平成24年6月1日
(英文)
ナジブ・ラザク首相閣下
カレド・ノルディン高等教育大臣閣下
ザイニ・マレーシア工科大学副学長,
メガットMJIIT院長,
中村滋駐マレーシア日本国大使,
日本のコンソーシアム参加大学各位,
御列席の皆様,スラマット・プタン,こんにちは。日本国総理特使として参りました鳩山由紀夫です。
本日は,マレーシア日本国際工科院(MJIIT)の開校式に当たり,日本政府と日本国民を代表し,心からお祝い申し上げます。1982年にマハティール元首相が提唱された東方政策が30周年を迎える記念すべき本年,日・マレーシア両国の極めて重要なプロジェクトであるMJIITが,こうして開校式を迎えるに至ったことを大変喜ばしく思います。後に申し上げるとおり,私は,MJIIT設立に携わった者として,この開校式に特別の思いを持って臨みました。
マレーシアの将来を担う若者に,日本の職業倫理や経営哲学を学ばせたいというマハティール元首相の熱意によって,30年にわたり行われてきた東方政策の下,これまで14,000人もの優秀なマレーシアの若者が日本で学び,今や中進国となったマレーシアの発展に貢献してきました。これらの元留学生らは,今でも日本を愛し,日本とマレーシアをつなぐかけがえのない架け橋として活躍しています。「国と国」は,つきつめれば「人と人」との関係です。私は,マレーシア留学生が日本に対して熱い思いや大きな期待を持っていることを知っております。東方政策が緊密な二国間関係の構築に与えた意義は極めて大きく,その成果を高く評価します。そのもたらした恩恵に鑑みれば,将来の二国間関係においても,東方政策は日・マレーシア友好関係の基盤であり続けるに違いありません。
そのような東方政策の集大成として,MJIITが設立されたことは極めて象徴的です。2010年4月に,ナジブ首相が我が国を訪問された際,MJIIT設立の構想を伺い,その具体化に向けた協力の在り方を議論しました。それから2年を経て,ナジブ首相の御要望も踏まえ,日本人教員を派遣し,昨年9月のMJIIT開校に貢献することができました。このために,円借款の供与に加え,24の大学が参加するコンソーシアムを設置し,MJIITに協力することになりました。ナジブ首相がMJIIT設立実現に対して抱き続けられた強い意志に,敬意を表します。
過去の30年を振り返れば,世界の歴史の重心は大きく移り,世界はアジアの世紀とも言われる時代を迎えました。その中でマレーシアは,ナジブ首相のリーダーシップの下,2020年に高所得国になる目標「ビジョン2020」を掲げて,堅調な成長を続けており,世界の成長センターの一翼として地域経済の発展を牽引しています。
二国間関係について言えば,日本とマレーシアとの関係は,極めて緊密かつ良好に推移してきました。貿易面では互いに重要なパートナーであり,今やマレーシアに進出している日系企業は1,400社を超え,マレーシアは我が国企業の海外進出において重要な拠点の一つとなっています。一方で,今や,日本とマレーシアとの関係は,二国間関係のみならず,地域や国際社会の課題に共に取り組むパートナーとしての関係にまで成熟してきており,中東和平,環境・気候変動,海上安全保障等,様々な分野において協力を深めています。
私はこれまで,次世代の若者が国境を越えて教育等の分野で交流を深めることは,東アジア地域の相互の信頼関係を深化させるとともに,アジアの持つ相手の文化をお互いが積極的に評価し,学び合う姿勢を身につけるために極めて有効であり,日本は留学生の受入れや派遣等を大幅に拡充し,30年後のアジア太平洋協力を支える人材の育成を推進すべきと申し上げてきました。日・マレーシア両国間において,その協力の担い手となるのが,ほかならぬMJIITであります。ナジブ首相の強い後押しによって,MJIITは,日本式工学教育をマレーシアに導入し,マレーシアのみならずASEAN における工学教育の重要拠点として,地域全体の発展に大いに貢献していくことでしょう。
また,この地域に住む我々は,自然災害,気候変動,エネルギー問題など,共通の課題に直面しています。MJIITの設立によって,日本とマレーシア,そしてASEANの研究者が一体となって,こうした課題に対する「処方箋」を提示できる日を心から待ち望んでいます。
MJIITでは,講座制度の下,大学院を卒業するために,マネージメント能力やデザイン企画力を培い,最終的には専門力,人間力,企画力及び実行力を持つ独創的なスキルを身につけた人材を送り出すことをその教育理念としていると承知しています。このような目標を実現し,MJIITが地域の工学教育の重要拠点となって地域の発展に貢献するためには,学術界及び産業界,特にMJIITと日本企業を始めとする連携が重要であり,御列席の皆様からの御支援が不可欠です。これからも,MJIITの発展に御尽力いただきますよう,よろしくお願いいたします。また,私も,MJIIT設立に関わった者として,また,民主党日本・マレーシア友好議員連盟の会長として,今後ともMJIITを支援するとともに,日本とマレーシアとの関係がますます発展するように努め,皆様と共にアジアの持つ共通の価値観を共にはぐくんでいきたいと思います。
最後に,これまでの関係者の御尽力に感謝の意を表するとともに,MJIITの更なる発展を心から祈念いたします。
テリマカシ。ありがとうございます。