新聞・雑誌等への寄稿・投稿

「中央公論」平成18年12月号「外交最前線」より転載

加盟50年、平和の構築をリードする日本の国連外交

 国連に加盟して50年。今や国際社会の
 主要な一員となった日本は、国連で大きな責務を担っている。
 麻生外務大臣に国連外交について伺った。

北朝鮮の核実験に安保理議長として対処

 日本が国連に入って50年です。この間の日本の地位、役割などについてお話しいただけますか。

麻生●この半世紀というもの、日本は一貫して国連を重視し、世界の平和と安定に向けた国連の取り組みを積極的に支援してまいりました。唯一の被爆国として軍縮・不拡散の重要性を訴えてきたのが一つ。冷戦後は、各地で頻発する民族紛争や人権侵害、経済的格差の拡大、感染症といった問題でも、いわゆる「人間の安全保障」の旗振り役として、理念、実践の両面で大いにやってきたと思います。
 安全保障理事会の非常任理事国になった回数は、これまで9回。ブラジルと並んで最多記録です。今年は特に、理事会の一員として活躍した年です。北朝鮮がミサイルやら核やら、いろいろやってくれましたから。皆さんのご記憶に新しいように。

常任理事国として貢献に見合った発言力と国益を確保

 安保理改革の必要性と、日本が常任理事国となる意義、またわが国の対応は……。

麻生●当初51カ国で始まった国連ですが、その加盟国数は現在192にのぼります。一方、安保理の構成は、当初の11カ国から、1965年に非常任理事国が4カ国増えただけです。どう見てもバランスがよろしくありません。それに今の安保理は、世界の平和と安全の維持を担う意思と能力を十分結集した場になっていません。新たな脅威もある。テロとか、大量破壊兵器の拡散などです。
 古くからの問題に加えて新しい難題にさらされている安保理は、その改革がもう待ったなし。国際社会の現状に沿ったものに変えなきゃならん。これは自明なことではないか、とそう思いますね。
 これまでの貢献に見合った発言力は、まず持たねばならん。日本自身の安全保障に関わる問題について、国益を確保していくにも重要である。日本が常任理事国にならねばならないゆえんです。
 安保理改革の必要性、それも急いでやろうという認識は、加盟国が広く共有しております。わが国としては、安倍総理が所信表明演説でも述べたように、常任理事国として十二分に責任を果たしていかねばならんというのが、いわば不動の立場です。安保理改革のための外交努力は、一切緩めるつもりがありません。

「寺子屋」でアジアの平和構築専門家を育成

 安保理以外での改革については……。

麻生●これはもう安保理に限らず、国連の体制やシステムを現実に則したものに変えて、強くする努力が絶対必要です。新しく平和構築委員会や人権理事会ができたのは、まさにそういう国連を強くする取り組みの具体的成果です。わが国はこれらの設置に向け尽力してきましたし、現在それぞれの組織において第一期メンバー国を務めています。
 それから平和構築の分野では、8月に一つ演説をいたしました。わが国独自の取り組みとして、平和構築を担うアジアの人材を育てる「寺子屋」を作ろうと、そういう方針を打ち出しております。
 これは、わが国の「平和の定着」に関する経験、国づくりのノウハウを、アジアの優れた人材にも伝えようというものです。「寺子屋」から巣立った日本とアジアの若者が、例えばアフリカの平和構築の現場で共に汗を流す―そんな日が来るのを夢に見て、今後重点的に取り組もうと考えているところです。
 国連改革にはこのほかにも、肥大化した事務局の効率化とか透明性の向上、重複や無駄の多い業務(マンデート)の見直し、地位と責任に見合った財政負担の実現などがあります。経営者の目で国連を見たら、まあぜい肉だらけですから。
 交渉はもちろん簡単ではない。しかし具体的な成果に結び付くよう、日本は改革の牽引役になるんだと、今もハッパをかけているところです。

 今後のわが国の国連外交についてお話しいただけますか。

麻生●アナン事務総長が、「安保理改革なくして国連改革は完成しない」と言っておられる。次期事務総長のパン・ギムン氏(現韓国外交通商相)も、国連の理念を実現するために、きっと全力を尽くされると期待しています。
 わが国は、今後とも国際社会の責任あるメインプレイヤーとして、いろんな改革を通じてもっと強い国連を生み出すため、主導的役割を果たしてまいるつもりです。国連は、なんといっても世界で最も普遍的で、包括的な機関ですから、世界に当てはまる公正なルールづくりの場として、これまで以上に活用してまいりたい。そう思っているところです。

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