(英文はこちら)
1.冒頭
- 万人が社会に参画し、主体的に政策決定プロセスにたずさわれるような社会の結束を目指し、国連では、1995年の社会開発サミット以降様々な枠組みが採択されてきた。社会開発委員会はそのレビューを通じて、人権と基本的自由の促進と保護に寄与してきた。
- 特に、昨今の世界的な金融・経済危機は、特に社会的弱者、中でも途上国に悪影響を及ぼしており、MDGsを含む国際的に合意された開発目標の達成が危うくなっている。
- かかる現下の困難な状況の中では、特に、我々が重視し、提唱してきた社会的弱者の個人の生活と尊厳の保護を忘れてはいけない。社会開発サミットで「人間を開発の中心におく」ことについて合意がなされたとおり、人間の安全保障を社会開発のための我々の行動の中心に位置づけなければならない。
- 我が国内においても、個人のエンパワメント及び状況改善を通じ、万人に全ての人権と基本的自由が確保されるよう努力してきた。ここで、我が国の国内での取り組みの一部を紹介したい。
2.青年
- 「青年に関する世界行動計画」が述べているとおり、社会の継続的な発展には、青年が重要な役割を担っており、青年層のエンパワメントと十分且つ効果的な社会参加の確保が極めて重要。
- 特に、雇用面では、青年は今般の世界的経済金融危機において、影響を最も受けた者であり、青年が社会から疎外されることのないよう緊急の支援が必要。我が国は、厳しい雇用情勢が見込まれる新規学卒者の就職内定率の低下、年長フリーター等非正規労働者の増加といった問題に対応するため、大学等における就職相談員の配置促進による新規学卒者等の支援拡充や、ハローワークに住居・生活支援アドバイザーを配置する等、個人の状況に合わせた支援策に取り組んでいる。
- また、子ども・若者をめぐる環境の悪化やニートやひきこもり、不登校など子ども・若者の抱える問題の深刻化を背景に「子ども・若者育成支援推進法」が2009年7月に成立した。同法に基づき、教育、福祉、雇用等各関連分野における施策の総合的推進や、ニート等困難を抱える若者への支援を行うための地域ネットワークづくりの推進に取り組んでいる。
3.障害者
- 障害者は世界の人口の1割を占めており、その多くは貧困状態にある。障害者の権利の保護・促進については国内でも関心が高く、昨年発足した新政権の下で、2009年12月に障害者施策の総合的かつ効果的な推進を図るための「障がい者制度改革推進本部」が設置され、本年1月からは障害当事者・学識者を含む有識者で構成される「障がい者制度改革推進会議」が立ち上げられた。制度及び政策の更なる充実化を目指す。
- 2008年5月に発効した障害者権利条約は重要な法的枠組みであり、早期締結に向けて引き続き努力している。
4.結語
特定の社会集団の状況を改善するための様々なツールはすでに手元にある。重要なのは、行動指向的な対策と具体的な成果を出す計画、そしてその結果の組織的評価であるとする昨年の議論を再確認したい。政策と実態の乖離をなくすためには、データ及びベスト・プラクティスの収集が不可欠である。我が国は、国際社会と共に目標達成のため、これら行動計画の実施を積極的に行っていく所存。