていくということは大切なことだと思っておりますので、この時期に訪問するということは、私(大臣)自身は最も適切な時期かなと考えているところでございます。

【NHK 吉岡記者】今のお話の中で経済のお話に行かれる前に価値の話がありましたが、この間のフィリピンとの共同声明にあるように、民主主義とか市場経済といった価値を共有する国とそういったネットワークをつくっていくのだということをおっしゃっているのだと思うのですが、どうしても私たちが聞いていますと、その概念というのがやはり中国あるいは極東に影響力を拡大しようと見られているロシアとか、私たちとは異なる政治体制を持った国を意識して、そういう政策を進められているのかなというように私たちには受け止められるのですが、中国あるいはロシアといった国々との関係というのは、この開かれたネットワークとかルールメイキングというのはどう関わってくるのでしょうか。

【大臣】一言で申し上げれば、特定の国を念頭に置いているわけではございません。ただ、同時に、若干解説をすれば、私(大臣)は日本という国は、ある意味特殊任務を担っているという部分も一方であると思っています。それはいつも申し上げておりますけれども、日本という国は歴史をたどれば仏教を受容し、儒教を受容し、そしてあるいは武士道なども実践し、西欧思想なども途中で入ってきて、いわば東西の価値あるいは文化、あるいは文明も含めてかもしれませんけれども、融合して新しい価値観をつくり出した国だと思います。
 特にアジア・アフリカの中でそういうことをしっかりと行った上で民主主義制度というものを定着させたという意味では、私(大臣)は日本、そして次は韓国ではないか、そういう思いが根底に実はございまして、ですから、先ほど来から単純にある一方的な価値観の押し付けをするのではないのだということを申し上げているわけです。
 でも、今ややはり民主主義とか法の支配とか、そういった価値というのはほぼ普遍的な制度になってきていると申し上げてもよいし、これから他のアジアの国々が、すべてとは言いませんけれども、つまりはそれぞれ今まで持ってきた価値とこれから入ってくる価値との相克で、ある意味それぞれの国が苦しむというか、時にジレンマに陥ったりというさまざまな克服すべき課題というものが生まれてくると思うのです。それをある意味日本というのは乗り越えてきた、克服をしてきた先駆者だというように私(大臣)自身は考えておりまして、あるいはもっと言うと根本的な話をしているのですけれども、そこに日本のある意味特殊な任務というのがあるのではないかという思いがあるということでございます。

【共同通信 下江記者】総理が9月29日の参院予算委員会で海洋の安全保障について東アジアサミット、私自身も首脳間で強いメッセージを出すのだと、積極的に関わりたいという意欲を示しておられるのですけれども、7月のバリで松本外務大臣がEASの外相会議で海洋フォーラムというのを提唱したと。大臣はこれを引き続き模索するお考えがあるかということと、あと行動宣言から行動規範に格上げしようというのが進んでいないのですけれども、これを模索されるのでしょうか。

【大臣】いずれにしてもそれぞれ3点、特に具体的に言うと2点ですね。海洋フォーラムというのはそもそも名称がそういうものとして存在するのかどうかということも含めて、私(大臣)はまだ決まっていないと認識していますし、DOC(行動原則宣言)、COC(行動規範)の話は、いずれにしても南シナ海の話は、ASEAN各国が当然関心を強く持っておりますし、国際社会共通の関心事項であるというように私(大臣)自身は考えております。
 そして、先ほど申し上げたようなところが大切になると。つまりは、航行の自由、紛争の平和的解決、何より国際法規の遵守、これらの具体的な実行が大切になるというのが私(大臣)の認識です。

【朝日新聞 大島記者】今の開かれた多層的なネットワーク、あるいは重層的なネットワークという言い方もしていますけれども、これは私が知る限りでは前原大臣、松本大臣、そして今、玄葉大臣、総理なども何回かおっしゃったことがありますが、私も率直に申し上げてよくわからない部分があるので、確認のためにお伺いしたいのですが、この多層的というのは何を指していらっしゃるのか。そして、なぜ多層的であるべきと大臣はお考えなのか教えていただけますか。

【大臣】以前、大島さんが聞いておられたかどうかわかりませんけれども、ここでも申し上げましたけれども、東アジア共同体の質問が出たときに、いわばさまざまな地域フォーラム的なものがアジアには既に存在をしているわけです。ある意味、それらを機能別にしっかり組み立てていく、あるいは機能的に連携をさせていく、その中の一環としてEASというのがあって、今回は米国とロシアが初めて入るという中で、どういうようにこれらのEASの意義づけというのを考えていくのかということだと思います。
 多層的という意味はそういう意味で、多層的と重層的はやや似ているところもあるのですけれども、さまざまなそういった地域フォーラムというものを適切に組み合わせていく必要があるということですし、例えばEUのような経済について、あるいはこれまでの歴史をたどったときに、完全な共同体までいかない歴史的な背景がアジアにはあると思うのです。そういう意味で一定の多様性も認めながら、先ほど申し上げたように、魅力を感じるネットワークをこちらがつくり上げて、入って来たくなるようなネットワークをつくりたいという意味合いがあると理解していただければと思います。

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日韓関係

【日本経済新聞 田島記者】大臣は、6日からソウルを訪問して、金星煥外交通商部長官らと会談する予定になっていますけれども、大臣に続く形で前原政調会長、日韓議連が相次いで韓国を訪問することになっています。このような形で、政府・与党として、ある意味一体感を持って韓国を最優先で訪問することについて、その意義、ねらいについてお聞かせください。

【大臣】これは、以前も私(大臣)がなぜ韓国を最初に訪問するのかということを聞かれたときに、やはり韓国というのは、もちろんさまざまな乗り越えなければいけない課題はあるけれども、大局的に見ると手を携えていかなければならない最も大事な国の一つであると私(大臣)自身は考えておりますし、恐らく多くの方がそう考えているのではないかと思います。
 結果として、与党も含めて、そのような対応になっているのではないかと思います。

【北海道新聞 相内記者】今の関連で、韓国ではどのようなことを話し合ってきたいか、改めてお聞かせください。

【大臣】ここは今、最終調整中でございますが、ただ、李明博大統領に対する表敬もございますし、外務大臣とはバイの会談以外にも夕食を共にすることになっておりますので、かなり幅広くさまざまな議論を展開することになるのではないかと、私(大臣)としては考えておりますし、これもいつも申し上げていますけれども、やはり日本と韓国の外務大臣同士が頻繁に会って、腹蔵なく話し合える関係をつくっていく。これはさまざまな懸案が横たわる中で、しかし、私(大臣)の言葉で言えば、死活的利益を共有する両国でありますので、そういう意味で大切なのではないかと考えております。

【日経新聞 田島記者】今、大臣は、「幅広くさまざまな議論を展開することになる」とおっしゃいましたけれども、従軍慰安婦の賠償請求権の問題について今回の会談でも国連に続いて取り上げる可能性があるのかどうかというのが一点と、韓国側は多分、政府間協議の提案というのをまたしてくるかと思われますが、それに対して日本はどう対応するのか、改めてお聞かせ下さい。

【大臣】これはもう私(大臣)から取り上げるということはあり得ない話です。その問題については、もう既に1965年の日韓請求権経済協力の協定で完全かつ最終的に解決済みであるという立場でございます。

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中国訪問/脱北者の移送

【時事通信 西垣記者】最初の外遊先として韓国を選ばれて、その後東南アジアを訪問するということの中で、もう一つアジアの大国である中国訪問については現在どのように考えていらっしゃるのかというのが一点目。
 二点目は全く違うのですが、脱北者の問題で、ここまで時間がかかったわけですけれども、日本政府としてさまざまインタビューされていたと思うのですけれども、どのような情報を得ているか、また、韓国への移送がこの時期までずれ込んだ理由は何でしょうか。

【大臣】中国の訪問については検討したいというように考えております。
 後者の脱北者の話でありますけれども、二つ理由があります。一つは相手国の要請、相手国というのは韓国側の要請、もう一つはやはり政府の重要任務の一つは北朝鮮の状況についてしっかりと情報収集するということでございます。したがって、そういった事情聴取をしたと。具体的なことは当然これはお答えできませんが、そのように理解していただいて結構です。

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北朝鮮情勢

【読売新聞 石田記者】今後、北朝鮮の情勢によっては同じような脱北者、同じような事案がそれこそ大量に発生するようなこともあり得ると思うのですけれども、そういう場合の対応については今後どのように対応していくおつもりでしょうか。

【大臣】北朝鮮人権法というのをご存じかもしれませんけれども、基本はこの北朝鮮人権法の第6条に「脱北者の保護及び支援に関し施策を講ずるよう務めるものとする」というように書いてございます。ですから、個別の事情を勘案しながらでありますけれども、適切な対応を当然考えていくと。確か、脱北者の問題が出たのは平成18年以降だと思うのです。ですから、さまざま事態に対応できるように、当然省内できちんと検討していくということは必要なことだと私(大臣)自身考えております。

【読売新聞 石田記者】現状、今の体制だとそういった事態には対応できないというような感じなのでしょうか。

【大臣】北朝鮮人権法がありますので、対応できないというわけではないと思います。先ほど、「大量に」とおっしゃったのでそのように答えただけで、「大量に」というのはおそらく大きな事態のことを考えている可能性もあるかなと思って、そういうように申し上げただけでありまして、今までも累計で100名くらいの方が入国をしているという実績があるわけで、それ以上のことは差し控えますけれども、ですから、この法の趣旨に照らして適切に対処したいと考えております。

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日米関係

【日本テレビ 野口記者】先ほどの外務省の報道発表で1月20日の日米合同委員会の合意を踏まえまして、沖縄の嘉手納で行われておりました在日米軍の飛行訓練の一部をグアムに移転するということが具体的に事務的にも進むということになったという発表がありましたが、普天間問題の解決に向けて、今回この措置に至った意義をお伺いしたいのと、大臣が沖縄を訪問される予定というのは現状どうなっているかお願いします。

【大臣】先ほどの外務省発表は、嘉手納における騒音問題の具体的な措置のひとつと、つまりこれは資するものだというように考えております。いずれにしてもクリントン長官との会談におきましても私(大臣)自身から沖縄の更なる負担の軽減について要請をしたところでございますし、やはり、事件・事故・騒音、こういった問題について政府側が米国側と話し合って更なる努力をする必要が私(大臣)はあると思っています。ですから、そういったことについて具体的にきちんと示していく必要があると思って、私(大臣)は担当者にも指示をしております。だからこそ、先般はあえて私(大臣)からクリントン国務長官に要請をしました。沖縄訪問も自分の頭の中の日程には具体的に大体ございますけれども、最終的に官房長官などとも調整をした上で沖縄訪問の日程を確定したいと考えております。

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