(英文はこちら)
2011年は,ジェンダー平等と女性のエンパワーメントに対する取組強化をめざし,国際社会の総意として設立されたUN Womenが正式に活動を開始した,記念すべき年である。我が国は,執行理事国として,UN Womenの活動が現場で目に見える成果を生むことができるよう,積極的に貢献していく。我が国は,北京宣言・行動綱領を含む,国際レベルで合意された原則や文書に則り,ジェンダー平等と女性のエンパワーメントに向けた活動に今日まで継続して取り組んできており,本日は,我が国の取組と考えについて紹介する。
本年は,日本にとっても特別な年である。甚大な被害をもたらした本年3月の東日本大震災は,防災・被災者支援・復興と女性について,あらためて見直す契機となった。震災が起きると,避難所運営等における女性の視点の欠如やニーズの反映がなされにくいことが予想されたため,政府は発災後直ちに女性の視点に配慮した対応を行った。一方で,震災直後から,被災地において,女性グループを中心とした被災者支援や復興のための活動が展開され,震災はまた,女性の持つ大きな可能性も示した。政府が7月に決定した『東日本大震災からの復興の基本方針』は,「復興のあらゆる場・組織に女性の参画を促進する」ことを定めている。同方針に基づき,女性の力を生かした復興が,着実に進められていることをお伝えするとともに,我が国の経験を共有していきたい。
国際社会では,ジェンダーを含むミレニアム開発目標(MDGs)の2015年までの達成に向けた努力が続けられている。我が国は,2010年のMDGs国連首脳会合において新国際保健政策及び新教育政策を発表した。保健分野においては,母子保健を重要な柱の一つと位置付けており,2011年から5年間で50億ドルの支援を実施することを表明した。母子保健関連では,産前から産後までの切れ目のない手当てを確保する母子保健支援モデル“EMBRACE(エンブレイス)”を通じ,他のパートナーとともに, 43万人の妊産婦の命を救うことを目指している。これらの支援を通じて,目標達成に向けた進捗の遅れが指摘されているMDG5の達成に貢献していくとともに,すべてのMDGsに関わるMDG3の達成に向けて引き続き努力したい。
昨年採択10周年を記念した女性・平和・安全に関する安保理決議1325の履行は国際社会の最重要課題であり,事務総長が策定した同決議の履行指標が早期にグローバルおよび各国レベルで活用されることを期待する。我が国は,現地の女性の声を吸い上げるとともに現地女性の社会進出を促す観点から,本年3月から9月まで,国連東ティモール統合ミッション(UNMIT)の軍事連絡要員として女性自衛官を派遣した。我が国は,紛争予防・解決,平和構築への女性の参加を強化すること,また,政治的・経済的移行期の国々の国づくりにおける,憲法・法律の制定・改正および政治プロセスへの女性の参画を確保することの重要性を強く認識しており,我が国開発援助の実施においてもこの点を重視している。一例として,我が国はネパールの2006年和平合意後の暫定憲法及び暫定3ヵ年国家開発計画を受けて,紛争の原因となった特定の民族や社会的集団,女性の社会的排除等の問題を解決するため,JICAを通じてジェンダー平等及び社会的包摂の推進を目的とした政策立案・実施支援を行っている。我が国は中央及び地方レベルで同支援を行い,郡の開発委員会,女性開発事務所(WDO)や市役所等における研修や開発計画の計画・実施・モニタリングを行う委員会の設置を通じ,仕組みづくりを支援している。
我が国は,昨年12月,第3次男女共同参画基本計画を閣議決定した。同計画は,最近の経済社会情勢の変化に対応して,「男性,子どもにとっての男女共同参画」等の新たな重点分野を設けている。また,2020年に指導的地位に女性が占める割合を少なくとも30%程度とする目標に向け,実効性のあるアクション・プランとすることを重視し,各重点分野に達成すべき成果目標を設定している。同計画に基づく取組については,我が国が本年8月に女子差別撤廃委員会に提出した,2009年の最終見解に対するフォローアップの中でも詳細に報告した。我が国は,基本計画の実施に関する監視体制を強化しているところであり,男女共同参画社会の実現に向けた取組をいっそう推進していく。
国際社会が女性についての取組を強化しようとしている本年,我が国は震災を経て女性の参画の重要性をあらためて認識し,国際社会,国際機関,市民社会とともに,より一層ジェンダー平等と女性のエンパワーメントの実現を目指していく決意を新たにしている。