(英文はこちら)
議長,
世界中の多くの国が,児童の基本的人権の尊重と促進のための主要なメカニズムである児童の権利条約及び2つの選択議定書の締約国となっていることを歓迎します。児童の権利促進・保護のためには,当然ながら各締約国がそれぞれの国内において条約をどのように実施しているかが重要であり,我が国は,条約及び選択議定書全ての締約国として,本年6月に児童の権利委員会から受けた最終見解の内容も踏まえつつ,国内での法整備や施策の着実な実施とともに,国際的にも様々な形の協力により,世界各地で困難な状況にある児童を支援していく所存です。
議長,
グローバル化が進展するなか,社会的不均衡,感染症の広がり,世界経済金融危機により,世界中の多くの地域において児童をとりまく環境は悪化しています。こうした状況の下,昨年国連総会で採択された「児童の権利」決議においても,参画する児童の権利を主テーマとする他,貧困撲滅,教育への権利,身体的・精神的に到達可能な最高水準の健康を享受する権利,食料への権利等の実現を推進し,児童の福祉の確保に向けた国際社会と各国政府の協力を呼びかけています。
特に,教育は全ての人が等しく享受すべき権利の一つであり,かつ,個人の能力強化を実現するものです。また,貧困削減や格差是正,保健・衛生の改善等持続可能な開発の促進に重要な役割を果たし,文化の多様性や国際理解の増進による世界平和の実現にも貢献します。我が国は,このような教育の「人権」「開発」「平和」の3つの側面を統合的・有機的に関連付ける人間の安全保障の考え方に基づき,9月に開催されたミレニアム開発目標(MDGs)国連首脳会合にて,新しい我が国の教育協力政策を発表しました。2011年からの5年間で教育分野において35億ドルの支援を行うほか,基礎教育支援モデル「スクール・フォー・オール」に基づき,学校・コミュニティ・行政が一体となって包括的な学習環境の改善を行います。こうした支援を通じて,700万人以上の子どもに質の高い教育環境を提供します。
議長,
武力紛争下における児童は最も脆弱な存在です。国連を含む国際社会の取組等を通じ,いくつかの国では児童兵の数が減少するなど進展が見られますが,武力紛争下の児童を取り巻く状況は依然として深刻です。現在の紛争当事国を含め「武力紛争における児童の関与に関する選択議定書」の締約国が拡大し,同選択議定書の規定の実施が推進されることを期待します。また,我が国は,安保理決議1882の共同提案国として,児童の殺傷及び性的暴力を行っている当事者が,本年の事務総長年次報告書(S/2010/181 annexes I and II)に掲載されたことを歓迎します。児童に対する違反を行った当事者の処罰(bring to justice)に向けて,さらに国際社会が協調して対処していくことが必要です。また,学校等の教育施設,教師,生徒を狙った攻撃は強い懸念を表明します。これらが児童に対する深刻な権利侵害として積極的に議論され,問題解決への具体的進展が見られることを強く期待します。
議長,
児童の生存及び発達の権利は,条約の柱の一つであり,いかなる状況でも保障されるべきです。しかし,昨年の国連総会で採択された「児童の権利」決議に基づき提出された事務総長報告書(A/65/206)においても指摘されているとおり,現状では,新生児及び乳幼児の死亡率の削減に向け,さらなる努力が必要とされています。我が国は,MDGs国連首脳会合にて,2011年からの5年間で保健分野において50億ドルの支援を行うことを表明しました。我が国は,母子保健支援モデル“EMBRACE” (エンブレイス)に基づき,機材と人材の整った病院での新生児の手当て,病院へのアクセス改善,ワクチン接種などをパッケージで行うことにより,新生児及び乳幼児が必要なときに,適切な場所で適切な予防策・治療が受けられるよう支援します。この政策により,我が国は,他の開発パートナーと共に,296万人の新生児の命を含む1,130万人の乳幼児の命を救います。また,HIVの母子感染やマラリアは児童の生命を脅かす深刻な問題であり,これらについては,世界エイズ・結核・マラリア対策基金(世界基金)を通じた効果的な取組の拡大を支援していきます。こうした取組を通じ,我が国は保健関連MDGsの達成に貢献するとともに,世界の児童に健康な未来を確保していきます。
議長,
我々は,極めて困難な条件の下で生活している児童が世界のすべての国に存在することを十分に認識し,未来を担う児童が権利を享受し,能力を十分に発揮できる社会作りを目指し,引き続き,加盟国,国際機関,市民社会と協力していく所存です。