平成21年10月15日
(英文はこちら)
議長、
1989年、国連総会にて「児童の権利に関する条約」が採択され、世界のすべての子どもの尊厳を守り、生存、保護、発達などの権利を保障するために、国際社会が大きな一歩を踏み出しました。採択20周年を迎えた本年、数多くの国が締約国となっており、2つの選択議定書を含め、条約が定める権利の実現に向けて尽力していることは喜ばしくも、依然として為すべきことは多くあります。我が国は、条約の柱である一般原則の「差別の禁止(第2条)」「児童の最善の利益(第3条)」「生存・発達の権利(第6条)」「意見表明権(第12条)」を中心として、改めて本条約の意義を認識し、子どもたちを含め、本条約の趣旨がより広く周知されるよう努めていく所存です。そして、子どもたちが心身ともに健やかに成長できる社会作りに努め、さらに国際社会が同様の姿勢で協調できるように取り組んでいきたいと考えています。
議長、
昨年の国連総会にて採択された「児童の権利」決議(A/RES/63/241)によって、我々は、世界中で現在でも約2億2千万人もの児童が労働に従事し、その半数が、性的搾取や人身取引、強制労働、武力紛争下の徴用等、最悪の形態の児童労働を含む心身ともに健全な発達を阻害する労働に従事していることに深刻な懸念を表明しました。この決議に基づき今般提出された事務総長報告(A/64/172)では、児童労働撲滅の鍵を握る「教育」の重要性について特に焦点を当てて提言しており、我が国はこれを歓迎し評価したいと思います。
貧困家庭の労働力として教育の機会を与えられない子どもが、基礎的な知識や技術を身につけ、社会のさまざまな活動に参加できるようになれば、人生の選択の幅が広がり、貧困から脱却する道がひらけるようになります。これは、我が国が強く推進する人間の安全保障の理念と共通する考え方です。人間の安全保障は、人間一人ひとりに焦点を当て、深刻で広範な脅威から人々を保護し、能力強化を行うことを通じて、人々の生存、生活、尊厳を守ることを目指しています。現場におけるプロジェクトの実施を通じた人間の安全保障の実践に向け、我が国は人間の安全保障基金を通じて様々なプロジェクトを支援しています。例えば、セネガルにおいて、我が国は人間の安全保障基金を通じて、セネガル政府との協力の下、ILO及びUNICEFが実施している「セネガルにおけるリスクにさらされた児童のためのILO-UNICEF共同プログラム」を支援しています。これは、子どもたちを児童労働から解放し、教育、職業訓練及び保健サービスを提供することを目指しています。
能力強化を通じて、人々は社会において権利と意思決定権を獲得し、不平等を克服する力を身につけるようになります。教育はその力強い一歩です。
議長、
児童労働に加え、児童の性的搾取問題についても国際的に大きなアピールがありました。昨年11月、リオデジャネイロにて「第3回児童の性的搾取に反対する世界会議」が開催されました。第2回横浜会議に引き続き、世界中から3,000名以上もの人々が参加し、児童の性的搾取問題に関し、各々の知見を元に多角的な視点から議論する場を得られたことを歓迎しています。主催したブラジル政府、ユニセフ、国際エクパット(NGO)、児童の権利条約NGOグループに敬意を表したいと思います。IT技術の進展やインターネットの普及により、児童ポルノ等児童の性的搾取は拡散の一途をたどっており、もはや一刻の猶予も許さないグローバルイシューとなっています。今次会合で採択された「リオ宣言」をふまえ、児童の性的搾取の根絶に向けて、我が国も国際社会と協力し、さらに取り組みを強化していく所存です。
議長、
児童に対する性的暴力の問題に関連して、児童と武力紛争のアジェンダにおいても大きな進展が見られました。本年8月、安保理において、児童と武力紛争に関する事務総長年次報告書アネックスへの紛争当事者記載基準を、児童の殺傷及び性的暴力にも拡大すること等を内容とする決議1882(2009)が全会一致で採択されたことを歓迎します。今後も、児童に対する違反を行った当事者に向けて、強い政治的メッセージを送り続けることが重要であり、本決議に定める措置の着実な履行には、国際社会全体の支援と継続した監視が必要です。
国連人権フォーラムにおいて「児童と武力紛争」の問題が主流化してきたことを歓迎します。整備されてきたツールを如何に有機的に効果的に組み合わせて対応するかが課題と考えます。
議長、
子どもは我々の力強い未来です。生まれてきたすべての子どもの権利を尊重し、子どもらしく生きやすい社会作りに努め、また、国際社会全体が同様の理念の下に協調して行けるよう、各国政府、国際機関、NGO、市民社会等、様々なアクターと協力を継続していく所存です。
ありがとうございました。