
鳩山総理大臣演説
第64回国連総会における鳩山総理大臣一般討論演説(ポイント)
2009年9月24日
ニューヨーク
(日本語版
・英語版
)(首相官邸ホームページへリンク)
1. 冒頭
- 去る8月30日、日本国民は総選挙において政権交代を選択。
新政権は、オール・ジャパンの陣容で、直面する内政・外交の課題に取り組む。
- 日本の国連加盟は1956年12月18日、その時の首相は鳩山一郎。国連デビューとなった総会で、当時の重光葵外相は、「日本の今日の政治、経済、文化の実質は、過去一世紀の欧米及びアジア両文明の融合の産物であって、日本はある意味において東西の架け橋となりうる」と述べた。
- 祖父・一郎は、「友愛」思想の唱導者。友愛とは、自分の自由と自分の人格の尊厳を尊重すると同時に、他人の自由と他人の人格の尊厳をも尊重する考え方。重光葵の演説にある「架け橋」という考え方は、一郎の友愛思想と共鳴する。53年後の今日、同じ国連総会の場で、日本が再び「架け橋」としての役割を果たさんことを宣言する。
2.日本が架け橋となって挑むべき五つの挑戦
(1) 世界的な経済危機への対処
- 政権交代を通じた経済政策の見直しにより、日本経済は復活の狼煙を上げる。
- 貿易・投資の自由化を進める一方、「貧困と格差」の問題、過剰なマネーゲームを制御する仕組みづくりのため、国際協調が求められる。日本は共通のルール作りに向けて、「架け橋」の役割を果たす。
(2) 気候変動問題への取組み
- 新しい日本政府は、温室効果ガスの削減目標として、1990年比で言えば2020年までに25%削減を目指すという非常に高い目標を掲げる。交渉状況に応じ、途上国に対して、従来以上の資金的、技術的な支援を行う用意もある。
- すべての主要国による公平かつ実効性のある国際的枠組みの構築及び意欲的な目標の合意がわが国の国際約束の「前提」となるが、このような野心的な誓約を提示したのは、日本が利害関係の異なる国々の「架け橋」となり、将来世代のためにこの地球を守りたい、と願ったから。COP15を必ず成功させよう。
(3) 核軍縮・不拡散に向けた挑戦
- 日本は核保有国と非核保有国の「架け橋」となって核軍縮の促進役になれる。核保有国に核軍縮を促し、非核保有国に核兵器保有の誘惑を絶つよう、最も説得力を持って主張できるのは、唯一の被爆国であり、非核三原則を掲げ続けている日本。
- 北朝鮮による核実験とミサイル発射は、地域のみならず国際社会全体の平和と安全に対する脅威。六者会合を通じて朝鮮半島の非核化を実現するために努力を続ける。
- 日朝関係については、日朝平壌宣言に則り、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を誠意をもって清算して国交正常化を図る。拉致問題については、北朝鮮による前向きな行動が日朝関係進展の糸口となるだろうし、そのような北朝鮮による前向きかつ誠意ある行動があれば、日本としても北朝鮮との対話に前向きに対応する用意がある。
(4) 平和構築・開発・貧困の問題
- 平和構築や貧困対策などの分野でも、日本は「架け橋」となるべき。国際機関やNGOとも連携し、途上国支援を質と量の双方で強化する。アフリカ開発会議(TICAD)のプロセスを継続・強化するとともに、ミレニアム開発目標(MDGs)の達成と人間の安全保障の推進に向け、努力を倍加。
- アフガニスタンがその安定と復興のために注ぐ努力を、国際社会とともに積極的に支援する。和解や再統合も今後の重要な課題であり、日本は、この分野で、職業訓練などの社会復帰支援の検討を含め、有益な貢献を果たす。パキスタンなど周辺地域の安定も重要であり、着実に支援する。
(5) 東アジア共同体の構築という挑戦
- アジア大洋州地域に深く関わらずして日本が発展する道はない。
- 「開かれた地域主義」の原則に立ちながら、この地域の安全保障上のリスクを減らし、経済的なダイナミズムを共有しあうことは、日本、地域国際社会にとって大きな利益。
- 新しい日本は、歴史を乗り越えてアジアの国々の「架け橋」となることを望む。
3. 国連の役割
- 国連は「架け橋」の外交の表現の場。国際の平和と安全、開発、環境などの諸問題の解決にあたり、国連の果たす役割は極めて大きい。
- 日本は国連、中でも安全保障理事会において、様々な国の間の「架け橋」として、より大きな役割を果たすことができる。安全保障理事会の常任・非常任理事国の議席の拡大と日本の常任理事国入りを目指し、そのための安保理改革に関する政府間交渉に積極的に取り組んでいく。