演説

国連の場における演説

第66回国連総会第3委員会における
平敷政府代表顧問ステートメント(和文仮訳)
(議題69(a)「人権諸条約の実施」)

平成23年10月18日

英文はこちら

議長,

 人権は国際社会において共通する普遍的価値であり,我が国は,世界のあらゆる場所において人権の保護とその促進が確保されることを望むとともに,これを推進する必要があると考えます。基本的人権の確保とは,すなわち人々の生存・生活・尊厳の尊重が図られることであり,そのために国際社会における平和や開発等様々な分野での包括的な取組みが必要になります。

 また,民主主義の発展も,人権の促進・定着を通じて全ての国にとっての政治的経済的発展の重要な基礎を提供するものであり,結果として国際社会の平和と安定に直結するものです。我が国は,長年にわたって人権の保護及び促進を外交の重要な柱の一つに位置づけ,これまで多くの国に対して,法制度整備支援を含め,民主主義の定着に向けた支援を行ってきました。さらに,昨今の,「アラブの春」に代表されるような一般国民による民主主義の希求の動きは,個人の基本的自由や人権,尊厳の促進につながる可能性を秘めている点を踏まえ,国際社会として適切に対応していく必要があると考えます。

議長,

 国連に設立された人権理事会は,人権を広く国際社会で保障する上で,非常に重要な役割を担っています。我が国は,人権理事会設立以来,その役割の強化と活動への協力を一貫して行ってきました。我が国は,普遍的・定期的レビュー(UPR)と相互補完的な役割を果たす特別手続に対し,これまでも全面的に協力してきましたが,本年,人権理事会の特別手続に関し特別報告者の訪問を常時受け入れることを表明したところです。その上で,人権理事会を新しい人権諸問題に柔軟かつ機動的に対応することができる機関とするために貢献すべく,2012年の人権理事会理事国選挙への立候補を表明しております。

議長,

 我が国は,締結している国際人権諸条約について,その国内実施に誠実に取り組んでいます。そのうちの一つ,強制失踪条約については,昨年12月に発効したことを歓迎します。我が国は,本年7月には拷問禁止等条約の政府報告を行い,また8月には女子差別撤廃委員会からの最終見解に対するフォローアップを行いました。引き続き,委員会からの勧告,国際社会からの指摘を誠実に受け止め,適切に対応することで,全ての人権の保護・促進を進めていきます。

 ジェンダー分野においては,男女共同参画社会の実現に向け,2010年12月に第3次男女共同参画基本計画を閣議決定し,重点分野ごとに具体的な成果目標を設定するとともに,女性の指導的地位への進出に向けたポジティブ・アクションの推進を決定しました。国内において着実に基本計画を実行していくとともに,国際社会に対しても,UN Womenのような団体の実効性のある活動に対して可能な限り貢献をしていきたいと考えております。

 障害の有無によって分け隔てられることなく,相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現は我が国の主たる目標です。我が国は,2007年に障害者権利条約に署名し,現在,同条約の締結に向け,障害当事者やその家族を含む多方面の関係者からの意見を参考にしながら適切に対応してきています。本年7月,条約に定められた合理的対応の理念も参照しながら障害者基本法を改正したところであり,来年8月までに,障害者施策の実施状況を監視するための障害者政策委員会が設置されることとなりました。

議長,

 我が国は,今後とも,条約体の実効性・効率性の強化を含め,人権の保護・促進のための国際的な枠組みの改革努力を支持します。さらに,こうした枠組みが効果的に実施されるよう,全てのパートナーと協力するとともに,議論に積極的に参加していく所存です。

 ありがとうございました。

このページのトップへ戻る
国連の場における演説 | 平成23年演説 | 目次へ戻る