国連の場における演説
第64回国連総会第3委員会
議題69(c)国別人権状況
奥田大使ステートメント(骨子)
平成21年10月27日
(英文はこちら)
(冒頭・総論)
- 長期化する世界的な経済・金融危機により、世界各国の経済的繁栄が挑戦を受ける中、全ての人民、とりわけ女性及び児童をはじめとする社会的弱者の人権の促進・擁護の必要性はますます高まっている。
- 人権の擁護・促進の一義的責任は当該国家に帰するも、全ての人権の促進・擁護は国際社会の正当な関心事項である。我が国は、歴史、慣習、文化について関係する各国の固有の事情にも十分配慮しつつ、「対話と協力」のアプローチに基づき、各国における人権状況改善のための努力を引き続き支援していく。
- カンボジアについては、悲劇的な過去から立ち直ろうとしている同国政府及び国民の人権・民主化分野における取組と進展に勇気づけられる。昨年の民主的総選挙の実施、KR裁判の開始、刑法の国民議会での可決、障害者法の国会での承認等、法の支配が進展しつつあることを歓迎。我が国は、正義の実現と法の支配の強化のためのKR裁判への取組を強く支持。これまで資金的・人的貢献を行ってきており、KR裁判の早急な完遂を期待する。また、今月の人権理事会において、カンボジアの諮問サービス・技術協力に関する決議案が「対話と協力」の精神に基づくプロセスを経てコンセンサス採択され、特別報告者のマンデートが延長されたことを歓迎。
- スリランカについては、多数の国内避難民(IDP)への支援と再定住に向けた取組が緊急かつ最優先の課題。引き続き、スリランカ政府が国際機関やドナーと緊密に連携しながら取り組むことを期待。また、人権・人道の諸課題へのスリランカ政府の取組を国内外に示すことも重要であり、我が国もできる限りの協力を行っていく。
- 人権の促進・擁護のためには、国連をはじめとする多国間における取組に加え、人権対話や開発援助を通じた二国間の取組も連携させることが有効である。かかる観点から、我が国はこれまでアジア諸国を中心に10カ国以上と人権対話を実施してきている。
- また、先日のASEAN首脳会議で「人権に関するASEAN政府間委員会」が発足したことを、域内の人権促進・保護の強化に向けた大きな一歩として歓迎。また、インドネシアが12月にバリ民主主義フォーラムを開催するなど、ASEAN内からの民主主義に関する協力の広がりも見られ、我が国としてこうした動きに協力していきたい。
(各国の人権状況)
- これまで国際社会が培ってきた国別の特別手続は、人権理事会のUPRと対峙するものではなく、相互補完的なものであり、国別決議の対象となっている国と国際社会の対話を促すもの。特に、組織的で重大な人権侵害が継続している場合には、状況改善のために、特別手続がその役割を最大限に発揮すべき。
- ムンタボーン特別報告者より報告された北朝鮮における深刻な人権状況を強く懸念している。長年の国際社会からの呼びかけにも拘わらず、組織的且つ深刻な人権侵害が継続している。特に、児童をはじめとする市民の食料の権利に対する制約、帰還した脱北者に対する処罰、拉致問題等を懸念。拉致問題についても、昨年8月の合意及び昨年11月の本委員会における北朝鮮の発言にも拘わらず、何ら進展がない。拉致問題については、鳩山総理が述べたとおり、昨年合意したとおり速やかに全面的な調査を開始する等の北朝鮮による前向きな行動が日朝関係進展の糸口となるであろうし、そのような北朝鮮による誠意ある行動があれば、日本としても前向きに対応する用意がある。北朝鮮の前向きな行動が必要である。
- ミャンマーについては、8月にスーチー女史に対し禁固刑判決が下されたことは極めて残念であり、極めて遺憾。他方、先月、100名を超える政治犯を含む受刑者の釈放が実施されたことや、スーチー女史と政権側との間で対話が再開されたことを前向きの動きとして評価。ミャンマー政府に対し、来年の総選挙までにスーチー女史を含む政治犯を釈放し、すべての関係者を含む形で民主化プロセスを進展させることを要請する。
(結語)
- 最後に、我が国は、安保理が「児童と武力紛争」及び「女性・平和・安全」の議題の下、この3ヶ月内に3本もの決議を採択し、紛争下の児童と女性の保護とエンパワメントのための国際社会の対応を強化していることを歓迎。
- 我が国は、安保理及び人権理事会のメンバー国として、世界各地における人権状況の改善、民主主義の発展、法の支配の強化に引き続き積極的に取り組んでいく所存。