新聞・雑誌等への寄稿・投稿

総領事館ほっとライン 第38回 カルガリー
広大なカナダ中央部
ロッキー山脈のふもとの町

在カルガリー総領事
堀江 副武

管轄面積は日本の14倍

 当館は2005年1月州都エドモントンから移転した新しい総領事館です。この地がアルバータ州の経済の中心で、在留邦人も北部に比べ圧倒的に多いこと、多くの日本人観光客の訪れるカナディアンロッキーに近いことなどの理由によって移転したところ、カルガリー、レスブリッジ、バンフなど南アルバータの在留邦人の方々から、総領事館がより身近になったとの感想をいただいております。

 管轄区域はアルバータ、サスカチュワン、マニトバの3州および北西、ヌナブトの2準州にわたり、カナダ全土の54%、日本の14倍の面積です。これはシベリア東部を管轄する在ハバロフスク総領事館に次いで、日本の総領事館として2番目の広さです。広大な地域ですが人口は約550万ほど、在留邦人もおよそ4300人ほどで、各地に散らばっています。

 このため当館としては遠隔地に住んでいる邦人のために、ウィニペグ、サスカツーン、リジャイナ、エドモントンといった拠点都市に年に1~2回出掛け、領事出張サービスを行っていますが、何分にも日本から派遣されている館員が総領事以下6人という小規模公館であるためカバーが難しい面があります。少しでもこれを補完するために当館としてはメールマガジンの配信や安全対策連絡協議会を開催し、安全情報、領事関係情報を提供しています。

チャイナタウンが目立つカルガリー

 カルガリーはロッキー山脈の東側、カナダの大平原地帯が始まろうとする位置にあります。人口は100万、現在開発の進むオイルサンド産業を牽引車として経済ブームの中にあります。この内陸の町で目に付くのが中国人社会です。下町にはチャイナタウンがあり、中国系カナダ人、中国人の数は15万人(州合計)とも言われ、大きなプレゼンスを占めています。他方、日本人(州合計3500人)と日系人(同1・2万人)はあまり目立った存在感がありません。ただし、日本人留学生などはかなりいるようで、私の訪問した市内のマウントロイヤルカレッジという中規模な学校にも日本人留学生が40人ほどいました。

カナディアンロッキーの基地

 当館が重点を置いている町の一つとして、当地から北西約130キロに位置するカナディアンロッキーの基地としてのバンフがあります。この町は人口わずか7700人ほどですが、日本人が推定10%といわれており、それだけ日本人観光客の多く訪れる地です。この場所はバンフから北部のジャスパーまで300キロ以上にわたり、雄大な山々、目を奪われる美しさに満ちた湖、滝や氷河などが身近に味わえます。観光シーズンは5月から10月ぐらいまで。冬場のスキー客はヨーロッパ人が主体で、日本からはあまり来ていないようです。カナディアンロッキーを訪れる日本人観光客は2000年の約14万人がピークでその後、「9・11事件」、新型肺炎(SARS)などが影響し、最盛期の15%程度まで落ち込みました。ここ2~3年は回復基調にあり今年は9万人ほどが見込まれています。カナディアンロッキーというと夏の観光地というイメージですが、意外にも9、10月にかなりの日本人が訪れています。

 幸いなことにここ数年日本人を巻き込んだ大きな事件・事故は発生していません。これは道路などインフラが完備していること、治安が良いこと、観光地の性格が大自然を味わうという健全なものであることによります。ただし、バンフが海抜1383メートルという高地であることを忘れ、疲労、アルコール、熱い風呂への入浴などにより熟年の個人旅行者に病気の悪化による入院、死亡というような事故が数件発生しています。

日本からの修学旅行の地

 アルバータ、サスカチュワンはカナダ中央部の平原を占める2州ですが、広大な地域にもかかわらず農業、牧畜くらいしか見るべき産業がありません。私が今年4月にサスカチュワンを訪れた時、表敬訪問した同州の副総督は「サスカチュワンは忘れられている州である」と嘆いていました。在留邦人も計560人ほどで、永住者が中心です。意外なのは初夏から夏にかけて、幾つかの日本の高校が修学旅行でこの地を訪れているということです。カナダの中で最もカナダらしい広大な地域で何日かを過ごすことは、日本の高校生にとって貴重な異文化体験でしょう。

オーロラ観光のできるイエローナイフ

 北西準州の州都イエローナイフは北緯60度以北から北極に至る広大な地域です。人口希薄で在留邦人も数十人程度とあまりいないものの、オーロラ観光に訪れる日本人が結構います。オーロラは当地ではノーザンライト(北の光)と呼ばれ、見えるかどうかは天候次第ですが、運よく見えれば幻想的な雰囲気に浸れます。ただし、観光シーズンは冬場でしかも夜中なので、結構タフな旅行となります。「わざわざ金を払ってまでオーロラを見に来るのは日本人だけだ」などと言われるくらいこのツアーの大半は日本人観光客です。

ワンポイント・アドバイス

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