演説

国連の場における演説

2009年 第64回国連総会第3委員会
議題61:社会開発
篠原梓政府代表代理によるステートメント

平成21年10月5日

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議長、
 初めに、議長及びビューローメンバーに対する我が国代表団の心からの祝意を申し上げます。我々は、議長のリーダーシップに大きな信頼を寄せており、全幅の支援と協力をお約束致します。

議長、
 2008年後半の食料・燃料価格高騰、及び世界金融・経済危機により、我々は戦後最大の世界同時不況の最中にあります。我々がみな認識しているとおり、社会的弱者が特に大きな被害を受けています。「万人のための社会(a society for all)」をつくるために、社会の中で互いに多様性を尊重し、経済危機からの回復及び社会的統合を追求した開発を進める必要があります。

 国連は、金融危機と世界不況の結果として、2009年には更に7千3百万人から1億人以上もの人々が引き続き貧困状態にあるか、貧困状態に追いこまれるであろうと警鐘を鳴らしています。途上国においては、直近の10年間に達成した貧困削減に関する成果のおよそ半分が、この二カ年で帳消しとなる見通しと報告されています。先進国においても、不況が雇用情勢の悪化を招き、生活の不安定に直結しています。過去の金融危機の事例にかんがみ、雇用情勢が危機以前の状態に戻るには、景気回復後4~5年かかるとされております。したがって、日々の暮らしを守るための緊急的な対策と、持続可能な経済成長力を高め、危機に強い社会の基盤構築に向けた戦略の双方が、喫緊に必要とされています。

議長、
 高齢者による社会活動への十分な参加は、まだ道半ばにあり、高齢化が非常に急速に進んでいる日本においても同様です。2008年10月現在、我が国における65歳以上の高齢者が総人口に占める割合は22.1%と上昇しています。2035年には3人に1人の割合になると推計されており、かつて世界のどの国も経験したことのない高齢社会となることが見込まれています。

 我が国は「長寿をすべての国民が喜びの中で迎え、高齢者が安心して暮らすことのできる社会」をめざし、高齢社会対策基本法を定めております。同法により講ずべき施策として、意欲と能力に応じた就業の確保や適正な医療サービスとケア、ボランティア活動等を通じた社会参加、及び事故・犯罪・災害等の危険からの保護等を規定しております。

議長、
 我が国が尽力している障害者の社会的統合も、残念ながら、十分に達成しているとは言い難い状況にあります。我が国では、障害のある人が社会参加する上での様々な制約を取り除くとともに、障害のある人が持てる能力を最大限発揮し、自己実現できるよう支援するため、10年間の長期計画である「障害者基本計画」等に基づき、障害者のための施策を総合的に推進してきております。昨年から障害者施策のあり方について改めて検討を加えてきたところであり、この検討過程においては、我が国が平成19年9月に署名した障害者権利条約の締結に際し必要と考えられる「障害者基本法」の改正事項についてもとりまとめを行いました。

 障害者権利条約は、発効から約1年半の間に締約国数を3倍に増やしており、これは国際社会における障害者の人権及び基本的自由に対する認識の高まりを反映しているものと考えられます。我が国としても、障害者権利条約を可能な限り早期に締結することを目指しており、引き続き所要の作業を進めていきます。

議長、
 我が国は、ひとりひとりが基礎医療と教育へのアクセスが確保され、住居と食料が確保される「万人のための社会」をつくり、結果として生産性を高め、経済活動にも寄与することにより、我々が直面している危機を克服すべく尽力致します。これは、我が国が強く推進する「人間の安全保障」の理念と合致するものであり、我が国は、人々を中心に据えたアプローチを通じて、社会的統合を実現できるものと信じています。この目標達成に向けて、今後も、国際社会と協力していく所存です。

ありがとうございました。

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