(英文はこちら)
議長,
日本国政府を代表して,議長をはじめとするビューローメンバーとこの会合の準備に献身的な努力をされたすべての関係者に心から謝意と敬意を表します。
議長,
まず初めに,約1年前の3月11日,我が国に甚大な被害をもたらした東日本大震災に際し,各国から寄せられた暖かい支援に感謝いたします。震災は,防災・被災者支援・復興における女性の力及び果たす役割について,あらためて認識する契機となりました。我が国は,震災から得られた教訓について我が国の経験を共有し,よりよい制度・対応に向けた国際社会の取組を促すことをめざし,今期CSWにおいて,「自然災害とジェンダー」決議案を提出いたします。決議案の議論を通じて,この課題についての国際社会の理解が深まり,UN Womenをはじめとする国連機関とも連携の上,よりジェンダーに配慮した災害対応につながることを期待しています。
議長,
本年1月,野田総理は,施政方針演説の中で,社会のあらゆる場面に女性が参加し,その能力を発揮することが,社会全体の多様性を高め,元気な日本を取り戻す重要な鍵である,と述べました。政府が決定した「東日本大震災からの復興の基本方針」においては,復興のあらゆる場における女性の参画促進,コミュニティ・ビジネスや農山漁村女性の起業活動等への支援等が定められています。震災からの復興においては,男女共同参画の視点を重視し,女性,子ども,高齢者,障害者等が主体的に参加する,包摂型の社会作りをめざしているところです。我が国は,2010年12月に策定した第三次男女共同参画基本計画に基づき,様々な分野で男女共同参画社会の実現に取り組んでいます。特に,第三次計画に基づく暫定的特別措置の取組強化については,我が国が昨年女子差別撤廃委員会に提出したフォローアップ情報の中でも報告し,委員会から,我が国の取組に関し高い評価を受けました。
農山漁村における女性の参画促進については,食料・農業・農村基本法において,「女性の農業経営における役割を適正に評価する」とともに,「女性が自らの意思によって農業経営及びこれに関連する活動に参画する機会を確保するための環境整備を推進する」と明記されています。また,第3次男女共同参画基本計画においても重点分野の一つに掲げられています。さらに,農林水産省内に女性支援を担当する部署及び担当官(就農・女性課女性・高齢者活動推進室 共同参画推進班)を設置し,これらの法律や計画に基づき,活力ある農山漁村の実現に向けた総合的な取組を進めています。第一に,政策・方針決定過程への女性の参画を促進するため,農業者団体等における女性役員等の登用目標を設定し,その達成に向けた啓発活動等を実施するとともに,毎年3月10日を「農山漁村女性の日」と定め,各種行事を行っています。第二に,女性の経済的地位の向上に向け,経営における女性の位置づけの明確化や,地域農産物を活かした加工や消費者への直接販売等を行う起業活動の高度化・安定化に向けた取組を支援しています。第三に,家族農業経営にたずさわる各世帯員が経営方針や役割分担,就業環境などについて取り決める「家族経営協定」の普及等を通じ,農村における仕事と生活のバランスに配慮した,女性が働きやすい環境づくりの推進を行っています。
さらに,新たな取組についてもご紹介します。現在,我が国においては,農林漁業生産と加工・販売の一体化や,地域資源を活用した新たな産業の創出など,農山漁村の経営の多角化(「6次産業化」)を推進しているところです。この取組において,女性の能力をより一層発揮することが重要であるとの認識に基づき,平成24年度事業より新たに,地域農業のあり方を定めるプランづくりの検討メンバーに女性が概ね3割以上参画することを要件化するとともに,関連事業において,予算額の1割程度を女性が優先的に利用できる「女性起業家枠」を設定しています。また,地域レベル及び全国レベルで女性のネットワークづくりや異業種との交流を促進するなど,女性の活躍に向けた支援を充実強化しています。
議長,
我が国は,「ジェンダーと開発(GAD)イニシアティブ」に基づき,ODAのあらゆる分野,段階においてジェンダーへの配慮に努めているところです。ジェンダーの視点は,2010年9月の国連首脳会合の機会に発表した「国際保健新政策2011-2015」及び「日本の教育協力政策2011-2015」等の分野別政策にも含まれています。また,これまでも農村女性のエンパワーメントやジェンダー平等の推進に資する支援を行ってきています。例えば,農業・農村開発分野の支援にあたって,ジェンダー主流化に向けた指針を策定するとともに,個々のプロジェクトにおいても,農業・農村における女性の役割や課題・ニーズの把握や支援対象地域のジェンダー分析を行い,それらを踏まえた支援を行うことにより,農村女性のエンパワーメントに貢献しています。
また我が国は,国際機関との連携によるジェンダー主流化への支援も重視しており,本年のUN Womenに対するコア拠出を昨年から倍増することを検討しています。
議長,
女性NGOを中心とする我が国NGOは,震災直後から現地における支援活動や調査,シンポジウムの開催や政府への提言等,積極的な役割を果たしてきました。我が国は,震災を経て,女性の参画の重要性,また市民社会の役割をあらためて認識いたしました。今後も引き続き,国際社会,国際機関,そしてNGOを含む市民社会と連携しつつ,女性のエンパワーメントとジェンダー平等の実現に取り組んでいく所存です。
ありがとうございました。