(英文はこちら)
2010年は,国際社会がジェンダー平等と女性のエンパワーメントに対する取組を再確認し,決意を新たにする節目の年である。「北京行動綱領」は実施15年目を迎え,7月には国連ジェンダー関係の4機関を統合する新機関「UN Women」の設立が決定され,今月末には女性・平和・安全に関する安保理決議1325採択10周年を迎える。我が国は,北京宣言・行動綱領を含む,国際レベルで合意された原則や文書に則り,男女平等な社会及び女性の地位向上に向けた活動に今日まで継続して取り組んで来ており,本日は,この節目の年にあたり,あらためて我が国の取組と考えについて紹介する。
本年3月,第54回CSWと同時に北京行動綱領採択15周年記念会合が開催され,北京宣言及び行動綱領が再確認されたことを歓迎する。また,我が国は,全ての国連活動やそのあらゆる段階においてジェンダー主流化が実施されることが重要であるとの認識から,「UN Women」の設立を歓迎する。同機関に追加的に与えられた指導力,調整力,説明責任力といった三つの新機能の体制の下,今後,新機関の長となるUSGに任命されたバチェレ前チリ大統領のリーダーシップの下,国連におけるジェンダー分野の活動が有機的な連携を図り,より効率的・効果的に実施されることを期待する。我が国としても,UN Womenの活動に積極的に貢献していきたい。
先月のミレニアム開発目標(MDGs)国連首脳会合において,国際社会は,ジェンダー関連を含むすべてのMDGsの達成に向けた行動を加速させることを確認した。我が国は,同会合において,保健分野及び教育分野に関する「菅コミットメント」を発表した。保健分野においては,母子保健を重要な柱の一つと位置付けており,2011年から5年間で50億ドルをコミット。母子保健関連では,産前から産後までの切れ目のない手当てを確保する母子保健支援モデル“EMBRACE(エンブレイス)”を通じ,他のパートナーとともに, 68万人の妊産婦の命を救うことを目指している。これらの支援を通じて,目標達成に向けた進捗の遅れが指摘されているMDG5の達成に貢献していくとともに,すべてのMDGsに関わるMDG3の達成に向けて引き続き努力したい。
「女性・平和・安全に関する安保理決議1325」採択10周年の節目となる機会に,同決議の実施状況を監視するための包括的な指標が速やかに合意され,直ちにグローバル及び各国レベルで活用されることを期待する。我が国は,紛争予防,紛争解決及び平和構築への女性の参加を強化することの重要性を強く認識しており,紛争後の開発援助においてもこの点を重視している。一例として,人間の安全保障基金を通じて支援している,北部及び東部スリランカにおける紛争の影響を受けたコミュニティーの強化総合プログラムは,紛争で夫を亡くし,世帯主となっている女性などへの職業訓練等を実施することで,紛争後の社会で女性が積極的な役割を果たすことができるよう支援している。
国内の取組に関して,昨年12月,これまでの行動計画を改定し,新たに「人身取引対策行動計画2009」を策定し,被害者保護の一層の充実とその周知,児童を含む性的搾取への取組など,人身取引の防止,撲滅,被害者支援等の取組の強化を進めている。また,政府は,今年中に第三次男女共同参画基本計画を策定する予定である。政策・方針決定過程への女性の参画の拡大や,雇用問題の解決の推進など実効性のある計画とし,更なる男女共同参画社会の形成の促進に向けて取り組んでいく。昨年女子差別撤廃委員会より受け取った最終見解に関しては,適切に対処していきたい。
我が国は,APEC議長として,本年9月にAPEC女性リーダーズネットワーク会合,男女共同参画担当者ネットワーク会合,10月に日米共催で女性起業家サミット等を開催した。これら会合は,女性の経済的エンパワーメントを促進するため,女性リーダーのネットワークを深める契機となった。
国際社会の女性の地位向上への取組において節目となる本年,我が国としても,国際社会,国際機関,市民社会とともに,より一層ジェンダー平等と女性のエンパワーメントの実現を目指していく決意を新たにしている。