演説

国連の場における演説

第65回国連総会第3委員会
議題68(c)国別人権状況
兒玉大使ステートメント(和文骨子)

平成22年10月27日

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  • 人権の保護・促進の一義的責任は当該国家に帰するも,全ての人権の保護・促進は国際社会の正当な関心事項である。我が国は,各国の歴史,文化,伝統など個別の状況への適切な配慮の重要性を十分認識した上で,「前向きな関与」及び「対話と協力」のアプローチに基づき,イランやスーダンを含む多くの国々と人権対話を実施してきている。
  • カンボジアについては,未だ様々な課題もあるが,最近の刑法の制定,一部の規定を除いて反汚職法の適用の開始など,法整備の面で進展がみられること,土地問題について制度の整備が進んでいることを評価。KR裁判の司法プロセスが進展していることも歓迎している。また,昨年のUPR審査において,カンボジアが91すべての勧告を受け入れることを表明したことは,カンボジア政府の人権問題に取り組む強い意欲の表れであり,歓迎している。我が国は今後ともカンボジア政府の人権状況改善に向けた取組を支援していく。
  • スリランカについては,スリランカ政府自身が,内戦末期の人権問題につき十分な説明責任を果たすことが重要であり,「過去の教訓・和解委員会」はスリランカ国内各地で公聴会を開いているが,同委員会の調査が国際基準にも合致し,透明性をもって実施されることを期待。また,国連事務総長の「専門家パネル」は,この委員会の活動を妨げるものではなく,両者は互いに補完・共存できると理解している。我が国としては,スリランカ政府が,国連とも協力しつつ,国内避難民の再定住,国民和解の進展,人権状況の改善を通じて永続的な平和を達成し,持続可能な経済発展を遂げるよう,引き続きスリランカ政府を後押ししていく。
  • 国別の人権状況に関する特別報告者をはじめとする人権理事会によりマンデートを与えられた特別手続は,人権理事会のUPRと対峙するものではなく相互補完的なものであり,当該国と国際社会との対話を促すものである。また,特に,組織的で重大な人権侵害が継続している状況については,人権理事会のみでなく,より普遍的メンバーシップを有する国連総会において然るべく対応することが重要と考える。
  • 我が国は,北朝鮮人権状況特別報告者の役割を重視しており,マルズキ・ダルスマン氏の就任を歓迎。北朝鮮においては,深刻な人権侵害が継続していることは明らか。北朝鮮人民の生存権が著しく侵害されていることや,市民的・政治的権利が大幅に制限されていること等を強く懸念している。人権理事会でのUPRの勧告を受け入れることを拒否したことに大変失望している。北朝鮮に対して,国際社会による累次の懸念表明に真摯に耳を傾け,改善に向けた具体的行動を取ることを求めたい。
     繰り返し述べるが,北朝鮮による我が国国民の拉致問題は解決していない。2008年8月には,日朝間で拉致問題に関する全面的な調査の目的や具体的態様に合意している。その後,同年9月になって,北朝鮮は突然調査開始の見合わせを我が国に連絡越し,現在に至っている。北朝鮮は約束を実行に移すべきであり,権限を有する調査委員会を設置し,調査のやり直しを早急に開始すべきである。国連一般討論演説において菅総理が求めたとおり,我が国としては,北朝鮮が日朝間の合意を実施するなどの前向きなかつ誠意ある対応をとれば,同様に対応する用意がある。
  • ミャンマーにおける人権状況及び民主化プロセスを巡る状況については,依然として改善すべき課題が多いとの認識を共有。ミャンマーの民主化は,同国の人権状況改善のために不可欠。ミャンマー政府が,スーチー女史を含む政治犯の釈放を行わないまま11月7日に総選挙を実施するのであれば,我が国を含む国際社会が求めてきた自由・公正で開かれた総選挙の実施とは異なり遺憾。我が国としては,ミャンマー政府に対し,スーチー女史を含む政治犯の速やかな釈放及び同女史・NLDとの実質的対話の速やかな実施,全ての関係者を含む形での総選挙の実施を,引き続きハイレベルで働きかけていく。
  • 紛争下および紛争後の状況においては,女性と子どもをはじめとする社会的弱者が最も人権侵害の被害を受けている。この点で,クマラスワミ児童と武力紛争担当事務総長特別代表及びワルストローム紛争下の性的暴力担当事務総長特別代表が,関連する国連部局・機関や特別手続と協力しつつ,また,積極的な現地訪問を通じて,紛争下の女性と子どもに対する重大な人権侵害の防止及び紛争の影響を受けた女性と子どもの社会再統合のために努力していることを歓迎。
  • 特に,コンゴ民主共和国東部で発生した子どもを含む多数の住民に対する集団レイプは,同国において性的暴力が戦争手段として継続していることを示すものとして深刻に懸念。コンゴ民主共和国政府がこれらの人権侵害行為の犯人を然るべく司法の手に委ねるよう強く慫慂したい。
  • 我が国は,人間の安全保障の視点を踏まえ,途上国及び紛争国・紛争後の国々の女性及び子どもの保護とエンパワメントのための支援を継続していく。
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