演説

国連の場における演説

第48回社会開発委員会 議題3(a)社会的統合 足木公使ステートメント骨子

平成22年2月5日

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1.導入

  • 社会開発の目標である「万人のための社会」を実現するためには、児童、女性、高齢者、障害者、先住民、少数民族等といったいわゆる社会的弱者を保護し、社会の主体として取り込み、社会的統合を進める政策と迅速な対策が必要。
  • 特に、世界的な金融・経済危機以降、社会的弱者がますます困難な状況に置かれているところ、これら社会的弱者への被害を最小に抑え、自ら脅威に対処するための能力強化を行うことが重要。

2.人間中心の開発と人間の安全保障

  • 現在の国際社会では、貧困、テロ、紛争、気候変動等、人々を脅かす脅威も多様化、深刻化。そのような脅威に対処するためには、人間一人ひとりに着目し、脅威の影響を最も受けやすい社会的弱者の保護及び能力強化を行い、あらゆる脅威に対して包括的・分野横断的に取り組み、参加型のアプローチをとる人間の安全保障の視点に立って社会的統合を進めて行くことが重要。

3.雇用

  • 世界の雇用情勢は、世界的な金融・経済危機の直接的な影響を受けており、優先的に取り組むべき課題。昨年12月に公表されたILOの報告書においては「世界的な雇用危機はまだ過ぎ去っておらず、十分な対策が行われなければ危機が悪化する可能性がある」旨の見解が示されたことに留意。
  • また、雇用対策は景気回復のためのみならず、貧困削減のためにも重要な要素。社会的弱者に配慮し、すべての人にディーセントワークを確保する必要がある。
  • 我が国は、国内の雇用の安定・拡大に向けた緊急雇用対策として、労働者の雇用維持、新卒者の就職支援、再就職支援、住居支援など、公共職業安定所の全国ネットワークを活用した対策を講じている。
  • また、国内のみならず、国際社会におけるディーセントワークの実現に向けた支援も行ってきている。例えば、我が国は、アルメニアにおいて、人間の安全保障基金を通じて「社会的に脆弱な難民、国内避難民及び地元家庭に対する持続可能な生活支援プロジェクト(Sustainable Livelihood for Socially Vulnerable Refugees, Internally Displaced and Local Families)」を支援。本プロジェクトは、職業訓練等を通じて、女性や若者など脆弱な立場にある人々の保護と能力強化を行い、社会的統合の促進を目指している。また、「草の根・人間の安全保障無償」により、平成18年度にインドにおいて障害者と貧しい女性のための職業訓練や医療を施すための施設の建設を支援。これにより村落地域に住む障害者と女性が職業技術を身につけ、近隣住民が医療サービスを受けられるようになるという成果が得られた。

4.教育

  • 教育は、高齢者、障害者、貧困層等の社会的弱者が社会の主体として政策立案に参加し、望む仕事に従事し、貧困から脱却するという社会開発におけるすべての活動の基盤となるもの。このため、社会的弱者に教育へのアクセスを保障することが基本的に重要。
  • 日本は、現下の経済状況が、児童の就学状況に影響することのないように、様々な取組を実施。例えば、不就学・自宅待機等になっている定住外国人の子どもを対象に、日本語等の指導や学習習慣の確保を図るための場を設置し、公立学校等への転入、地域社会との交流などを図っている。
  • 国外においても、例えば、「草の根・人間の安全保障無償」により、平成18年度にウガンダにおいて中高等学校の女子寮の建設等を支援。教育の機会が不十分になりがちな女子の教育機会の増加に寄与。

5.医療

  • 医療の充実は、乳幼児、妊産婦、高齢者、障害者等が安心して社会生活を送る上で重要。我が国は、国民皆保険のもと、年齢や性別を問わずすべての国民が公的医療保険制度に加入し、一定の自己負担で適切な医療を受けることができる医療制度を実現し、世界最長の平均寿命や高い医療水準を達成してきた。今後は、少子高齢化が進む中、必要な財源の確保をはじめとする対策を講じ、将来にわたり持続可能な医療保険制度を構築していくことが課題。
  • 昨今の、疾病毎の対策のみではなく、保健システムの強化を重視するという国際的な流れを受け、我が国は、WHO(世界保健機関)を通じて保健システム強化のための世界的な取組を支援している。また、JICAと協力して、専門家派遣、研修生受け入れ、プロジェクト計画作成指導などの技術協力を行い、開発途上国の人づくり、制度づくりに貢献している。

6.結語

 「万人のための社会(Society for all)」を実現するためには「社会のための万人(All for society)」の意識啓発と、様々なセクターのコミットメントが肝要。

 「すべての人権が尊重され、脆弱な集団と人間を含めた万人が機会の均等を享受する強固で安全かつ公正な社会の促進」に向けて、我が国も引き続き協力していく所存。

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