
国連の場における演説
第47回社会開発委員会
議題3(b)社会集団の状況に関連する国連行動計画のレビュー
足木公使ステートメント骨子
平成21年2月6日
(英文はこちら)
1.冒頭
- 開発の目的は、バランスのとれた経済成長とそれによってもたらされる便益の公正な分配により、国民の生活を向上させること。貧困を削減し、飲料水・住宅・教育といった基礎的ニーズを満たすためには、全体の底上げを図る経済成長戦略が必要だが、同時に、取り残された社会的弱者層のために、格差の是正やソーシャル・セーフティー・ネットの整備が重要。
- 国連では、1995年の社会開発サミットで「コペンハーゲン宣言及び行動計画」を採択し、高齢化に関するマドリッド国際行動計画、青年に関する世界行動計画、先住民権利宣言が採択され、障害者権利条約が発効する等多くの実績をあげてきた。
- しかし、未だ数多くの国が貧困の最中にあり、また昨年から生じている世界的な金融・経済危機が更に社会的弱者に悪影響を与えかねない。
- この状況に対処するため、我々が実施する施策の中心的な課題は、個人の生活と尊厳の保護にあるべき。社会開発サミットで「人間を開発の中心におく」とのコンセンサスが示すとおり、「人間の安全保障」を社会開発のための我々の行動の中心に位置づけなければならない。
2.青年
- 「青年に関する世界行動計画」に盛り込まれている3つのクラスター「グローバル経済」「青年と福祉」「市民社会の中の青年」を構成する、教育、保健、非行等15の優先分野は相互補完的であり、子どもから大人への移行期である青年の特性を考慮しつつ、いずれの分野も各国の直面する課題に対応すべく、バランスのよい包括的な対策の必要性を認識。
- HIV/AIDSや薬物乱用等のリスクから青年を保護し、次世代を担う主体としての役割をもって力強く社会に貢献できるよう、実態調査に則した目標設定を慫慂する事務総長報告(E/2009/3)を歓迎。
- 我が国は昨年5月、人間の安全保障基金を通じて、UNICEF、UNFPA、WHO/PAHOがボリビア共和国において実施する「思春期層のための人間の安全保障:暴力、早期妊娠、妊産婦死亡及びHIV/AIDSに対する能力強化及び保護プロジェクト」に対する支援を決定。青年が自己の可能性を実現し、社会において尊厳をもって生きることができるよう特に思春期層を対象に、保健サービスの提供、性・権利・暴力に関する教育の実施、コミュニティにおけるネットワークの形成等を行うことにより、高い妊産婦死亡率、家庭内暴力等に取り組み、人間の安全保障の推進を目指している。
- 我が国においては、広範な実態調査結果に基づき「青少年白書」を毎年公表しており、最新版は昨年11月に公表されている。また、一人一人の青少年の立場に立って、関係行政機関はもとより、家庭、学校、地域等が連携し、取組を進めていく必要を認識し、昨年12月、新たな「青少年育成施策大綱」を策定し、今後の政府の青少年育成施策の基本理念や中長期的な施策の基本的方向を示している。
3.高齢者
- 我が国では高齢化が進行し、深刻な問題となっているが、高齢化は先進国だけの問題ではなく、第2回世界高齢化会議において議論されたように高齢化は世界的な課題である。
- 特に開発途上国では、高齢化対策が遅れると、高齢者の生命が危険にさらされる恐れがあり、医療へのアクセスの問題も含め、負担が更に重くなることが懸念される。
- 安定した状況で高齢社会を迎えるためには事前の準備を怠らないことが重要。国際機関は、様々なリスクから社会的弱者を事前に保護する「ソーシャル・プロテクション」の観点から社会福祉支援を強化している。
- 我が国もより多くの人々へ平等に基礎的な保健医療サービスを提供し、人々が自らの健康を守り、改善していくための能力強化と環境づくりを進めることを目的とし、開発途上国の実情に即した保健医療制度の構築、地域保健医療の強化、予防活動の強化、保健医療に携わる人材の育成、保健医療インフラの整備などを支援している。
4.障害者
- ミレニアム開発目標(MDGs)等において開発途上国における障害者の権利の保護・促進は、貧困やジェンダー、HIV/エイズ問題等の主要なアジェンダの陰に隠れ、あまり強調されてこなかったが、2006年には国連総会にて「障害者権利条約」が採択され、我が国も2007年9月に署名した。本条約では、国際協力及びその促進が重要であることが認められており、かかる背景を踏まえ、国際協力における障害者のや視点の促進が求められていることに留意。
- 我が国は、障害者支援を円借款事業のなかでどのように行うことができるかという視点から、例えば、地下鉄建設事業において、ユニバーサルデザインの考え方を導入し、表示の見やすさの配慮や、エレベーターの導入といったバリアフリー化を普及させる試みを行っている。
5.結語
我々が直面している困難を解決する鍵として、「経済的にも社会的にも最も生産的な政策と投資とは、人々の能力、資源及び機会を最大にするために人々の能力を開発するものである」とする社会開発に関するコペンハーゲン宣言を再認識したい。今次国連行動計画のレビューを通じて、我々が達成した成果と挑戦すべき課題を共有し、国際的なパートナーシップを促進していく所存。